とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

黒冷水

100冊目
兄弟喧嘩兄弟喧嘩アンド兄弟喧嘩

弟の修作はある趣味を持っていました。
それは兄が外出した時を見計らって、兄の部屋に行き、兄のプライベート空間を漁るというものです。
漁るのは兄の秘密であり、あるいはエロ本でもあります。
この日もミッションコンプリートとばかりに満点のあさりを完璧にこなしたのでした。

一方兄の正気は弟のあさり癖を早くから見抜いていました。
今回もトラップ(戸棚を開けたらバレる仕組み)が作動しており、「またやったのか」と陰険な気持ちになります。
その陰険な気持ちはある種、皮肉げな心配となり、吐き気のある怒りになります。それらが募って積み重なっていて、正気は修作のことが嫌いで嫌いで仕方ありませんでした。

修作も(劣等感などで)正気のことを嫌いに思っています。ただそんな二人は互い憎みあいながらも正面からぶつかることはなく、ある意味で冷戦状態が続いていました。

----(ネタバレあり)----

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洞窟探検入門

99冊目
みんな大好き洞窟探検

地質調査としての洞窟探検ではなく、スポーツ(好奇心による)洞窟探検を行うことについて書かれてある本になります。
スポーツとはいっても「むやみに洞窟に入って環境を荒らす」ということではなく、あくまでルールを守って「行けるだけの洞窟探検をしてみよう。そして新しい発見を見つけたら報告しよう」みたいな冒険家であり開拓者ようなノリですね。
内容をイメージするなら……遠足に行く前にもらう冊子ってあるじゃないですか、この新書はあんな感じです。

とはいってもあくまで「洞窟探検」とあって書いていることの難易度が高いように思えます。
しかしそれはつまり僕らが洞窟探検について知るということでもあり、洞窟探検をしようとしている人達へのいい道標でもあるわけですよ。
洞窟探検についていろんな方面から端的に有益な情報が書かれてあるため、準備の面でも心構えの面でもこの新書の大きさからして気楽に読むことができる便利な本になるかもしれません。

洞窟探検について幅広く知ることができ、洞窟探検の様子を垣間見える事ができる本だと思いました。

※今回もネタバレありとありますが、個人的に気になったことを書いていこうと思います。

----(ネタバレあり)-----

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廃墟建築士

98冊目
不思議な世界観の建物のはなし

この本は『七階闘争』『廃墟建築士』『図書館』『蔵守』の4編で成り立っています。

それぞれのあらすじを書いていきます。

『七階闘争』:だれかがなにげない事件の法則を見つけた。それは決まってビル7階で事件が起こるということに。いつの間にか噂は街の周知の事実となり、いつしか市議会にて「7階という場所は事件の温床となっている。どう対処するおつもりですか市長」とまで言われる事態となった。一方市長は「7階を撤去する」と答える。かくして市すべての7階が撤去されることになるのだが、当然7階に住んでいた住民は反発を始める。

『廃墟建築士』:廃墟の美しさを建築する、という職業が世界中にあった。ただ世界中とはいえ日本は遅れており、主人公はそれを嘆きながらも、目の前にあるビルを眺めていた。それは自分の弟子だった人物が作り上げた、日本が廃墟最先端の国なるべく作られた巨大な廃墟ビルだ。主人公の会社をでた弟子は成功し、随分と差をつけられてしまったようだ。

図書館』:本を「調教する」職業を持つ人がいる。主人公もその一人であり、今回夏休みの子供達に夜の図書館を体験させるべく地方にやってきた。館長の催促を受けながら、主人公はまず「夜の図書館」ができるかどうかの確認を始め、時間に追われながらゆっくりとした調教、というより図書館との対話がはじめる。

『蔵守』:長年破られていない蔵があった。そこを何十年も昼夜問わず守ってきた蔵守の前に、蔵守見習いが現れる。彼女(女性でした)は蔵守と反発しながらも蔵を守ることの大切さを学ぶ。時を同じく、蔵に自我があった。蔵も蔵守と同じく蔵の中を守る一心で長年過ごしてきた。そして彼らは気がつく、略奪者が近くやってくる事に。

基本的な情報として摩訶不思議な世界観で(本が空を飛ぶなど)、不思議なことが起こる、そういう世界観です。

----(ネタバレあり)----

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ギフテッド

97冊目
異物が生まれはじめた世界、困惑した人類はどこに向かうのか

四半世紀も前のこと、アメリカのミネアポリスに住む13歳の少年が腹痛を訴え、病院で検査を受けました。腹痛の原因は見つかりませんでしたが、その時の検査によって腎臓に張り付いた奇妙な腫瘍を見つけます。その時は腎臓ごと腫瘍が摘出され、更に詳しい調査が進められます。しかし、少なくとも悪質主要ではないことがはっきりした以外何もわかりませんでした。

この腫瘍(機能性腫瘍)はこの少年のきっかけに、世界各地でこの腫瘍(後々それは新たな臓器だとわかってくる)が報告されていきます。誰かが「未知の臓器……これは人類が飛躍的進化の時期に入りつつある証拠だ」など言い出し、機能性腫瘍を持つ子供ら「ギフテッド」と呼びはじめ、世界各地でこのギフテッドを保護する動きが競うように導入されていきます。

主人公の達川颯斗は冴えない小学生です。(小さい時からクラスが同じだった)島村と互角にライバルとして競い合ったのは昔のこと、いまや運動勉強人望など全て島村劣り、颯斗は若くして現実をつきつけられるような少年でした。
そんな颯斗でも多少は友達がいました。しかし、クラスメイトから避けられ始めたのは「冴えない」からだけではないようで、小学六年生の定期検査の結果からになります。颯斗はギフテッドなのでした。
そう周りが気が付いてから颯斗の扱いは変わります。唯一変わらないのは、隣りに座っている佐藤あずさぐらいです。

ここまでは腫れ物扱いで終わるような話だったものの、颯斗を快く思わない人物がクラスにいました。島村です。彼は全て颯斗に全てが全て勝ってきたというのに、ここに来て島村が手に入るはずのない「特異性」を颯斗が持っているとわかったのです。
島村は颯人に対して「化け物」と吐き捨て、クラスの中心人物が颯斗を「化け物」というのだから、颯斗は化け物に決定され、何度かいじめのような仕打ちを始めます。
気弱な颯斗は我慢してきましたが、島村がギフテッドという特異性に妬んでいるのだとあずさから指摘を受け、颯斗はささやかな抵抗を見せます。しかしこの日からしばらく、島村は交通事故に遭います。これは偶発的な事件でしたが、「もしかして颯斗がやったのではないか」という疑念が広がり、島村の友達である竹田が颯斗に詰め寄るのでした。
次第に口が悪くなる竹田に颯斗は大声で否定します。さらに不幸なことに、この瞬間のこと小さな地震が学校を襲いました。
緊迫したクラス、そこに防犯ブザーが鳴り、混乱、クラスメイトは狂乱ながら教室を出ていきます。最後に残ったあずさに気が付くなり颯斗は近づきますが、あずさまでも悲鳴を上げて逃げてしまうのでした。
颯斗は一人ぼっちになります。

かくして颯斗は転校することに決めました。転校先はギフテッドが集まる、ギフテッドしかいない学校です。

佐藤あずさは以降、達川颯斗の行方を知りません。

----(ネタバレあり)----

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日本人なら知っておきたい花48選 ~花の履歴書~

96冊目
図鑑+エッセイみたいな本です

タイトル通り、日本に馴染み深い花48種類の紹介がされている本になります。
花の紹介ページには種類ごとの写真がはられてあり、作者によるその花に対してのエッセイ、さらに最後の方には育て方のポイントまで書かれてありました。

紹介してみるとそれだけなのですが、花の本という特別な感じがなんともいい読後感をもたらしてくれます。
読み終えた頃にはきっと、豊かな気持ちにさせてくれることだろうと思いますよ。

(ネタバレありとありますが、今回も気になった所を上げていこうと思います)


---ネタバレあり----

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アガサ・クリスティー賞殺人事件

95冊目
受賞作品かと思ったらタイトルなんですよね

この本は5つの編で成り立っています。それぞれあらすじを書いていきます。

『やわらかな密室』:主人公は失意に襲われて旅に出た。旅先は青森、なんとなく恐山を目指していた。そんな主人公の予定とは裏腹に、恐山は現在閉山していると知る。やや落ち込んでいた主人公だが、そんな主人公の元に青年が声をかけてきた。青年は酒蔵をしているらしい、主人公も無類の酒好きだということもありついていくことにした。

『炎の誘惑』:主人公がタクシーに乗っている時、気になる話を聞いた。どうやら泊まれる寺があるという。主人公は「ビジネスホテルで泊まるよりもおもしろそうだ」とそちらに行くように運転手に伝え、ついた頃には寂れた寺が目の前に現れた。主人公は不安に思うのだが、そんな不安を吹き飛ばすほどの気楽なお坊さんが出てくる。ここで主人公は一夜過ごすことになった。

『蛇と雪』:主人公がバスに乗っているとき「兄さん……」と声をかけられる。振り向いてみればまるっきり雪のような女性がこちらを見ており、無意識に声を出したことを主人公は女性に伝える。女性は「お兄さんも黒い服を来ていたので」など言いながら、その兄のことを少し話した。それで終わりかと主人公は思っていたのだが、バスから女性が降りるときに女性は足をくじいてしまう。気をきかせた主人公は女性を家まで運ぶことにした。つい先程の話題が続き、お兄さんのことを話しながら。

『首なし地蔵と首なし死体』:首なし地蔵がある地域にて、首なし死体が見つかった。犯人も捕まり、けれども低俗なマスコミが多少騒いでいる。主人公はそんな曰くつきの場所だとつゆ知らず、「首なし地蔵」が気になってこの場に訪れる。けれども実際には首なし地蔵など訪れた日に公開しておらず、辺りを巡っていると、老婆と立ち会った。老婆はここら辺りを詳しく知っており、いろいろ話してくれるのだが。

アガサ・クリスティー賞殺人事件』:主人公も呼ばれているアガサ・クリスティー賞授賞式のこの日、谷松刑事は面倒な気持ちで部下の竹田とともに代理出席をしていた。作家のパーティーで浮かれる竹田を横目に谷松は浮かれるのも癪だ思っていたのだが、賑やかな雰囲気にやがて飲まれて、それなりに楽しんでいる頃のこと、男性が慌ててこの部屋にやってきてから言う「有栖川有栖が死んでいる」と。


----(ネタバレあり)-----

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