とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎

63冊目
宇宙ヤバイ素粒子もヤバイ。

宇宙に関して書かれた本になります。
タイトルを見て「大きい宇宙と小さい素粒子のどこに関係があるのか」と思われるかもしれませんが、作者さんはこの2つ時の関係を「ウルボロスの蛇」にたとえ、頭(宇宙)を進むと尻尾(素粒子)に行き着くのだ。という風に話が進んでゆきます。
すこし前までは光(望遠鏡とか人工衛星とか)で宇宙を探っていたんですが、いろんな機械が高性能になったおかげで宇宙から降り注ぐ素粒子ニュートリノとかクォークとかです)についてまでわかってきましたよ。という宇宙の話、入門編になります。
加えて書くなら、宇宙を見ていくうちにいつの間にか科学が進歩して、カガクのちからってすげー謎技術によっていつの間にかビックバンとかそこらへんの真実がわかってきて宇宙の法則(主に物理学界の定理)が乱れててんやわんやの様子まで書かれてあったりしますよ。


ネタバレありとありますが、今回も自分の考えのまとめなど書いていこうと思います。

※今回の本は難解で、理解できていないところがあるかもしれません。気になった方は各自調べていただくのが確実だと思います。

----(ネタバレあり)------


まず(僕がわからなくなったときのために)情報を整理することにします。

宇宙
宇宙は急速に膨張しており、広がるスピードは加速している。ゴムを広げるように、全体が伸びているイメージである。
その宇宙の総エネルギーを分けた場合、暗黒エネルギーがほとんどを占める。
(暗黒エネルギー73%、暗黒物質23%、普通の物質(原子)4.4%、ニュートリノ0.1~1.5%、星と銀河0.5%)
暗黒エネルギーは宇宙がいくら広がろうが密度が薄まることはない。←意味わからない
ビックバンで出たはずの反物質(質量やスピンが同じも電荷などが正反対の粒子で構成された物質)が宇宙では全く見当たらない。
質量はエネルギーになり、エネルギーは質量になる。←相対性理論
ビクス粒子(著者は「暗黒場」と呼んでいる)が宇宙全エネルギーの10^62%あると噂されている。

素粒子
原子は「原子核+電子」という構造であり、原子核は「陽子+中性子」であり、陽子と中性子は「クォーク」から成り立っている。
原子はすべて「陽子+中性子+電子」の3種類に分解できる。陽子と中性子はさらに「クォーク」という素粒子に分解できる。
素粒子とはそれらクォーク、あと電子、ニュートリノに対する呼び名である。
電子顕微鏡は物質に小さな波長をぶつけて跳ね返ってきたものを「みる」仕組みである。
あらゆる「粒子」は「波」のように振る舞い、あらゆる「波」は「粒子」のように振る舞う。
電子は原子核の周りをぐるぐる飛び回っているのではなく、原子核の周りにある「波」としてうねうね揺れ動いているだけである。
(電子が波の性質を持つことを実証したのが「二重スリット実験」)
原子の構造は「スイカ型(原子内部に電子が回っているイメージ)」ではなく「土星型(プラスの電荷を持つ粒子の周囲を電子が回っているイメージ」である。
クォークは現在、第3世代まで見つかっている。←「(素粒子の)標準模型」とぐぐるとわかりやすい
素粒子クォーククォーク系統)とレプトン(電子系統)に分けられ、世代を越えるごとに重くなる。
クォークレプトンを「フェルミオンフェルミ粒子)」(同じ場所に重ねて置けないやつ)と呼び、一方で(同じ場所に重ねて置けるやつ)もう片方を「ボソン(ボース粒子)」と呼ぶ。←「光子(光)はボソン」と想像したら性質がわかりやすい(詳しくは「パウリの排他原理」で検索)
フェルミオンは物質を構成できるが、ボソンは物質を構成できない。←わかる
原子と原子は電磁気力(電気と磁力)によってくっついている。←まぁわかる
電磁気力は光子というボソンのやりとりで生じる。←は?
(たとえばイカダの上でキャッチボールをすると、反動ですこしイカダが離れる。それが斥力が発動しているイメージ)
粒子は「波」なので観測するときはどこにあるのかわからず、観測された瞬間にキュッとまとまり「粒子」に変わる。つまり観測者が観測しないと粒子の位置はわからない。これはあらゆる粒子でも同じ。←いっそ「コペンハーゲン解釈」とぐぐってもらった方が早い


今回は個人的に衝撃だったところを挙げていこうと思います。


宇宙は膨張しているのに暗黒エネルギーの密度は変わらない
宇宙がすごい勢いで膨張していることはどこかで聞いて知っていました。しかし当然出てくる疑問のひとつ「宇宙のエネルギーはどんどん薄まっているのではないか」については思いつかなかったんですよ。そんなこと考えたことなかったんです。
個人的に宇宙とは真空で何もないイメージ、もっといえば観測不可能なよくわからない物質がたくさんあるイメージ程度だったので、この暗黒エネルギーについてはひどく驚きました。
そもそも多すぎて濃度が変わらないならわかるんですが、「宇宙」という箱がすごい勢いで広がっているにもかかわらず、73%の暗黒エネルギーは変わらずそこに「73%変わらずにある」って、気持ち悪いレベル通り越してヤバイですよ。宇宙ヤバイ

光は粒子であり波である
まず声に出たのは「は?」ですよ。個人的に光とは一直線で進む線みたいなもの(結果的には線)だと思っていたので、粒子はわかっても波といわれると「え、なんですかそれ(笑)」みたいな感じになりました。
物理学的には逆のようで、先に波の傾向が見つかったらしく(物理学者プランクさんヤバイ)それから粒子の性質を見つけたらしいですね。
まぁそんな半笑いだった僕も、二重スリット実験にてランダムだと思われた光の飛び散りが傾向がある様子を見て「ほー」と思いました。こう綺麗に出されると「光は粒子であり波ってマ?」「マジだった…」みたいなくだりみたいなことになります。
こうして光(光子)に限らず、素粒子は粒子であり波とわかったわけですが。いやぁ僕らも君も波なんて並々ならぬことですよね。え?

グラビドンという存在
電気も磁石も光子だというボソンだと分かった今、キャッチーボールの例によってなんとか電磁気力が伝達するイメージができた(まだできてない)といえる状況なのですが、その粒子粒子って、急に「実は重力もグラビドンという粒子のひとつ」とさらっと言われても「え?」となりますよ。
ちょっと前に重力波というものが検出されたらしく、重力波については(『サイエンスZERO』見るレベルで)知っているんですけど、あれは粒子と呼ぶには……いや、波として検出されたのだから光のように粒子でもあるってことなのでしょうか。
ちょっと万有引力さんが固定観念引っ張っているみたいです。光なら粒子として想像できるのに、重力を粒子として想像するのは難しい……。でも重力波って波だから……つまり僕らは地球とキャッチボールしていると?(混乱)
そんなグラビドン、いつか検出されるといいですよね。あるいは暗黒エネルギーの検出が先かも知れません。けんきゅうしゃ! がんばえー!

ボソンとフェルミオンの違いはスピンによるもの
フェルミオン(その場に重ねて置けないほう)とボソン(その場に重ねて置けるほう)について。素粒子の場合、「スピン=角運動量(紐の先に錘をつけてぐるぐると回したとき 紐の長さ×おもりの重さ×回転速度)」は整数÷2になるらしいです(正確にはブランク定数を含む単位の整数倍)。
そのスピンが半整数(奇数÷2)になるのがフェルミオン、整数(偶数÷2)になるのがボソンなんですよね。
ここが個人的に驚いた理由というのは、さんざん素粒子について読んでおいて、電子とかクォークとかいろいろ出てきて、それらまとめあげる重要な種類の違いだというのに、違いは「奇数か偶数か」というシンプルなところに行き着いたところですよ。
てか物質の根本的なところって、「奇数と偶数」とか「+と-」なんかそんな単純なところで決まっていていたんですね! 「0と1」や「オンとオフ」で決まる機械となんら変わらないじゃないですか! ってな感じです今。

原子核の周りにあるバーチャル光子とは
説明するのも難しいんですけど、原子核があってその周りに光子がふわふわとあるらしいです。あるのがわかっていても、その「ふわふわとした光子」は見えないため、電場(光子がふわふわしているとこ)を「雲」のようなイメージを持って「ある」としてくれたらいい、みたいなこと本に書かれてあるんですよ。そのふわふわしたものを「仮想光子」や「バーチャル光子」と呼んでるらしいです。
わかるちゃわかるってばよ、という状況でここまで読んだんですが、問題はその次です。
荷電粒子が光子を吸ったり吐いたりとかするらしいんです。となればエネルギー必要になるじゃないですか? このエネルギーはどこからもらっているのか、というと「そのへんから」と本書に書かれてあるんですよ。(うそじゃないです)
僕も「そのへんから」って、エネルギーその辺からもらうって、適当すぎそれでいいの……? と内心思いました。スピンのエネルギーまで計算できるというのに、ここにきて急に哲学入ってきたぞ、みたいな。おもしろかったです。

自然界の法則に振り回される物理学者たち
素粒子の第2世代も見つかってないのに「第3世代がある!」とか言い出したり(小林・益川理論)、新しい解釈に納得ができず「神様はサイコロを振らない(半ギレ)」という反応したり(コペンハーゲン解釈を聞いたアインシュタインの反応)、「地下で研究しても素粒子届くはずないンゴ……せや! 高いところに行けばええんや!」と南米アンデス山脈登ってパイ中間子見つけたり(イギリス物理学者パウエルの執念)もうなんでもありですよね。宇宙の暗黒物質も気になりますけど、物理学者の発想や反応や行動力もなかなかにおもしろいものがありますよ。(尊敬してます)
これら昔だからというわけでもないらしく、今もなお分からないことは「それはない」というような理論を大真面目に考えているらしいです。
この世のすべては一本の紐だったやら、ビッグバンは破裂するやら、あるいは破裂するというより空間が裂けるやら……もうなんでもありの状態だと本書にかかれてました。それら仮説はぶっ飛んでいるものがたくさんあって、さながらアニメなど考察をする人たちのようで……とても楽しそうに見えました。
なによりも、たくさんの超絶頭いい人がわからないことに対して、自ら解釈(設定作り)をしてなんとか納得しようとしているということ。その設定を突き詰めると現実に近い現象が起こり、たまに予想が見事的中すること。まれに偶発的で想定外のイベントが起こり、物理学者界がわなわなとすること。それら自然を相手にしているということ。これはもう、ロマンを感じますよ。

【まとめ】
「宇宙って何でできているんだろ」と、僕もハッブル宇宙望遠鏡の撮影した写真を図書館で眺めて思ったことがあります。
そのとき確か「暗黒物質が宇宙のほとんどで、それが何なのかわからない」という程度の知識でした。
しかし今回、この本を読んで知る新たな事実にはどれも度肝を抜かれるようなものでした。宇宙やべぇです。
問題はそれらの驚きを書けるほど僕に理解がなかったことでしょうか。なんとか納得できたとしても、うまいように文章化できなかったんですよねぇ……これ読んだ人は各自で確認してみてください。
ところで、物理学者の方たちが「この定理で間違いないな」と一安心したのはつかの間、さらに新事実がわかって、常識が覆されて、また定理を考え直すというのはもうテンプレといったほど繰り返されているらしいですね。
おもしろいことに、気持ち悪いから(無理やり)定理にしてなんとか納得してるのに、すぐに覆されて、さらに定理を苦し紛れに作って納得しているんですよ。僕ですらこの本を見て「な、なんだってー」みたいな常識を覆されたような感覚があったのですから、物理学者はもっと気持ち悪くなるぐらいの固定観念ぶっ壊しが日常的にあるのだと想像できました。それはそれで楽しそうですね。

本書にあったURL
ウェブサイト:Kavli IPMU-カブリ数物連携宇宙研究機構 | Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe
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