引き際の美学
22冊目
これもまたタイトルに惹かれて手にとった本です。
新書というジャンルをしばしば読むことはあるのですが、ここで感想を書くのは初めてになりますね。
早速書いていこうと思います。
- 作者: 川北 義則
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/12/25
- メディア: Kindle版
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引き際について語りながら、仕事、恋愛、人生、それぞれの美学について考える事ができる本になります。
偉人のエピソード、企業の失敗談や成功談など交えながら書かれてあったり、著者がいままで見てきた人を踏まえて、「引き際はこうあるべき」という理想像が書かれてありました。
今回も個人的に気になった点を挙げてゆきます。
なので、ここに書いたものがこの本の全てではないです。気になった方は各自手に取ってくださればと思います。
----(ネタバレあり)----
-気になった箇所-
第二章
◯タカラジェンヌが「ピーク時に辞める」のはなぜか
タカラジェンヌが惜しまれつつ身を引くのは、「次につながる」のが第一理由だが、実はもう一つ大きなわけがある。それは後進へ道を開くことである。(中略)後進が育たなくなる。組織体で考えるとき、これはまずい。組織には新陳代謝が必要なのだ。
その機能を失わないためには、とくに上の人間はピーク時にさっさと辞める方がいい。日本の政治や経済が滞っている原因がいろいろ指摘されているが、何より問題なのは「老害」ではないのか。
組織にも新陳代謝が必要だというのはなるほどと思った。
たしかに組織体そのものが老化してゆくのも考えられることで、組織体の成長が緩やかに滞る姿を想像するのは容易い。
適度に若者に席を分け与えさせないと組織体はどんどん老朽化してゆくだろうし、若者が育たなければ今は良くても先はなくなるだろう。
今現在、この「新陳代謝が悪い組織体」に当てはまる日本の組織はけっこうありそうである。
ちなみに、この章では、
「ピーク時に辞めろ」とはいわない。せめて余力を残しているうち、周囲から「惜しまれている」うちに辞めていただきたい。
ともある。
この新書では「惜しまれている」うちにさっと辞めるのがベストだと書いてあった。たしかにそうだとは素直にはまだ理解できていないが、ある意味目安として心に留めておきたい。
第三章
◯下手に勝つより、上手に負けよ
勝負であるかぎり、勝たなくてはダメだ。しかし、勝ちながらも負けを経験し、それを糧にしてゆく。
あなたが人生で「自分は負けつづけているな」と思うようなら、勝つことに最大限の努力を払うべきだ。しかし「連戦連勝だな」と思えるとしたら、たまには潔く負けてみることだ。
「たまには潔く負けてみるべきだ」という言葉は、人によっては響くのではないかと思う。
個人的には、この項目で出てくる、作家でありギャンブラー色川武大氏の「九勝七敗でいい」という言葉が響いた。勝ち越しながらも負けるときは負ける、そのバランスがなかなかいいようになっているよう思えたからだ。なにか勝負事をするときにでも思い返したい。
ちなみに次の項目『勝ちつづけても超えてはいけない一線』にて「攻撃の限界点」「攻撃終末点」という言葉が出てくる。
(意味は:優勢の限界点、それ以降は不利になる境目)
ここでの項目では「攻撃の限界点」「攻撃終末点」など見極めて、到達したらさっさと引くののが肝要であり、あらかじめラインを引いておきそれを守るべきだと書いてある。欲深く攻めてはダメだと言っているのだ。
個人的には、それが「九勝七敗でいい」という考えが当てはまっているように思う。この言葉の気軽さと、仮に負けたとしてやけどしてからラインを探すというのは僕に合っているように思った。
しかしこの「攻撃の限界点」という言葉はドイツの軍人さんが考えたことであり、「攻撃限界点」というのも自衛隊の言葉である。いわば勝負を見誤れば命取りになるような状況であり、そんな中で「九勝七敗でいい」なんて考えを持っていいのかどうかはわからない。
-気になったフレーズ-
よく「あの人は運がいい」と評される人がいる。あるいはくじ運がある人など。そういう偶然の幸運に恵まれることをセレンディピティーというが、こういう性質をもった人というのは、私の見るかぎり「思い切りの良い人である」
この項目の名前(「運がいい人」は「思い切りのいい人」)を踏まえて、行動力を上げるフレーズになるのかもと思って引用した。
-まとめ-
老害と叩く割には硬い考えを持っていると思わしき所を見かけた気がした。気がしただけで、本当はそうではないかもしれないし、僕の言いがかりになるだろう。言えることは、長年生きてるだけある含蓄あるアドバイスが時よりきらりとあったということ。
その光るものは老若男女問わず、気をつけるべき心の注意点としてはいいものばかりだ。
個人的には上に挙げたように、なににしてもピークあたりで離れること、「九勝七敗でいい」精神が特に参考になった。
-最後に-
僕はこの本でいう「2、3ヶ月で仕事を辞めるよくわからない根性なしの若者」に含まれるだろうし、『男が別れを悟るべきとき』に登場するニブイ男に分類されるだろう。
だから当然、ビジネスでも恋愛でも向いてない人になる。悪いのは引き際がわからない僕だが、そういう人間にもなにか書いていてほしかった。
- 作者: 色川武大
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/11/30
- メディア: 文庫
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- 作者: 色川武大
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/03/31
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