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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

夏の花

85冊目
教科書に載っていたけど読んでいなかった作品シリーズです

夏の花

夏の花

この作品は「原爆投下直後の広島があるのみ」という一言に完結されます。
そこにはなにも演出もなく、状況があるのみで、物語もありません。

----(ネタバレあり)----


原子爆弾投下後の世界
浮世離れしすぎてよくわからない世界、だけど現実に起こった世界というのがそこにありました。僕は当時を知らないわけですから、こうした残った情報から想像するのみとなります。
それでも悲惨さというものはひしひしと、恐ろしいぐらい感じることができるわけで、「これ現実かよ」と言えそうな地獄が書かれてありましたね……。
僕個人としては、生き残った私がたまたま立ち会った(光線でやられた)人達を見る辺りがきつかったですかね。外見こそ「人間」ではなくなってしまった彼らが「水を欲している」というただそれだけだというのに、切なく、同情しても何もできずに、けれども「巻き込まれたくない」みたいな感情もあるだろう複雑な気持ちです。
あとは被爆という言葉が浸透してないからこそ、被爆して死ぬ人たちが「こうなったらもうダメ」みたいな、まるで死の宣告を受け入れている(無情な感じですか)様子が生々しいと思いました。

むしろ冗談みたいな
こう客観的(他人事)に見ているとわからないものですけど、当の本人(登場人物ですが)の反応は「超現実派のような」「無機質な」といった捉え方をしています。それが、急になにもなくなってみせた様子が伺えて、生きた心地もしなかったでしょうね。
うーん、いきなり何もない世界に飛び出したような感じでしょうか。それでいて周りの人達はみんな死んだ……みたいな。
でもやっぱ実際遭遇したら「痛い、怖い、悲しい」よりも「なんだこれ」みたいな困惑で立ち尽くしてしまいそうな気がします。けれども、立ち尽くしてしまうだけ幸運といえて、普通に熱戦で顔や手や足がやられてしまうなんてこともあるわけで。
もうここまでくれば運ですね。まぁまずはそんな冗談みたいな状況にならないことを祈るしかないのですが。

妻を探す話
物語最後の数ページあたり、列車に乗ってる途中に原爆に遭遇した(見た)サラリーマン? Nが登場します。
彼は大事が起こったことに気が付き妻を探すという行動に移りますが、妻は結局見つからず短編どころか物語が終わってしまいました。
唯一客観的(安全圏からみた爆心地)に見ているところであって、客観的に見ても「これはやばい」みたいな騒然とした雰囲気があったんだろうな、と思いました。そもそも遠くにいるのにきのこ雲が見えるなんて恐ろしい話ですよね……。
とはいえ、なんでこんな話が最後にあるのかと僕は思ったわけです。
多少考えた結果として、「死んでいる側」と「生きてる側」の描写をしたのかなとか思いました。死んでる(生きてますが)私側、と生きているN側、それぞれを両方からの目で書きたかったのかなぁとか思ったんですけど、まぁこれも一つの考察にすぎないです。僕がそんな感じを思っただけで、実際は知りません。

文学として
戦争の悲惨さや恐ろしさをテーマにした作品は結構あるイメージですけど(とはいっても詳しくない)、この作品はただそこに有るのみという雰囲気を感じました。過剰な演出なく、描写だけは個人的に肌に合いました。
作品としても、物語などなく私を中心に原爆に巻き込まれて、それから疎開みたいなことをするだけで話は終わっています。
それがいっそう「なにも救いもない」雰囲気を感じました。これが仮に演出だとすれば、「これが文学か!」とも納得したような気がします。
でもこれノンフィクションってこと(作者が自ら体験したことを書いている)もありえますよね。原爆という出来事に対し、作者が多大な影響を受けて作品を書いた……とか。とはいうもの僕は文学界対しては明るくなく、そういった文学特有のお決まりがわかってないです。だからこそ、「この作者のことを調べてみよう」みたいなことを思う流れがまた「文学ぽい」と感じました。作者の起こる出来事がもろ作品に出ているってそれ、文学っぽい感じするんですよ。

【まとめ】
感想を書こうにも「戦争は悲惨だ」や「戦争はもうしないほうがいい」とか「平和が一番だ」などそういったありきたりな言葉しか出てこなくて、体験したことない身だからしょうがないとはいえ、なんとも言えない気持ちになります。
ただ有るのみという作品に対して僕はどうこう言えるわけでもなく、特になにも言わないほうがいいと思ったんです。だからなんというか、考えるな感じろということだと思います。自ら手にとって読んで考えるべきだと思います。
これから夏ですし、こういう作品もじわじわ触れていくのもありかもしれません。

黒い雨 (新潮文庫)

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