とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

日本人なら知っておきたい花48選 ~花の履歴書~

96冊目
図鑑+エッセイみたいな本です

タイトル通り、日本に馴染み深い花48種類の紹介がされている本になります。
花の紹介ページには種類ごとの写真がはられてあり、作者によるその花に対してのエッセイ、さらに最後の方には育て方のポイントまで書かれてありました。

紹介してみるとそれだけなのですが、花の本という特別な感じがなんともいい読後感をもたらしてくれます。
読み終えた頃にはきっと、豊かな気持ちにさせてくれることだろうと思いますよ。

(ネタバレありとありますが、今回も気になった所を上げていこうと思います)


---ネタバレあり----



気になった話
いまぱっと思いついたのは「チューリップの話」です。

幼稚園児にチューリップの絵を描いてもらうと、花弁の外側の姿を描き、赤や黄に塗ることが多くあります。これは、背丈が大人にくらべて低い子どもの目線に映る姿です。大人がしゃがむと、こうした幼い日の思い出にひたることのできる花、それがチューリップです。

言われてみれば、僕もチューリップとして想像するのはそんな「横」からみたチューリップでした。
今見ればおそらくチューリップの中を覗き込むような形となり、それが想像できないというのは、僕が幼稚園児以降チューリップを見ていないということを表しているようで、なんだか恥ずかしい気もします。
当然の話ですけど、目線によって花の見え方って全く違ってくるんですよね……。

あとは「萩」の話です。これはTwitterで書いたことですけど、


正しく引用すると、

季節名をつけた植物名を調べてみると、椿(ツバキ)、榎(エノキ)、柊(ヒイラギ)といったようにいずれも木偏ですから、ますます萩のみが草冠になっているのが謎です。こうした漢字は中国で作られたものに日本独自の読みかたを当てたものだそうですから、少々気になる話です。

本にも答えはありませんし、僕もその理由はわかりません。ただ「不思議だなぁ」と気になったわけです。

面白かった話
面白かった話としてまず思い出されるのは「開花時間が速いアサガオの種をあげる話」ですね。
アサガオはだいたい(夜間の気温の高低や株の出来具合によって変わりますが)午前4時ごろから開花するのですが、早く開花する株を観察しておいて、その株の花粉を採取し、早い時間に交配をしてゆくと「早く咲く系統」ができるそうです。
アサガオ名人がそうして作り採種した種をを学校にあげて、上に書いたアサガオの交配方法を生徒たちに教えたらしいんです。

それから5~6年たち、あのときのものがどうなったのかと聞いたところ、午前4時には開花せず6~7時ごろにやっと咲く、とのこと。つまり学校ですから、午前5~6時ごろには誰も登校しておらず、午前8~9時ごろになってはじめて朝顔の花を見、そのときにしおれてない花のめしべに花粉をつけて種子をとった。これを毎年繰り返したところ、開花する時間が当初よりずっと遅れてきた、というわけです。

なんかの物語のオチみたいで面白かったです。

あと作中なにかと敵視される「幸福の木*1」の話ですかね。
敵視とはいっても、作者の言いたいことはわかります。この本を読んでいると植物ひとつひとついろいろ考えられて、純粋できれいな名前がつけられている一方、この幸福の木とは欲望丸出しの名前のように感じる(僕の主観)のも無理はありません。
ちなみに江戸時代では「万両」や「千両」「百両」など名前をつけた木を植えていたそうです。これを庭に植えることによって「懐の中に金はねぇけど、庭には万両があるんだぜ!」みたいな冗談を交わしていてたらしいですよ。冗談を言いながら笑い合う、そんな明るい感じが想像できて微笑ましく思います。
それらを妄想してからの「幸福の木」ですよ。ちなみにこちらもこのシリーズが市販され、名前は順に「幸福の木」→「お金の成る木」→「青年の木」です。お金がなければ…若くなければ…みたいな、欲望丸出し感を覚えても無理ないです(2回目)。
ところでこの「幸福の木」の由来ですが、

以前、幸福の木の名づけ親にお目にかかってうかがったところ、ハワイでは家の入り口の左右にこの木を植え、日本の門のようにしているそうです。その理由を聞くと、これがあると幸せが来るとの言い伝えがあるとかで、これが名前のヒントになったわけです。

またひとつ勉強になりましたね。

あと花と関係ないですが、「ほおずき」の話題の時に出てきた浅草寺の祭りの話が面白かったです。

(前略)中でもほおずき市は、ほおずきの派手な色彩と四万六千日のご利益ということで広く知られています。この四万六千日というのは、7月9日か10日に東京の浅草寺にお参りすると、四万六千日分お参りしたことになり、ご利益にあずかれるという言い伝えからきています。(後略)

一回で四万六千日分ってチートかよとか思いました。
一回行くだけで◯万回! となればなんかご利益ありそうな気がしてきますよね。浅草寺……行ってみたいなぁ。
そういえば一回唱えたら何万回年分修行したことになる、みたいな話を大乗仏教あたりで見た気がします。あった気がするだけで、ソースが思い浮かばない……。

ロマンがある話
ロマンがある話はそりゃもちろん、「日本水仙の大群落についての話」ですよー。
日本水仙の有名な場所は、福井県の越前岬、瀬戸内海の淡路島、伊豆半島先端の爪岬……などです。この単語を見て分かるように日本水仙は海岸線側に自生してます。一方の山野には見当たらないので、「他の国から海流に乗せられて来たのではないか?」という説が出てきているようです。
さて、ここまで考えておいて、日本水仙の特徴を見てみると、日本水仙は「親株の株元から古株が周囲に発生し、少しずつ増えるといったタイプ(引用)」といえるんですよ。だから仮に流れ着いでそこに自生をはじめても、今のような大群落にはならないんですよね。
ではどうしたか。この本の説によると、

わずかに推測できるのは、人が掘り上げ、親株の脇の子株を引き離し、別のところに植え付けをし、数年後、親子ともども開花といった方法です。それならば、海岸線から崖のほうに向かって植え付けて増やすというかたちが成り立ちます。もしこの考えかたが当を得たとしても、きちんと仕事を引き継いで行う必要があり、現在のような大群落にするのには大変な年月がかかるわけです。注目したいのは引き継いで行なってきたという部分です。たとえば親が一生懸命増やしている姿をを子供が見、これを真似して少しずつ球数を増やす、これを孫が見て引き継ぎ、といったスタイルです。もしこの推測どおりならば、この水仙の大群落は園芸上の文化遺産とでも呼べるのではないでしょうか。(後略)

呼べると思います(確信)

同じような理由で「金木犀が全国にある理由」もよかったです。
まず日本の金木犀は実ができません。理由は日本にある殆どの金木犀が雄花であるからなんですよ。
(「あれ実、できてるよね?」と思ったあなた、金木犀を銀杏と間違えますよ。僕もこれ勘違いしてました)
さてここで疑問に思うのは「なぜ実もない金木犀が日本中に、それもいたるところにあるのか」という問題です。
基本、種ではない木の増やし方は挿し木となるので、(著者曰く)おそらくこの日本全てにある金木犀は挿し木で増やされた、と考えられるのです。

(前略)数多くつくりたいときは大変な手間となります。また他の常緑樹にくらべると挿しても根付く割合が低いうえ、育つスピードもあまり速くないので急に増やせません。まして挿し木によい時期は7月ですから、そのころに伸びている枝を切って挿してしまうと秋には花が見られえません。いったいご先祖さまはどうのようにして増やしたのかお聞きしたいものです。

いま日本中に何万本と金木犀があります。それらが誰かが挿し木をして育ててきたと思うと、すごいことですよね。

最後にもう一つ、「赤いキバナコスモスを作った男の話」も良かったです。
コスモスには深い赤色というものがなかった時代、アメリカで「深い赤色を作ろう!」と試みがなされて、やっぱできないなー。となっているのを知らず、岩手出身の千葉大学園芸学部に所属していた橋本さんが作り上げてしまうというエピソードがあるんですよ。
事の発端は友人と満開のキバナコスモスを眺めている時に、夕日が差し込んで一瞬コスモスが赤色をしていたところを見たことから始まります。それを見た橋本さんは「キバナコスモスを赤くしてみてはどうだろうか」と思い至ったわけです。

彼は品種改良を重ね、15年以上の歳月をかけ、とうとう赤色に輝くキバナコスモスをつくりあげ、これをアメリカに送り、全米の新品種の検定機関AAS(全米花卉審査機関)でテストした結果、見事ゴールド賞に輝きました。なにせ外国人に与えた最初のゴールド賞でしたから、かの国では大変な出来事。大騒ぎのようでした。

それは昭和41年(1966年)の1月のことだったようです。こんなすごいニュースなのに、日本は高度成長期ということもあって園芸の分野に光が当たらなく表に出なかったそうですが……。
サンセット(この赤いキバナコスモスの名前)が週刊誌のグラビアを大きく飾ったのは2009年の9月のこと、実に43年の時を経て人の目に触れることになります。しかし橋本氏は2003年に亡くなっています。なんとも切ない話ですよね。
亡くなる半年前に著者に言った言葉を引用しておきます。

「育種という夢をもち、これに没頭して新しい花が生まれた喜びは、何ものにも代えられない。しかし多くの方々は、この花はめずらしい、きれいだ、と言い、花の名前はおぼえてくれるが、つくった人のことは誰も聞かない。さびしい気もするが、皆さんが花を喜んでくれればそれでいいと思うよ」

花ひとつにしても、いろんなドラマがあるんだなとか思いを馳せました。
もし花を見た時は、それをつくった人のことを考えてみるのも、またいいかもしれませんね。

個人的に好きな花
全48種類の花が登場したわけですが、個人的に好きな花を5つほど選んでみました。
僕自身ランキングはあまり好きではないので、ベスト5とします。
ではいきますよ。

1.梅
理由:花がかわいらしい。個人的にふらりと見つけた民家に咲いている梅にふと気が付いて眺めるのが好き。

2.藤
理由:紫の淡い色合いがすき。たくさんあると幻想的に見えるから。

3.月下美人
理由:夜だけ咲く白い花とかそれだけで熱い。蕾から開花するまでの流れがぐっとくる。名前のせいか色っぽく見えてしまう。

4.萩
理由:かわいらしい。ああいう素朴で小さい花もすき。

5.葉牡丹
理由:この本を見て初めて知った。色合いといい、その姿といいこんな花(正しくはキャベツの仲間です)があるんだと。

二軍落ち(表現悪いですが)なのは、紫陽花(青い色合いが綺麗)、沈丁花(ほのかなピンクがよかった)、つつじ(眩しい色合いに元気貰えそう)などでしょうか。まぁ全部いいと思ったけどな!(平和)

普通に考えて普通のことですけど、花にはいろいろな種類があって、それらは全く違うんですよね。この本に載っていた花に限らず、いろんな花を見るためにも、外に出歩いた時とか探してみたいですね。月下美人とか見つけれる気しませんけど。

【まとめ】
花っていろいろあるんだなと思いました。僕は花を見つけたとき「花が咲いてる」程度の認識でしたけど、こういろいろ知ってみると、花ってすごいなって思いますよ。気持ちを豊かにしてくれるんですね。
花の展覧会も頻繁に行われているようで、新種や新技術も続々と発表されているらしいです。こんな世界を知らなかったんだなぁと。
みんなも花に目を向けて、日本を花いっぱいにすればいいんじゃないですかね。花いっぱいになれば日本は豊かになると、思います。たぶん。

*1:実際は「ドラセナ」です

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