名探偵クマグスの冒険
42冊目
ミステリーが読みたくて、「名探偵」というタイトルに興味を引かれたからでしょう。
なんとなく手にとった本になります。
- 作者: 東郷隆
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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クマグスについては各自調べたらわかるように、とにかく賢い人物になります。そんな賢い彼が、よくわからないけどすごい知識を駆使して安楽椅子探偵をするイメージの小説でいいです。
クマグスは日本人っぽくない外見をしてますけど日本人っぽい性格をしており、探偵として眺めるにはおもしろい人物でした。作中、『ノーブルの男爵夫人』『ムカデクジラの精』『巨人兵の柩』『清国の自動人形』『妖精の鎖』『妖草マンドレイク』の5つ中編があり、それぞれ違ったジャンルになりますけど、どれもクマグスが鮮やかすぎる推理をしていきます。ただクマグスがすごすぎて、クマグスTUEEEEEEEEになってます。まぁ、これは探偵小説どれも同じなのですが。
本書で個人的に推したい点は、時代背景にあります。この作品の舞台は戦時中のイギリスだということもあり、ちらほら有名な人物や、ギラギラとした時代に、想像する霧の街が描写されてるんですよ。しかもその舞台で活躍するのは和歌山県に馴染みのある日本人という、探偵小説には珍しい形がアンバランスさがよかったです。
あの英国紳士やら、秘密結社やら、適度にオカルトあるあの頃のロンドンが好きな人ならおそらく気に入ると思います。
----(ネタバレあり)-----
南方熊楠
読書の道中、ラノベを読むがごとくクマグスTUEEEEEEEEEが続くものだから、南方熊楠というのは架空の人物だと思ってました。だから途中にある引用も「創作なのかな(失礼)」だと勝手に思ってたんですよ。ところがどっこい、調べたら実在の人物でひどく驚きました。なんかもういろいろ申し訳ないです。
この実在する南方熊楠と作中のクマグスとは、実在の人物を使った架空の人物として(歴史小説の織田信長みたいな感じ)理解しているつもりですけど、実在する南方熊楠も知るなりチート感あるものだから、事実は小説よりも奇なりを実感した僕であります。
クマグス
クマグスは探偵としても優秀でした。作中のクマグスこそ、好奇心旺盛の安楽椅子探偵といってよく「知に問えばわかる」と言う姿からは、作品はあんまり記憶に無いですが『GOSICK』のヴィクトリカ・ド・ブロワを想像させました。まぁ、クマグスはヴィクトリカよりは腰は軽いですけど。あ、そういえば『GOSICK』とこの作品は時代背景的に同じ頃かもしれませんね。
話を戻して、作中のクマグスもシャーロック・ホームズに劣らずスペックはすごいものでした。「英語喋れてほかの言語喋れたら賢い人」レベルの僕だと、もう瞬間記憶、超人的な勘やら、洞察力など霊視……もう天才以外の表現見つからないですよね。加えて、コミュニティ能力もあるという完璧っぷり。それらを無計画な人格が欠点になっているようですけど、欠点こそ魅力といえる彼はすごいものを感じさせます。一定の長所の高みまでくれば、短所は魅力になるんですね。(遠い目)
クマグスと仲間たち
なんかたくさん居ましたが、一人一人挙げてゆくのも長くなりそうなので、気になったキャラをかいつまんで書いていきます。
まず思い出したのは、孫文です。彼は医者でありつつも革命を目指す人でもありましたね。南方熊楠の簡易的な時系列を眺めてみると、この人物も実在したようでこれもまた驚いたものです。作中『清国の自動人形』にて囚われてる彼が、『妖草マンドレイク』で再登場して、協力関係にあったのはちょっと熱い展開に感じました。彼に関しては多少はかっこいい所見たかったなと思います。だってギリシャ人と言い合いになって、本拠地に突っ込んで、銃撃戦……あれ、クマグスから銃撃戦から守ってますね。(今気がつく)
それと今村弦次郎。彼は作中で珍しくまともな人でした。まともだからこそ個性が際立っており、最後の『妖草マンドレイク』で孫文と立会して以降、どうなったか記憶にありません。少尉から大尉に昇進してたのは覚えてます。
あとはボーソンビー弁護士ですかね。彼はベテラン弁護士らしく、お金もたくさん持っているようです。作中二回クマグスに出張を頼んでいますけど、偶然にも両方とも事件と言うより摩訶不思議なことに対しての解決みたいな感じでした。似たようなイメージで『トリック』的なノリなのだろうなと勝手に想像してしまいます。いや、実際は事案なんですけど。
クマグスと犯人たち
この作品は連載小説? らしいので文字制限がゆえに推理演出が少なく感じました。ゆえに、犯人があっけないものを感じさせるものが多かったと思います。クマグスの仲間は印象深かったのに、犯人でちゃんと覚えているの『妖精の鎖』で登場する全盲の学者ぐらいかなぁ……むしろ、その『妖精の鎖』ででてくる悪党達のほうが悪さが際立ってたイメージが残っています。
批評は置いておいて、犯人としてうまくやってたなと思ったのが……『妖精の鎖』のレイ大佐になりますね。
うだうだ考えるのが醍醐味のミステリーを短いページというのは難しいものがあるようです。
好きな話
密室殺人、都市伝説の解明、泥棒調査、脱出劇、迷信の論破、変死の調査、こうしてみるとクマグスが推理していたジャンルはバラバラのようです。個人的に一番好きだったのはやはり『妖精の鎖』になります。ここがこういいという、特徴はいいようにもないですけど、なんというか展開がいいなと思いました。過去『ノーブルの男爵夫人』で登場したベンドレーと一緒に行動してるからですかね。ならば『妖草マンドレイク』も好きなのかと言われると、そうですね。『妖精の鎖』の次にあれが好みだったりします。
【まとめ】
正直、一番の驚きは南方熊楠が実在したことを知った時でした。すごい人物が居たものですよ。
そんな知識人クマグスを中心とした推理小説は、推理小説としたおもしろみがあり、知識本としても驚くことがあり、あるいは歴史小説のような人物を想像するおもしろさもありました。推理小説なのか? と言われれば、「どうだか」と答えてしまいそうですけど、娯楽小説とすればいい世界観で、天才が推理しているというだけでいい感じの作品になります。この本はいい雰囲気ありましたよ。
ところでこれ、アニメ化したら面白そうですよね。『バッカーノ!』や『血界戦線』のEDみたいな小洒落な感じで、短編一話を二話に分けてすれば形になりそうです。アニメ映えしそうだと書いてて思いつきましたけど、この作品のジャンルはキャラクター小説かもしれませんね。(結論)
青空文庫の作家別作品リスト南方熊楠のページ
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