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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

シャロン 死者は神を語らない

67冊目
19世紀末、舞台はパリのお話です。

主人公のシャロンは遺体修理師という職業についています。
彼の仕事内容は「死体を綺麗にする」というものであり、葬儀前の遺体を綺麗にするなど、いろいろ要望を受けて死体を綺麗にする仕事に日々明け暮れていました。修復技術は確かで、パリ随一といわれるほどです。
シャロンは死体を常に触れているだけあって、裏社会に通じる人脈を持っていました。その一人、ティエリという男性に「綺麗な女性の死体がほしい」と頼みます。
とはいうもの、このごろパリでは連続失踪事件が起こっており、失踪するのはみんな可憐な女性ばかりなのでした。シャロンは顔なじみの牧師に頼まれて犯人を捜す羽目になっているのですが、自身の持つ遺体修復の技術を使って、綺麗な女性を囮にできないかと考えたのです。
かくしてティエリは仕事を果たし女性の死体を取り寄せます。あまりにも綺麗な女性なのでディエリは得意げになるも、シャロンは疑い深く「貴族の娘ではないんだよな」と聞きました。あるいは連続失踪事件の被害者かとシャロンは思ったのですが、ディエリは「出身不明、わからない」と答えました。
出身については本当に分からないらしく、シャロンはディエリと取引を終えます。
そして死体の様子を改めて観察するのですが、頭がへこんでいたり、全身に血を浴びていたりと要因があるものの、あまりにも「綺麗過ぎる」とシャロンは気がつきます。
シャロンは「本当に死体なのか?」とティエリに聞きます。ティエリも「そりゃ死体だろ。冷たいし」と答えます。
けれどもシャロンは疑い深く、少女を眺めるのでした。

----(ネタバレあり)----


遺体修理屋シャロン
白髪でイケメンで無愛想な主人公です。作中の周りの反応の様子からして、猫に懐かれただけで「え、お前そんなキャラだっけ?」と驚かれるような人であると想像できました。
けれども思ったよりも(ツンケンするわりに)人間っぽい人のようで、ツンケンしている(大人ぶってる)彼の周りのほうがよっぽど大人みたいな感じでしたね。と、考えておいて思えば彼は21歳ですし、年相応の若さが残る人なのかもしれません。まぁどちらにせよ、周りに恵まれていると思います。
仮に人嫌いって自分で言うなら、どこかの元軍人マッドサイエンティストぐらい突き詰めてもいいというのに、普通に会話したりとか、普通に挑発に乗ったりとか、普通に普通な人間っぽいところがありましたよね。それになんだかんだ、最後まで熱血漢的なところも見えましたし、根はいい子なやつでs……とか書いたらたぶんシャロンに殴られる。

盗賊ディエリ
盗人ですけど、なんでも取り寄せ屋みたいな感じでした。僕が彼に言えるのは、「すごく有能だな」ということです。
ディエリ終始飄々としてますけど、彼が一番きちんと言った仕事こなしてますからね。多少の嫌がらせもありますが、きちんと代金を請求しているところも個人的にはいいと思いました。そりゃ、商売ですし。そういうところ大事です。
そんな彼はちょっとリュシーに気があったみたいです。結果として死んでしまったわけですが、それ以前に裏切り悪党だったわけですよね。その裏切りの全貌については作中明かされなかったからこそ、全貌を知ったときどんな反応をするのか気になるところです。たぶんディエリがいる闇社会だと日常茶飯事なんでしょけど。

ル・プティ・ビストロにいる人たち
連日繁盛しているお店でした。おいしいし、やすいし、きれいなひといるし、にぎやかだし、星5つもらっていいほどのお店でしたね。
この巻ではシャロンが余計な首を突っ込んだがゆえに、一家総出で事件に巻き込まれることになりました。父親が銃で撃たれ、母親はショックで気絶して、娘は殺人鬼に皮を剥ぎ取られそうになったりと散々でしたけど、まぁだれも最悪のことにならなくて良かったといえます。まったく元凶シャロンは反省してもらいたいすね。
この話で一番の被害者がこの一家だと僕は思います。もちろん殺人鬼に娘をさらわれた親御さんも被害者なのですけど、巻き込まれ方がえげつなかったですよ。なにもなくてよかったです。
その殺人鬼に娘がさらわれた親御さんたちも、物語終わりあたり死体が戻ってきてとあって、多少は救われたのかなと思います。

シャロンに協力してくれた人たち
まずドミニクさんですね。たしか25歳にして牧師をつとめて、顔が広いという結構すごい人でした。
シャロンから見れば彼は「なり上がりを狙う腹黒」など表現してますけど、彼はちゃんと牧師として仕事してますし、シャロンに協力的ですし、かなりのやり手だと思います。だって、本当は無能なのに仕事できますよオーラ出しているやつのほうがやばくないですか? そう考えると優男腹黒の方がマシかなと思います。まぁあの時代ですから、無能はすぐ殺されてしまいそうですよね。
あとはミシェルという元軍人さん。彼は趣味の薬学に精を出しているという人でした。雰囲気から女! 酒! 豪遊! という貴族特有のキラキラから逸脱している様子が伝わってきました。加えてメイド(男)を持っているという結構な変態っぷりを見せています。てかそもそも、衣食住全て揃った状態で、人と合わず一心に薬学やらを独学で学ぼうと思う時点で変態だと思います。しかも極めてるのだから、目が見えないのに……すごいです。
このミシェルのメイド、ジルという男もなかなか強いとかなんとかありました。しかも女装できて違和感ないほど、美少年らしいです。いやメイド服きて似合う美少年って、加えて元軍人さんで戦っても強いなんて、何なんですかこの人。
しかし、この作品、美少年、美少女多いですね……。

リュシーもとよりヴェロニカとマクシミリアン
この話の悪役でした。二人ともかなりの策略家であり、凄腕でもあって誰もリュシーが犯人の一味だとは思わなかったでしょう。
僕も思いませんでしたけど、ちょくちょくと出てくる(プロローグとかの)ヒントから、勘の鋭い人なら気がついたかもしれませんね。思えば、リュシーが白髪なのは(シャロンも白髪)ミスリードだったのかもしれません。
リュシーはしょっぱなあたり、仮死の状態で登場しました。年で言えば14~15歳あたりでしたっけ? 幼女と言える年頃です。そこからシャロンといろいろあって、ヴェロニカという人物だった自らを思い出します。このヴェロニカの飲み込みの速さはすごく、ニーナのタルトを覚える早さからそれを伺えました。飲み込みの早さが尋常じゃないのか、要領がいいのか、なににせよリュシーは有能だといえます。問題といえば、ちょっと惚れる相手を間違えたかもしれませんということですね。
マクシミリアンは殺人鬼、しかもコレクターの部類に入りそうな快楽殺人犯でした。貴族を含む可憐な少女をターゲットに十数人、あるいはそれ以上の結果を見せているのだからとんでもないですよ。
イケメンで剣術に長けている彼の敗因は好奇心でしょう。別に調べなくてもいいこと調べて、口車にテンション上がっちゃって、実際に試してみちゃう。あと勝ちを確信しているからこそある慢心が彼を首を絞めたのです。
けれども逆にそれがなければ、シャロンも殺され、ニーアも売り飛ばされ、バッドエンドだったわけですから彼にとってもシャロンにとってもギリギリのところでありました。今回はシャロンが一歩上手だったようです。
ところで彼、マクシミリアンさんはナルシスト的な雰囲気が出ていたので、たぶん詩を評価するだけで顔真っ赤になると思います。別に僕は彼を煽る必要も無いですけど、彼にはぜひそのご自慢の詩を小説投稿サイトにアップロードしてほし……19世紀末パリにはそんなものなかったです。

呪われた青年シャロン
シャロンの呪われた体というもの、死なない程度のものかと思えば、死体を生き返らせる(そのときの細胞まで生き返らせる)というかなりのチートを持っているようでした。加えて自分の指示に従わせるというそれは、死神というより、魔王的なものを想像してしまいます。
この力はどこで手に入れたのか、要因になったパパはどこに行ってしまったのか。謎は残したまま、物語が終わっていました。
今後見つかるといいですけど、チート能力はなぜ開花したのか、いつシャロンは能力に気がついたのか……いろいろ謎すぎて気になるところです。
あと、主人公シャロンは部類で言えばハードボイルドのジャンルに入る性格の主人公だと思います。けれども主人公の若さのせいか、彼の行動が裏目裏目にでているシーンがまぁまぁありました。
心配させたくないというのは分かりますが、その行動が逆に回りに迷惑をかけているという展開で、「こいつもう正直に話したほうがいいんじゃないか」などしばしば思いました。
まぁでも、女性に対してはなんだかんだ最後まで紳士を貫いているんですよね。下心はないようですし、根っからの紳士なのが伺えます。
だからこそですね。「君、仮にも死神なのだから、死体を扱うすごい職業の人なのだから、もうちょっと落ち着いて行動しません?」と彼にいいたいです。言ったら言ったでたぶん、銃弾飛んでくると思いますけど。

【まとめ】
これ読んでて、「アニメ化したら映えそうだな」とか思ってたんですけど、物語終盤でいろいろグロシーンが続いたので「やっぱなし」と考えなおしました。あるいは『GANGSTA.』みたいな感じにすればいけるかな? とも思いましたけど。とはいえ仮にアニメ化しても、ぼくグロシーン映像超苦手なので実際してたら見ないかもです……。(作者さんすみません)
それと物語ヒロインは、リュシーとニーナといえるかもしれませんけど、反応からすればシャロンもまぁまぁヒロインっぽい雰囲気ありましたよね。たぶんあの一件のあとミシェル特性メイド服きて楽しそうに家事全般するんですよね。がんばれシャロン! ですよ!

GANGSTA. コミック 1-7巻セット (BUNCH COMICS)

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