とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

ヘヴンリープレイス

61冊目
「期間限定の秘密基地」とかもう読むしかないです。

ヘヴンリープレイス (ノベルズ・エクスプレス)

ヘヴンリープレイス (ノベルズ・エクスプレス)

この夏のこと、一家は引っ越しをしました。たとえ前の家とたった3キロしか変わらない距離だとしても、小学6年生の主人公、桐本和希にとっては心機一転といった新鮮な気持ちになるのも無理はありません。
引っ越してから3日目のこと、和希は自転車に乗って新しい街の探検をします。
そこでこんもりとした木々を見つけ、「公園かな?」と和希は自転車を押して入ってみることにしました。しかし公園など先になく、ただの雑木林であることがわかります。残念に思う和希ですが、雑木林には喧騒などは聞こえてこなく、むしろなにもないことが心地よく思いました。
しばらく当てもなく雑木林を歩いていると、視界に白いものを見つけます。白いものとはよくよく見ると虫取り網であり、和希以外の人間がここにいるということがわかります。
和希はほっとしたような、がっかりしたような気持ちでその人のほうに行ってみれば、小柄な少年がセミ取りをしていました。
和希は声をかけます。
少年は自らを「エイタ(英太)」と言います。小学4年か3年かという年齢と相容れない幼さを持っていて、どこか和希がいじめていた梅田俊成に似ているような面影があります。和希は「そんなやつと。こんなガキと遊ぶのか?」と少し悩みますが、「どうせやることもないんだし」と一緒にセミ取りをすることにしました。
英太は純粋さを持っていました。そんな英太の笑みには不思議な力があり、和希にはとても魅力的に見えていました。
その英太が別れるとき「また明日遊ぼうねー!」と言います。和希も約束します。
次の日、和希は雑木林に向かっていました。

----(ネタバレあり)----



和希
いままで(多少ですが)児童文学を読んできた身としては「いじめる側」が主人公というのは珍しいんじゃないかと思いました。ついでに言えば本作、なにか俊成(虐められていた人)に謝るということもないという展開になっています。「どうなんだろ」とは思いましたけど、普通にこれ夏休み中の話なんですよね。まぁ夏休み中にわざわざ会う仲ではないでしょうし、作中登場しないのも無理もないとは思いますけど……あの後学校で「優しい世界になればいい」とは思いますが。
ところでこの和希君、ピアノ弾けるらしいです。すごいですよね。僕はというか音感というか、音楽センスが皆無と言っていいほどなので「すげぇ」としか言えません。小学6年生でなんとなくノリで赤とんぼオカリナで弾いてみたとか、そういうの音楽センスある人ならふつうのことなのでしょうか。よくわかりません。
あとちょくちょくボンボンぷりを見せていますよね。いろいろありましたが、個人的には物語最後辺りでゆうちょ銀行で普通に2万おろしているところがベストボンボンだと思います。僕、ゆうちょ銀行はじめて使ったの20歳だっけ、それぐらいでした。
彼に言えるのは僕よりすごい子だ。ということです。和希君にはぜひ、恵まれた環境で恵まれた成長をしてほしいものです。

英太
物語の、たぶんヒロインになります。会う人達ほぼみんな(図書館にいたおじさんは除く)が「天使かな?」といえるらしいです。
この英太みたいな子供、いつもついてきてずっと笑っているような子というのは小さいころ覚えがあります。彼らは「懐く」という表現が合うように、ただただ懐いた人にずっとついて行ってましたよね。しつこいとか言われても笑っているような彼みたいな人、というか僕がそのタイプの人間でした。(意訳:胃が痛かったです)
僕がどうであるかは置いておいて、英太君はわりと素直でありました。のろまですけど純粋であるからこそ、アルコール中毒の親に自己肯定感を否定され、そのまま信じてしまう痛々しさというものを持っていましたね。なんとかしてなんとかしたいものですが、作中ではどうにもなりません。かろうじて老師が「君はすごい子だ」みたいに自信をもたせているようですが。どうなんでしょう。
あと物語最後に和希とともに家出をしています。いや、どうなんでしょうね。支配からの開放といえばいいかもしれませんけど、どうなんでしょう。

有佳
絵を描いていた中学生の女子です。「絵がうまい」と表現されている文だけでは「絵がうまい」程度しかわかりませんけど、どこでも絵描いちゃっている様子と、図書館行っているのに本読まず写生(これしていいのか?)をしている様子から、よほど描くのが好きなんだなと思いました。あれだけ描く意欲があれば大丈夫だと思います。
ただそんな大丈夫を受け取れないほど、有佳は「お姉さんいればいいの」という自分を卑屈に見る部分もありました。有佳と有佳姉の絵を見比べていないのでなんともいえませんけど、芸術面は才能というどうしても躱せない強大の壁が現実にありますからね。
そう考えると、和希は恵まれているといえますよ。「姉より上手い(持論)」と心のなかで思うぐらいですから。とはいえ、「慢心しないように」と言いたいです。いや、僕はまったくの部外者ですし、ブーメランなんですけど。
あと、和希と図書館から森に帰っている時「ピ・ア・ノ」と言うシーンあるんですが、あれどきっとしました(報告)。

史生
ジャイアン的なポジションだと思えば、普通に良識ある子供でした。ただ貧乏であるがゆえに、良識を踏み越えて犯罪を犯してしまいそうな人でもあります。
僕が彼に思うのは、「真っ直ぐな人なんだろうな」ということです。正直で、嘘がつけなくて、不正が許せなくて、英太とはまた違った真っ直ぐな感じがあります。たぶんそれを正義感と呼ぶんでしょう。
正義感が強いがゆえに、社会の不平等さを訴えるロックぶりを見せています。わりと何も考えなくてふらっと行動してしまいそうな人なので、もう少しだけ、もう少しだけ我慢してくれたらなと思いました。
あと数年生きるだけで「大人」と一緒に働けるようになるのだから、それまでは頑張って欲しいと思います。まぁ、史生なら大丈夫だと思います。
この本を読んでいるなら史生をばかにはしないと思いますが、彼は貧困でありながらも物語に素直に感動して、学びの姿勢を見せているんですよ。そして「学校に行きたい」と言うんです。なんだかこちらも背が伸びる気がしますよね。

老師
この話に登場する先生です。良識と知識の塊みたいな人で、子供たち(特に有佳)から慕われていました。なんか不思議なオーラを持っているようで、読んでいる僕も「ありがてぇ」と思えるようなごくごく当たり前だけど、大切なことを言っています。ありがてぇです。
彼に関しては発言の引用をいくつかピックアップします。

「そうだよ。だれもが歴史の中で生きている。文字を知っていれば、自分の歴史を記録することができる。それに、字を知っているから大事なことも人に伝えられるんだよ」

「音楽や図工や、体育は楽しければそれでいいと思うんだけどねえ、ぼくは。史生はどうかな」

これは史生が言ったことですが、老師がいいこと言ってたので挙げますね。

「おれ、英太にいってるんだ、(中略)英太はばかじゃない。老師がいうんだ。人よりゆっくり歩いているだけだって。ちゃんと目的地に行けるんだって。おれは、絶対あいつを守る」

人よりゆっくり歩いているだけだって。ちゃんと目的地に行けるんだって。
展開も相まって、史生のこれが僕のベスト台詞になりますね……。
ところで、老師は故郷に帰れないほどの罪を犯したと言っています。その罪とは何なんでしょうか。村八分とまではいかないですけど、それぐらい自ら「追放」しているのだから、重い罪のはずです。それでいて警察に追われていない罪となれば、大きな被害(森を焼いてしまった)などだと思うんですが、結局分からず終いでした。どうであれ故郷に帰って海が見れるといいのですよね。

美帆
ボーイッシュな女の子です。初っ端から「突然、ピアノを習いたいと言って家に来るようになった」という部分でラブコメの波動を感じる事になって、僕はもう、その文章の破壊力に「すごいことが起こるぞ…」とか思ってました。けど、実際は有佳の方がヒロインヒロインしていて、加えて言えば和希は有佳に気を寄せてすらいます。切ないですけど、それがまた小学生(中学生あたり)のリアリティ出ているような気がします。
最後らへん健気に行動しているんですが、結果として和希は聞いて感心しても「あ、ふーん」程度なんですよ。かなしみです。しかも「有佳と同じ学校行けるね! また会えるね!」とかいう発言、鈍感っぷりがラノベ主人公です。
あと美帆も美帆で久々に登場したかと思えば、「オッス!」とか言うんだから笑いましたよ。なんだったんですか最初のラブコメの波動は!

【まとめ】
「夏休み」「期間限定」「秘密基地」とかもう最高だな(イメージしてたのはファンタジーでした)。とか思ってましたが、いやに生々しく、壮大になにも始まらない、ただあるだけの家でした。けれども少年少女の枷を外す何かがそこにあったようで、学校では教えてくれない学びを学んでゆく子供の姿を見ることができました。
物語は、そんな学びをした子供たちがみな枷を外し「俺達の冒険はこれからだ!」みたいな感じで終わっています。それぞれが歩んでゆく姿が最後ちょこっと出るのですが、どれも今後が気になる感じで終わってます。「いや、だって夏休み限定の話じゃん?」と言われれば、「そうだな!」といえるかもしれませんけど、エピローグちょっと欲しかったですね。俊成に謝って仲直りする和希とか、英太が走り回ってるところとか、史生が働いているところとか、有佳が部室で絵を書いているところとか、あとは甘酸っぱい雰囲気出してる美帆とか……数ページでいいんです! 数ページでいいですから! そんな感じです。
とはいえ、本作ではろくに調べずに和希と英太は旅立ちしてしまいましたけど、いや、なんでしょうかね。あの後どうなるんでしょうか。大丈夫なんでしょうかね? わかんないです。
まぁなににせよ、子供たちが成長してよかったんじゃないですか(適当)。

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