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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

下町ロケット

10冊目
人が奮闘する話が読みたくて、手にとった作品です。
たしか『王様のブランチ』の書籍ランキングで見た記憶があります。実際そうだったかというと、記憶違いかもしれませんが。

下町ロケット

下町ロケット

主人公の佃航平は宇宙開発の研究者でありながら、挫折と父親の死がきっかけで父親の会社(佃製作所)を受け継ぐことに決めて、はや七年が経っています。
そんな佃にはなお捨てきれない夢がありました。それは、自分の作った水素エンジンでロケットを飛ばしたいというものです。
実際に佃は「将来これが役に立つはず」と中小企業でありながら膨大な資金を使って水素ロケットエンジンの開発もしていまいした。
しかしそんな夢物語を言ってられなく、ある日主要取引先の京浜マシナリーら取引終了のお知らせを受け取ります。もちろん小さな会社なものですからたちまちピンチに陥ります。
資金繰りに困り、メインバンクの白水銀行に三億円の融資を申し込むが渋られるなど、思うように行かず佃は頭を痛めていると、追い打ちをかけるようにライバル社のナカシマ工業から訴えられます。
ナカジマ工業は佃制作所と比べ大きいという会社であり、おまけに法廷戦略が上手いと噂されていました。
訴えたれたことによりメインバンクの融資も止まり、倒産の危機にすら直面してしまいます。
裁判には勝てるのか、お金にあてがあるのか、大切な研究開発を止めるべきなのか、悪評はどうするのか、裁判の長期化するだけで倒産してしまう状況下で佃に難しい選択が迫られます。



-----(ネタバレあり)-------


社長佃航平
主人公です。熱い技術者魂というべきものを持っていて、かつそれを信じる強さがありました。七年ほど佃制作所の社長をしていたようですが、途中までの不幸の畳み掛けには「いよいよ終わりなんじゃないか」と思ってしまいました。わりと知的財産について訴えられることにも弱いようで、それらにもどうにかしようにも右往左往している様子は心配になりましたよ。その分、本当に部下が有能でした。
なにもこの佃が経営者として無能というのではなく、社長として大切なところは大切だというのが大切なんですよね。見失いかけたこともあったようですが、結局が佃中心に回っていました。
万事休すだった佃の転機になったのは、元妻沙耶の電話でしたね。この電話がなかったほぼ間違えなくゲームオーバーだったと思います。たしか沙耶は佃が会社の方針について悩んでいる時もピンポイントで電話していました。これが別れてもなお続く本妻力ですか……。
ところで、物語後半にマイクロファイバーをノズルに入れるシーンで意外な特技を見せるなど、社長でありながら技術者としての活躍が見れて良かったです。わりとあのシーン好きです。

佃制作所の優秀な部下たち
個人的に一番好きなのは山崎ですが、この作中でヒロインっていうほど魅力があったのは殿村だと思います。
殿村は堅苦しい人なのかなーとか思えば、静かに熱いところもあり、奮闘しながらも決めるときには決める。なのに可愛らしさを感じる人もいるような人物であり、萌える人もいると思いますよ。
津野と唐木田はああ言ってますけどけっこう仲良さそうですね。まぁ、「仲良さそう」とか言ったら、口をそろえて「それはない」と言い出しそうですけど。
あとは江原と迫田などの若手チームも社長の意向に反発しながらも、帝国重工がやって来た用の資料を徹夜で作ってくれるのがもういい部下です。佃がやって来て若手チームが挨拶する、あそこいい場面だと思います。
真野はやらかしましたね。あれがなかったら直ぐ決まっていただろうに、やらかしたことにより難題が増えただけでした。まぁ、最後には改心して、新しい課題を見つけてきたので結果オーライです。ロケット打ち上げ時はおそらくいなくとも、後日ニュースを見て涙ぐむ姿が想像できます。

帝国重工
世界レベルの大企業です。出てくる人物がことごとくプライド高そうな風合いがありました。
財前と浅木という良心がいるものの、大企業特有の足引っ張ってそうな富山という人もいました。
しかし富山という人にも同情します。なにせ世界一の技術だと思っていた水素エンジンはすでに特許してあるって、「こんなの絶対おかしいよ」ってなってたと思います。それに加えて上司がその負けた制作所に水素エンジンを任せるなんてもう、技術者としては悔しいものもあると思います。ただ、この人も人を蹴落とそうと悪知恵を働かせていたのでどっこいどっこいです。

神谷修一
佃制作所の顧問弁護士になった人です。終始この人の有能っぷりがすごかったです。こいつに任せておけばいいんじゃないかな……というほど頼りっぱなしではなく、ダメなものはダメとちゃんと言うところもまた有能っぷりを加速させてました。
技術者と対等に話し合うようすから、そうとう勉強したんだなと思いました。しかも山崎からエンジンの話を聞くときに好奇心を持っていて、頭がいい人はこんな感じで学ぶんだなと思いました。(小並感)

荒んだ大人決定戦
利益や権力、境遇や皮肉などで見苦しい感情を覚えている人は数多くいましたが、荒んだ大人一位は三田の一個頭を抜けて根木節生で決定です。理由はもちろん手首折るぐらいの勢いでテノヒラクルーでした。しかし、この作中には嫌なキャラがいても、制裁と言わんばかりに痛い目にあっているのに、こいつだけもうちょいあってもいいんじゃないかって思うほどですね。汚い感情に卑しさを感じる堂々の一位です。
三田と根木が目の敵になる文章でも、究極的にはわりとみんな汚い感情というか、水面下で争っている感じはありました。圧力もありましたし、ほぼ暴言の言い合いなんてありました。
いやほんと、怖いですねお金ってものは(達観)

大企業の人脈
「元同級生が」や、「知ってる弁護士がいるの」とか「教授に頼んでみよう」など、いわば成功者というべきなのでしょうか、そういうひとの人脈ってすごいなと思いました。こういう人を見れば遥かに下の方にいる僕からすれば、想像もできないような人と関わりがあって、こんな簡単にスケジュール合わせて飲みに行くと考えるとめまいがしてきそうです。本当にそんな感じなのでしょうか、こんど居酒屋に行った時は耳を澄ませようと思います。と、書いておいて、「僕の行くような居酒屋にはそんな人こないだろう」と気がついて悲しくなるぼく。あ、人脈が羨ましいというわけではないです。すっげなー、住む世界が違うなーって感じです。

利益やら意地やら思惑やらいろいろごじゃごちゃしながらも、人が奮闘する話は人間ドラマとしてとてもおもしろかったです。
いがみ合うライバル同士が協力やら、若手の助太刀、思わぬ救いの手、少年ジャンプを見てるのかな? と思うほど王道で熱い展開に、読み進める手が止まらず読んでしまいましたね。
終盤になり帝国重工と対しながらも、ロケット作り上げて打上げるさまは心熱くなります。まさに友情努力勝利でしたね。

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