とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

女生徒

36冊目
太宰治作品を挙げると、なにかと話題になる作品ですよね。名作と言われるだけあっていつか読んでみたい作品でした。
今は青空文庫に収録されているので、だれでも読むことができますよ。

言わずと知れた作品です。私(主人公)の一日がだだつらつらと、繊細に書き出されています。
イメージするならTwitterなどで女子が書きそうな内容を、抜群の文章力と描写で書かれてあるような感じですかね。
内容がないような、ふわふわした不安ありつつ、気分がころころ変わりながらも、若かりし葛藤や、女性らしい感情など、言葉に言い表せないような、なんとも女性らしい文章でした。(イメージです)
内心の描写は秀逸であり、たまにはっとさせる文章があり、読んでておもしろかったです。



----(ネタバレあり)----




高校生の女性とは、常日頃からこんなこと思っているのでしょうか。僕がこの主人公を外見として想像したのは、文学少女じみた雰囲気ではなく、多少地味めでかわいい系統でありながら腐った目をした女子でした。
外見はかわいいと想像したとして、私の内心はそうは限りませんでした。常に冷めた目線で、(それでも子供っぽい雰囲気がありながら)灰色の日常を眺めているさまはもう、お世辞にも、かわいいや綺麗や美しいからはかけ離れたものでしたね。
高校生らしい、反社会的でロックな感情を持ちながら、彼女は一人自分と向き合いつつ、自分らしさ出すことを恐れ、合わせることに自己嫌悪を持っていました。若さの葛藤は誰でも理解できることであり、母親に対しての天邪鬼っぷりも反抗期を感じさせます。
加えて、読んだ本にすぐ染まってしまう単純さを持っていました。もし「君って意外と単純だね」とか言えば「なにいってんの?」と根に持ちつつ「どうだろ」など表向きには笑顔で頷いてきそうです。そして別れた後、脳内で一通り悪口言ってから「私、やっぱり単純」とか勝手に悟った雰囲気出してそうです。(イメージ)
終始、亡くなった父を想像しては自分を「清く、強く、美しくなりたい」とか願っておいて、そのすぐ後には隣りに座るおばさんを「打ってやりたい」など暴言も(脳内で)吐くといういささか、いや、かなり薄汚れた女性でした。それでも最後は母親の偉大さを感じ取って「やっぱ母は強い、私も頑張ろ」みたいに終わっていますけど、この日を境に私が思う理想の女に成長してほしいものです。

朝は、意地悪
この初っ端寝起きあたりの文章、ふわふわした朝の意地悪っぷりを救い上げている文章が気持ち良かったです。
感想は「わかる」の一言です。僕も寝起きが一番機嫌悪いと思いますし、濁って濁って目を覚ます感じわかります。
あと言えることといえば、これは女性から見た朝だということです。僕は男性だから、この私が思っている「朝は醜いから嫌い」という感情を完全には理解できてないと思います。だからこそ、「女性の朝はこんなことを考えてるのかな」みたいな、そんなことを読んでて思いました。(と、書いちゃったりしたけどキモいな)

美しく生きたいと思います
私が夕暮れを眺め、黄昏て、この世のすべてを愛おしく思って、出したある種の結論でした。
おもしろいことに、「美しく生きたいと思います」と決心しながらも、家に帰った早々お客様(大森の今井田さんご夫婦と良夫)にグチグチ脳内で言ってるんですよね。良夫に対しては「煙草は、両切に限る」と自分の好みをいちゃもんとしてつけているんですよ。思えばそのいちゃもんの前にも「肌白くていやらしい」と、当時の時代的に男女平等ではなく男尊女卑の世界だと踏まえても、嫉妬として受け取れるようなことを言っていました。
もてなしもわりと雑で、気を使って気を使って、気を使ってからの投げやりみたいな感じでした。その不満と葛藤する気持ちはわからないことないですけど、移した行動は美しくはないと個人的には思います。
まぁこの後、母親の策略に一本取られたことに気が付き、美しく生きようようと再認識したのだから結果オーライでいいです。

私の奇行
ポエムと心の描写、美しい文章に紛れてますけど、奇行に走っているシーンが多々ありました。
犬を打ったとか、隣りに座る人の悪口とか、デッサンをする先生を蔑みながらも憐れむなどありましたけど、一番はやっぱり「よそから来たお嬢様が来たという設定で景色を眺めよう」というアレですよ。しかも実際に行動に移しちゃって、初めて見るような反応をしながら帰り道はそこそこ楽しむんですよね。
楽しんだならいいかもしれないですが、あれ黒歴史になるやつですよ。綺麗な文章ですけど、あれ振り返ったら恥ずかしくなるやーつですよ。年頃の女子ってこんなことするのですか、世界を達観しつつも世の中に絶望しながら、葛藤しながら、自己嫌悪しながら、その結果あんな事しでかすのですか。しないですよね。ですよね。

【まとめ】
この作品は実際に読んで、頭のなかで咀嚼しながら味わうのがいい作品だと思います。
ところどころはっとさせる文があり、私の内心描写がなんとも甘酸っぱくいいんですよ。
そんな文章に対して、描写に対しての感想はもう読むのがベストだと誰でも理解できていることでしょうから、感想は主に内容についてになりました。そして、なんとも人のあら探しのごとく、下衆な感想になってしまいました。
こんないい作品なのだから感想も良い文章で感想を書きたいのに、私のあら探しして、奇行を晒しちゃうとかもう……僕も美しく生きたいものです。
全体のまとめとして個人的に注目したいのは、太宰治さん男性なのに、こんな文章書いているということです。どんだけ女遊びすれば、あるいは女々しいのか、女性のことが大好きだったのか、いずれにせよ繊細な文章は息を呑みました。
やっぱ読み継がれている作品はすごいものです。

女生徒 (角川文庫)

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