とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

水底の光

132冊目
しっとりとした恋愛小説

この本には『パレ・ロワイヤルの火』『水底の光』『闇に瞬く』『愛人生活』『冬の観覧車』『ミーシャ』の計6編が収録されています。

それぞれの粗筋を書いてみると、
『パレ・ロワイヤルの火』:パリへ向かう飛行機に乗りながら、当時関係を持っていた男性の記憶を思い返す話
『水底の光』:突然にも東京タワーを見たくなり、仲の良い」男友達と適当な嘘をついて東京のホテルに泊まる話
『夜に瞬く』:最愛の彼氏と別れ憂鬱な毎日を過ごしていたところ、兄の妻に誘われて少し遠くに出かける話
『愛人生活』:だいたいの親族を亡くし失意に襲われていた中で、偶然にも金持ちの年上男性に拾われる話
『冬の観覧車』:夫を失いひとり社長秘書として働いていたら、その社長が難病に侵されていると知る話
『ミーシャ』:長年連れ添っていた猫が危篤状態になったと知らせが入り急いで家に帰るまでの話

上に書いてますが、しっとりとした恋愛小説でした。

---(ネタバレあり)----

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トコトンやさしい プラスティック材料の本

131冊目
プラスチックの材料の本です。

タイトルのように、プラスチックの「材料」の本であり、材料とだけあって、話している内容もどちらかと言えばマニアックなものになっていると思います。

内容は「プラスチックとはなんなのか」から始まり、「(プラスチックの主な原料とその)原料の特徴について」「プラスチックの使用例」「プラスチックのこれから」とかでしょうか。あとはコラムがちょくちょくあります。
読んだ限り、上にある「プラスチックの原料の話」がとても詳しく書いてあったように感じました。むしろ辞書かな? ってなぐらい詳細な特徴も書かれてあって、プラスチックに関して自信がないプラスチック製品を作っている会社の社員さんとか読んだらいいんじゃないかなとか思いました。

個人的にプラスチックについて明るくなく、専門用語ばかりで混乱したりしましたが、「プラスチック」そのものは暮らしの中で大きな役割をしているのは知っているので、なんとなくあのことを言ってるのか…ぐらいはわかりました。
そんな感じで感想も書いていこうと思います。


※ネタバレありとありますが、今回は気になったところを上げていこうと思います。

---(ネタバレあり)----

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なれる!SE 2週間でわかる? SE入門

130冊目
ブラック感ある仕事系ライトノベル

主人公の桜坂工兵は焦っていました。なにせごくごく平凡の問題ない人生を送ってきたのにもかかわらず、ここに来て、「就職」という壁にぶつかったからです。工兵は内定が取れないまま5月、6月、7月と時間を過ごします。同級生はすでに先に進んでいて、親からも心配からの電話がかかってきたりして、工兵はひどく焦っていました。

その焦りのせいか、あるいは機転か、工兵は普段は気にも留めない求人に気が付きます。そこは聞いたこともない企業であって、求めているのはシステム開発システムエンジニアのようでした。
これも普段なら見逃すものですが、そこに「まだ見ぬ君の可能性を求めて――」など書かれてあり、工兵の目をひきつけます。そして会社名を検索してみれば、Yさんという人物と企業とのドキュメンタリーな文章が綴られていました。
これが弱っていた工兵の心を鷲掴みにし、工兵はその企業にエントリーすることにします。

それから、驚くほどトントン拍子に物事が決まってきます。あれだけ就職に難航していたのに、面接をした時点でもう内定が決まるなど……それは工兵にとって違和感を残すほどに簡単なのでした。

----(ネタバレあり)----

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故郷

129冊目
たぶん30代や40代が読むとおもしろいと思う

故郷

故郷

厳しい寒さの中、20年をぶりに故郷に帰ってきたわたしが引っ越しの手伝いをしながらいろいろ思い返す話です。

いきなり余談なんですが、この物語は若い人より年食った人が読んだらおもしろいだろうなとか思いました。


----(ネタバレあり)----

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酔歩する男

番外編
幽閉された男の話

※この『玩具修理者』に収録されています。

物忘れが酷いのか、彼のうっかりなのか、一度行った店に再び行ったら店がなかったり、あるいは別の店になっていたりする男がいます。彼の名前は血沼壮士といい、これはそんな彼が知る「いつの間にかなくなっていた店」の一つにて起こったことです。

その店にて、血沼は同期とともに飲み会をしていました。わいわいと一通り騒ぎ、お開きになりそうな頃、運悪く大雨が降っていました。彼らはタクシーで帰ることにして、みんなそれぞれの帰り道の方角に合わせてタクシーを呼んできます。ただここで、池沼はみんなとは別の方角に家があることに気が付き、みんなを先に帰らせあとで一人店内でタクシーを待つことにしました。

待っている間のこと、飲み会のときも見えていた視界の端にいる男性、おおよそ勤め人ではなさそうな男性が一人になった途端こちらをちらちらと見ていることに気がついていました。色が変わって元の色がわからないぐらいのスーツ、垢だらけの顔にできるだけ関わりたくないと池沼は思っていた矢先のこと、彼は池沼によってきます。
「私を覚えていますか?」
池沼は怪訝に思いながら「知らない」と答えます。彼は「そうですか」と言ってあっさりと席に戻ろうとします。
池沼は声をかけられた不思議さ、そして時間つぶし程度に彼に絡んでみることにします。「ちょっと待ってください。あなたはなんですか」
男性は答えます。「私はあなたの親友です。いや親友でした」

これに池沼はいよいよ不審がって彼の話を聞いてみることにします。

----ネタバレあり-----

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