とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

魔王城殺人事件

53冊目
こんなんタイトル一本釣りですよ。

魔王城殺人事件 (講談社ノベルス)

魔王城殺人事件 (講談社ノベルス)

物語の舞台となる街はニュータウンと言える場所になります。ここ10年で急速に開発されて綺麗な町並みが見える一方で、緑もおおい場所でもありました。雑木林がいくつも残っており、中でも校区の西にある雑木林は一番深いんじゃないかと言われていました。その雑木林の中に一家だけ家が建っています。いわゆる「デオドロス城」と言われる建物です。家と言うより屋敷であるその西洋館は、木造建築で築40年から50年ほどに見えて、仮に「デオドロス城」と呼ばれなくても、「森のお化け屋敷」やら「ホーンデットマンション」やら「モンスター・ハウス」やら呼ばれていました。それほど噂の場所なのです。
主人公の佐藤翔太は友達のKAZ(本名は宇田川香月だけど本人はKAZと自ら言う)とおっちゃん(本名は小川健太おっちゃんというアダ名)の三人で51分署捜査1課というグループを結成していました。活動内容は主に探偵ごっこです。
きっかけは佐藤がKAZに釣れられて「富士見街道のダンシングクイーン」についての謎を一緒に解き明かしたところから始まり、同じ班のおっちゃんを巻き込んでクラブを結成しました。そして「理科室の机に彫られた文字列の意味探り」や「自宅の場所を忘れてしまったおじいさんの家探し」や「先生の車を観察して週末の様子を推理」したり「午前二時に八幡神社にて本当に人魂が出るか」確かめてみたり……いろいろやっていました。
それらがややマンネリ化し始めた頃のこと、KAZは「デオドロス城にガサ入れする」と言い出します。
彼らは好奇心旺盛な小学生たちです。「やっちゃいけない」と言われると、「やりたくなる」のが性、デオドロス城に向かうことになりました。そもそもデオドロス城も先生や親からは「行っちゃいけない」場所なのです。
デオドロス城は人家と畑がなくなた先、雑木林の中にあります。雑木林の前には有刺鉄線があるという徹底っぷりなのですが、子供達はそれをくぐり抜け、さらには森を歩き、やがて雑木林が切れた先までゆくと、目的の建物が見えてきます。2、3メートルほどレンガの塀に囲まれ、建物は雰囲気ばっちりで、やはりデオドロス城と呼んでもおかしくありません。

----(ネタバレあり)----




男子たち
男子たちをそれぞれ振り返ってみます。まず主人公の佐藤くんは、論理的推理ができる人のように思えました。彼はちょくちょくでる賢い論理的思考は、物語をいい工合にまとめていました。一番まともでもあり、それが普通と言える由縁かもしれません。
次にKAZ君、彼のヒラメキと行動力はピカイチでしたね。佐藤とおっちゃんは彼に引かれていろいろ散策をしたというように、リーダーシップもあって面白いことがあれば巻き込んで、更には自分なりの理念、

あの人魂の正体はイルミナイトだった。(中略)結果なんてどうでもいいんだ。行動を起こすこと、自分で確かめることが大切なんだよ。」

などすでにあるという人物です。アメリカかぶれでもあってかっこいいと思うんですけど、わりと最後までロマン追って論理的思考が抜けているところがあるようです。
最後におっちゃん。おっちゃんは生き物を大切にするシーンがあるのみかと思えば、佐藤とKAZが届かない部分を補っているように思いました。ちょくちょくある小学生らしいドジなところをいってに引き受けているような節もあり、アメリカ映画出るデブの陽気なハッカーを想像しました。たぶんあんな感じなんでしょう。
それぞれ典型的小学生っぽい感じでした。ただ、東京のニュータウンに住むだけあって(僕のイメージです)それなりにお金持ちだったんだろうなと思いましたね。主人公の佐藤翔太君だって「ごくごく普通の小学生」と言ってますけど、帰りに雑誌買うぐらいのお小遣いもらっているようですし、カメラも(お下がりですが)持っているようです。そんな裕福さはKAZとおっちゃんにもあるように伺わせましたよ。

女子たち
「ちょっと男子ー」と普段から言ってそうなタキゾノキヨミと、思い込みが激しそうな前兆がある桂木さんの二人が登場しました。
タキゾノキヨミについては典型的な学級委員長みたいな感じで「うっせぇババア!」って男子から言われて先生に言いつけてそうな人です。けれども最後は丸く(なってない)というか(不正をヒデ兄からマジレスされて)一歩成長したように思えますよ。
桂木さんはけっこう真面目というか生真面目な印象のままです。優等生という彼女はタキゾノキヨミとはまた違った偏見がありそうで、生きるの大変そうだなぁとか他人事のように思いました。彼女に関しては兄が居て、兄の不思議な話を真に受けているようでしたね。物語的にやっと解決して、兄の話も浄化されて、兄もいいように立ち直ればなと思います。

51分署捜査1課
この物語の探偵役であり、ワトソン役でもあるグループでした。タキゾノキヨミと桂木さんが入る前も活動していたらしく、それはそれはたのしい探検の旅に出て行ったことを思い返します。僕も中学校の頃、友達とどうでもいい寄り道をして探検したもので、そんな感じなんだろなとか、むしろそれより本格的なんだろうなと想像しました。
そんな探偵ごっこをするグループに今回タキゾノキヨミと桂木さんが追加し、(同じ班だけあって)51分署捜査1課は完成されたといえます。
小学校の頃、「班」というものの影響力ものはとても大きかったように思えます。とくに男女となれば言い合いもあったし、それらいろいろと面倒ながらグループという組織の意識はいつもありました。そんなグループで一緒に遠足気分(れっきとした潜入捜査ですよ!)で洋館に立ち入ったら死体が(しかも奇妙な)あったなんてそりゃ、とても驚くでしょう。失神してもいいのに彼らはみなわりとまともで、協力してなんとかしたというのがすごいと思いません? 僕は思いました。リーダーがさすがだったのでしょうね。

デオドロス城
デオドロス城というより、デオドロス城の小屋が話の中心なのでデオドロス城はただの別荘になります。その別荘とは明日香さんの家として(お金持ちなんだろうな)使われているらしいです。初っ端のあるデオドロス城に関しての噂の中に女の霊が……とか、ピアノが流れていて……とかは「実際に人が住んでいるのだから」が答えとして解決できますね。
ところで物語最後あたりで子供たちに向かて明日香さんが手を降っていたんですよね。今後のこと、対人恐怖症の明日香さんが子供たちと戯れるようになったらなとか思ったけど、まぁそうなったらおそらく純粋無垢の子供たちから、「魔女がいる!」なんて噂が立ってまた明日香さん傷つくだろうからやっぱいいです。

デオロドス城にある小屋あるいは物質転送装置
物語の舞台です。あの小屋については「不思議な仕掛けがある小屋だった」と一言でいえます。シンプルな作りだからこそ強いということを実感したようであり、あの小さな仕掛け(トリック)には素直に驚きました。個人的には途中で小屋の仕組みは読めてたりしたんですけど、実際に犯行に使うにはどういうことだ? とも思ってましたので。
あの小屋については金持ちの道楽ということで終わってしまいます。それ以上もそれ以下もなく、加えて殺人現場となったこと、子供たちがその瞬間にやって来てしまったこと、犯人が細工をしたこと、あと場所的な噂、それらが重なりあって物質転送装置が完成したようです。ロマンがあってよろしいことです。

犯人と犯行について
本来この事件は遠く離れた大阪で被害者のアリバイを作り、東京で犯行をするというものでして、犯行場所も確実に人気のないことを約束された場所です。児童文学らしかなぬ、けっこうガチの計画なんですよね。
大阪のアリバイ作りをしたタイソン(仮)もだれも見抜けなかったようですし、あるいはナルホドくんなら「そんなサングラス、僕でも装着できます!」と変装を得意のハッタリで破けるかもしれませんけど、まずそんな逆転ないまま犯罪成立していたと思いますね。
今回、子供たちが死体を見るというところから話が始まっています。死体を見た子供たちの衝撃については置いておくとして、犯人からもあの瞬間とはなかなか衝撃的だったのでないでしょうか。けれども犯人は冷静であり、その場で死体を消してしまうという細工をしています。しかし、デジカメに幽霊(現像が残ったミス)と指紋(うっかり)を残してしまうという失態をしてしまい逮捕になりました。
ここで思うんですけど、犯人のツメが甘いなというわけではなさそうなんです。むしろ僕は犯人賢いほうだと思いますよ。だって、あの場で思いつく最善だと思いますもんあれ。たまたま手袋をしていなかった、デジカメの現像部分をうまいことできなかった、あとは佐藤君がデジカメ触らなかった。など、そういった小さな偶然が悪かっただけだと思います。

【まとめ】
子供たちの考える物質転送装置など登場する展開にドキドキしていたら、普通に館シリーズっぽいミステリーでしたね。
個人的に思うこの作品のいいところは、登場人物はみんな有能にあるところでしょう。
わりと「そこ気つけよー」というミスをする人物(そいうのが魅力のキャラは別)が作品に出てきたりします。けれどもこの本に出てくる人物は、子供たち、ヒデ兄、犯人までも、(ドジやる場面もありますけど)みんなちゃんとしてるんですよね。それがとても僕にとって良く見えました。

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