とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

校舎の静脈

54冊目
「校舎はラビリンス。そこでは日常はたえず奇妙にゆらいでいる。」という帯が気になって手にとった本です。

校舎の静脈

校舎の静脈

短編『兎』『湖畔情景』『若水』『校舎の静脈』の四つが収録されている本なのですが、四編ともあらすじで説明するには難しい本なんですよね。
個人的に、読んでて既視感を覚えたシーンがちょっとあり、それら問いかければ「宮沢賢治っぽいな」と気がついたんですよ。加えて「純文学っぽいな」とも思いました。まぁ宮沢賢治も純文学もろくに読んでない僕が言うのもなんですし、ここは僕の主観的なものだと思うのであくまでっぽいなという感じです。
そんなことを踏まえて作品の内容をイメージするなら、宮沢賢治と純文学を3で割ったような本になりますね。(ちなみに残りは風景描写です)
後はそれぞれ帯に書いてあるように、「日常」という光景の中で「奇妙」というものが揺らいでいましたね。
まぁ、それぞれ短編ですので書店などで少し立ち読みしたらなんとなく僕の言っている文体やら宮沢賢治やら、世界観の雰囲気についてもわかると思いますよ。(適当)


-----(ネタバレあり)-----

四つの短編それぞれ振り返ってみようと思います。

『兎』

例の公園
この作品、公園が登場しました。「兎」が住んでいた場所であり、「女」が餌をやりに通っていた場所でもあります。
そんな公園とは犬が多く通るらしくて、犬を飼っている人を含む人々の憩いの場として積極的に利用されていることが伺えました。
ところで気になるのは、そんな人気が多い場所に「兎」という存在がいることです。実際に兎は居たのかもしれませんが、その兎がいるには奇妙な場所だと言えると思います。だって公園の木の穴の中に兎がいる←わかる 兎はそこにずっといるみたいな描写←わからない……というか、その後の展開で「兎」が兎なのかどうかわからなくなっているんですよね。あれみたいです。安部公房みたいです。(困ったときの安部公房


この作品のキーキャラクターになります。最後の最後の行で「女が兎とともに立っていた」という部分からすれば、一見かわいらしい兎を抱えて立っている女の姿を想像したいところですけど、いろいろ(説明するのが面倒)な今までの描写から、その「兎」とは兎なのか? という疑問を持ってしまいます。
読み始めた頃は兎とは兎だと(せめて擬人化したようなイメージ)思ってましたけど、この短編読み終わる頃には「兎」は兎ではないなにかだと僕は結論しました。もっといえばきぐるみ(を着たオッサン)を想像しましたよ。途中描写してあった兎もたぶんだいたいこれなんでしょうか……と考えてるんですけど定かではないです。どちらにせよ、女ときぐるみが立っている光景は奇妙だといえます。


『湖畔情景』

人魚とかいうクソアマ
この『湖畔情景』を読んでまず書こうと思ったことです。読んだ人はわかると思いますけど、人魚の女性らしい性格がなんともみんなを振り回していました。(オブラートに包んだ言い方)
彼女のなにがいけないのか、なにが僕を不快にさせたのかなどは挙げてゆきませんが、たぶん読んでくれた人なら僕の言ってる意味がわかると思います。その共有だけで僕はいいです。

河童さんたち
この作品に登場する河童は器用にも服を織っているらしいです。どんな服だとは描写されていたように、軽くて暖かくて裏は丈夫な花色木綿……ではなく、素朴ながらも丹精込められていた服らしいです。
河童のすごいところはそんな服を織ることであることもちろんですが、修羅場っていたところに(明らかに)予期せぬ訪問があったにもかかわらず、時空の歪みを利用してなんとか作品を完成させていたというところです。ちゃんと作るのがすごいですよね。
あと河童は幻聴が見えるレベル(河童談)まで追い詰められていたところを、有能な助手さん(伽室さん)が見かねて助け舟を出していたというのも、信頼しあってるんだなぁと思いましたよ。というか、とあるキャラのせいで伽室さん評価すごく高いです。だから即席スープと作ってる伽室さんの画像ください。


この作品には龍が登場します。彼に関してはとても誠実で堅実でとある人物の理解の及ばない遠く先のことを考えているな、と感心する想いに加え「災難だったな」という同情の眼差しを送っています。
そんな彼を感想に上げた理由は、龍が考えたていたことがとても大切なことだと思ったからです。

思いがけぬ頼まれごとから、予想外の道草と時間を食ってしまったものの、あらかじめ、念のため早めに出立しておいたことが功を奏し、(中略)結果としては特に問題はなかったので助かったが、つくづくと、時間には常にゆとりを持って早め早めに行動することが大切であると、龍は改めて痛感し、強く肝に銘じるのであった。

時間には常にゆとりを持って早め早めに行動することが大切であると。(大切なので二回書きました)


若水

この作品について
主人公の年男が実家に帰る話だとはわかるんですけど、結局どうしてどういうことだってばよ? という訳の分からない気持ちになりました。
たしか展開は、年男は久々の帰省に懐かしい想いにくれたこと、親の愛情に感謝し今までのことを恥じたこと、妹と再会したこと、あとは父親に謝って懺悔のようなことをしたこと……と、そんな感じでした。
これに僕なりの現実的な見方をすると、年男が実家に帰省をして家族(みんな亡くなっている)を思い出しながら幻を見ているのかなと。そして長年懺悔していたわだかまりが謝ることによって、鶴が飛んでいったように、懺悔もできて綺麗さっぱりしましたよみたいな。
いや、わかりませんけど。

『校舎の静脈』

生徒たち
同じ学校にいるたくさんの生徒たちがこの作品に登場します。生徒たちの名前をいちいち覚えてない僕が悪いのですが、とにかくたくさん登場しましたねという感想がまず1つです。
次に思うのは、たくさんいればそれぞれ違った世界が見れるわけで、青春っぽい話題もあれば、なかには世にも奇妙な物語みたいな現象に悩まされていると、学生の見る世界が多種多様だったということです。
個人的には『世にも奇妙な物語』みたいなことを体験している(意識のタイムスリップをしていた生徒)(安行を目撃した生徒たち)話を掘り下げて書いて欲しかったと思いましたけど、まぁこれはミステリー小説ではないので仕方ないのかもしれません。というか、純文学ってだいたいこんな感じなんですよね。展開はご想像にお任せしますみたいな。悪くないんですけど、そりゃ気になりますよってことです。

物語構成
この短編、いろいろなジャンルの話がありました。基本的に学校内という場所は決まっているんですけど、本当に全カテゴリー行くんじゃないかというほどのバリエーションがこの話にありましたね。たぶんこの短編のコンセプトはいろいろなジャンル(青春モノ、ホラー、ミステリー、SSまでも)の話をまとめて書いてみようみたいな、そんな実験的な作品なのだと思いますよ。(名推理)
個人的には物語が収集して欲しかったという欲もありますけど、あのままだらだらと続けているというのもこの作品ならではの良さだと思います。あれがずっと続いたのが「純文学の学園モノ」なのでしょうね。

【まとめ】
ちょくちょく書いてあるように、この本は純文学っぽい作品だと個人的に思いました。僕が純文学に対する熱い偏見(描写がすごくある、なんかよくわかりにくい)が発動してこう僕は思ってますけど実際のところジャンルはわかりません。多分ジャンルは大衆小説に含まれるだろうし、ならばそう考えると「みんな難しい本を読んでいるのだな」とか思っちゃいます。
ところで世界観がわりといい感じですよね。日常の描写に力を入れているからでしょうか、ちょくちょくあるおかしな文章が際立って見えました。その「ん?」という奇妙な感覚、あれよかったです。

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