とある書物の備忘録

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ようこそ授賞式の夕べに 成風堂書店事件メモ

91冊目
冗談じゃ済まされない事件があったようです

書店大賞授賞式当日のこの日、スーツ姿の花乃は足取り軽く書店に訪れました。同じく働く書店員と軽い雑談をしつつ「今日は東京だよね?」などあどけない初東京の花乃に心配そうな声をかけられます。
書店大賞に向かうのが花乃の大きな目的ですが、もう一つ目的を持って東京に行くとここで宣言しました。
「私、名探偵のいる書店に、行ってみようと思うんです」
動揺する書店員仲間たち。その中でその噂(ミステリー作家がした謎のメッセージを解読しサイン会にこぎつけたこと)を話した中林は「い、いやそんなこと言っても、私たちと同じ書店員なのよ?」など口にすると、花乃は「書店の謎を解いてくれそうな人であればいいんです」と言う。よくわからない中林は「何の話?」と聞くと、花乃は「書店大賞の事務局に届いた怪文書ですよ」と答えるのでした。
中林は頭を抱えて言います「書店大賞当日は皆忙しいのよ。そんな迷惑しちゃいけないでしょ」と、花乃は「わかってます」と全然わかってなさそうな口ぶりで答えたのでした。

電話越しに「つべこべ言わず来いよ」と真柴の声が聞こえます。「いやこれから営業なんですってば……」と困り果てた智紀が頭を抱えていました。
こちらは明林書房の営業フロア、今日は書店大賞という大舞台で営業しまくろうとしていた矢先のことだったのです。
「ほかならぬ竹ノ内さんが呼んでるんだ。今日のイベントに関わる重大問題なんだよ」
と、真柴がしつこく言います。智紀は「電話を切ってしまおうか」とは思ったりしましたが、竹ノ内は書店大賞を創った初期メンバーであり、今回書店大賞の実行委員長でもあります。悩んだ末、営業を他に任せて、真柴のもとに向かうことにしました。
そもそもなぜ自分が呼ばれているのか、智紀はまだ気がついていません。

真柴と智紀は竹ノ内の元に到着するなり、竹ノ内は智紀に問いかけた。
「『飛梅書店』について口にしていたそうだね。それをどこできいたんだ?」
突飛なことを聞いてくるので驚いている智紀を見て真柴は「突然なんですか、こんな大事な日に」と落ち着くように言った。
落ち着いた竹ノ内は事情を話します。我々が使っているFAXにおかしなものが届いたと、
『だれが「本」を殺すのか』 犯人は君たちの中にいる。飛梅書店
書店大賞のアンチも増えていく中この程度の脅し文句ならほっといてもいいのに、竹ノ内がほっとけない理由は、そのFAXに飛梅書店の番線印が押されていることも含まれます。
竹ノ内はもう一度智紀に問いかけます「どこで飛梅書店の話を聞いた?」
智紀は「おかしなものをみつけただけですよ。知らないうちに紛れ込んだのかな」とファイルと書物の間から1枚のブックカバー、正しくはそのコピーを取り出した。それは八年前に潰れたはずの「飛梅書店」ものに違いなかったのです。

----(ネタバレあり)-----

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