とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

人類は衰退しました9

59冊目
人類は衰退しましたシリーズの最終章です。

人類は衰退してはや数世紀余り、現在の人類は「妖精さん」という別種族に明け渡しています。
いわば「旧人類」として人々が過ごしているわけですが、その中での一人が主人公のわたしです。わたしは調停官という職につき、「妖精さん」と「旧人類」の中間地点に立ってなんとかかんとかする仕事をしています。
ちなみに妖精さんは無邪気な魔法を使うような方たちであり、わたしはいつも振り回されることになります。

この巻では『妖精さんたちの、ちきゅう’』が収録されています。

妖精さんたちの、ちきゅう’
月に行った祖父の身になにか起こった。というのは、わたしにも理解できていました。里の復興の際に「大事にはなってない(意訳)」と祖父に伝えられたとおり、いつか無事に帰ってくるものだとわたしは願っていました。
ただ現実は非情で「連絡途絶え、通信を打ち切る」という手紙をわたしは受け取ります。丸まった妖精さんと一緒にいるから、祖父なら、夢のなかで連絡ついたから、そんなごちゃ混ぜの思想にのまれ、わたしはついに「月に行ってみよう」という決心をします。



---(ネタバレあり)---
※一読してからネタバレありを読むことを薦めます。











目指すは月
月を目指す、という展開はトンデモがありながらも熱いものを感じさせました。なんというか、『竹取物語』で今まで身の丈にあったような展開だというのに「実は私、月から来たの」みたいな唐突トンデモを感がします。この『人類は衰退しました』もSFであってSFでないファンタジーな作品だったため、唐突に「月に行く(意訳)」なんてものは「むずかしいですー」「かたおもいみたいな?」「ならいけるかも?」「あたっくします?」「ぎょくさいですー」など僕の脳内妖精さんが言ってましたよ。あるいは妖精さんならやってくれる、とも思ってましたけど、そんな理性の心配や杞憂とは裏腹に一心に突っ走るわたしはまったくアホとしか言いようがありません(褒め言葉)。
僕はYのような心配してたのですが、わたしはなんと(覚醒して)月に行っちゃいます。過程はどうであれ、結果として行っちゃったのだからすごい。そして、どんな形であれちゃんと祖父のいる場所まで到達するんですよ。すごい。

祖父(概念)
祖父は真理に気がついて、概念と化していました。この真理についてはあとに書くとして、概念になった(あるいは妖精なった)祖父自身楽しそうで何よりです。まさに「大事にはなってない(意訳)」という状況であり、むしろ「死ぬほどたのしい(意訳)」という祖父にとっても最上の状態なんじゃないでしょうか。いいですね。空腹もなく、眠くならなく(妖精さんは寝るのかな?)好きなだけ調べ物ができる状況だなんて、憧れますよね。
気になるのは甘いモノを欲しがるのか、というところです。祖父に甘いモノを食べているイメージは(たしなむ程度)あまりないのですが、妖精さんみたいになった祖父は甘いモノを見るなり我を忘れることがあるんでしょうかね。いや、まだ実体化(妖精さんモード)となっているか不明です。あるいはダイレクトメールを撃ち込んだのは妖精さんモードになったから、かも知れませんが。

わたし(覚醒)
途中というか過程が端折られている部分、わたしは大活躍(覚醒)していたらしいです。妖精さんに体を貸し出したということもあるでしょうが、やはり潜在的な能力もあるんじゃないかなと思います。妖精さんが人に向かって銃を撃ちませんし、脅迫や取引なんてするようじゃありません。潜在的な(祖父のため、もっと言えば家族で暮らしたい)能力が覚醒(無意識に妖精パワーを使う)へと繋がったのだと思います。やっぱわたしさんすごいです。さすわた。
あと、わたしが覚醒したら眉毛が太くなるタイプのようです。(髪じゃないんですね)

妖精さんが見てきた地球
妖精さんが見てきた歴史(人類史というより生物史)をわたしは閲覧をしてゆきます。わたしは「祖父を助けなきゃ…(使命感)」であんまり見てないようですが、祖父さんはちゃんと見ていたようです。僕としてももうちょっと見たい気持ちでしたが、まぁ、やはり家族のためなら仕方ないと思います。
この人類史というものはこの世界で言う大断絶のあたりも閲覧されており、ここで旧人類と新人類の「人類」という枠組み交換がされたのでしょう。ここあたり電磁波の汚染というものがあったらしく(隕石撃墜しようとかなんとかですよね)、それが人類がほぼ全滅してしまった大きな要因(もう決め手)だったのかと僕は思います。
恐竜のようにドーンと隕石落ちてきて一気に死滅したのではなく、さまざまな要因が重なって衰退し、人類は消えてしまったということが想像できました。

世界の真理
考察については(長くなりそうなので)次回書くとして、祖父が行き着いた結論は「私達が、私達が妖精だ!」ということでした。おもしろいことに、わたしも祖父もYも巻き毛も局長も(助手さんをのぞく)みんなみんな妖精さんだというのです。もっとおもしろいのは、妖精さん(新人類)が自分を旧人類と思い込んでいるということです。まさか人類の固定概念(魔法なんてない、あるいは成熟)までも再現するなんて、妖精さんやばすぎですよ。さらにおもしろさを加えるなら、普通に子作りできているところですよね。妖精さん特有の分裂じゃなくて、ちゃんと愛し合って人間の生まれる過程を経て子供ができているとか……再現のレベルを超えてます。
この気付きは物語の根本を揺るがすような新事実でですけど、実際は物語としてはわたし視点でしかないので(僕ら読者が見る景色です)、観察対象はわたしが見た世界となります。が、それもまぁ、ミスリードしてるんでしょうね。(田中ロミオさんやばい)しかしそのおかげで、今まで読んだ『人類は衰退しました』での多少の「ん?」という違和感がすべて腑に落ちた感じします。これが伏線回収とやつですか!

ジョシュア・コートニー
旧人類最後の生き残りらしいです。本作読んで、もうタイトル「ジョシュアの世界が衰退しました」でも良いんじゃないかな(適当)みたいな感じですけど、子作りできる体になった妖精さん(わたしなど)と血を強くすることを考えると、本当に新しい人類の幕開けが始まりそうな気がしてきますよね。旧人類と新人類のハイブリッドとかもう平和の象徴でもいんじゃないですか。
気になるのはジョシュアくんの「姐さん!」という言葉遣いと、外見の雰囲気ですよね。ここまで作品を読めばわかると思いますが、わたし補正(妖精パワー入)で世界を見ているのだから、ジョシュアくんもきっと補正かかっていると思うんですよ。旧人類だからこそミスディレクション(印象の薄さ)を入手していたらしいですし、話し合い(意思疎通)もろくにできなかったようですからね。言葉遣いからして結構ワイルド「たまには、大胆?」を体現しているようですし、わたしが居なくともわたしを助けに月まで飛んで来る計画を実行してしまう(妖精補正なし)というたくましい(たくましすぎる)方ですので。どうなんでしょう。
見かけによらずというか、見る側がガバガバ視力だったと気がついたからこそ、彼がどんな「人」なのか気になるところです。祖父にはジョシュア君がまた違ったふうに見えていたのかもしれません。
あと超どうでもいいんですけど、デュエルマスターズで「薫風妖精コートニー」ってカードあるんですよね。それ思い出しました。

【まとめ】
忙しなく訪れる日常に翻弄されながらも、どこか余裕のあるわたしが優雅に「今日も1日頑張るぞ」ってな感じで終わっています。
新局長となって成長しているな、と思う一方で、この先がとても気になって仕方ないです。あとがきに後日談があるとかなんとかあったので、それら読むのがとても楽しみです。
放心状態とはこのことでしょうか。と、僕はこの本を読んで少し思いを馳せていました。
今まで感想が難しいといってましたあれば、「絵本を読んでいるみたいだ」ということでした。けど今巻はなんというか、「すごい話だ!」という意味で感想が難しいものでした。すごいものを見ると、ぼーっとしちゃいますよね。

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