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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

ぬかるんでから

佐藤哲也 幻想小説

116冊目
奇妙な話の短編集

この本には『ぬかるんでから』『春の訪れ』『とかげまいり』『記念樹』『無柳の猿』『やもりのかば』『巨人』『墓地中の道』『きりぎりす』『おしとんぼ』『祖父帰る』『つぼ』『夏の軍隊』の13もの短編が収録されています。

短編それぞれを一言ずつ紹介していきますね。

ぬかるんでから:ある日突然として街は泥沼に襲われ、高台に避難してきた人たちは街を見て呆然とする話
春の訪れ:妙なことを言う妻が「春を探したい」と言い出すので、妻とともに春を探しにく話
とかげまいり:ごくごく普通のサラリーマンである主人公に色々な災難が来る話
記念樹:病的なほどに探した物件にて、妻とともに余生を過ごそうとする話
無柳の猿:主人公は妙な箱みたいなところにいて、なにもわからないまま辺りを探る話
やもりのかば:妙な死体が見つかった家に、亡くなった方の親族である主人公が乗り込む話
巨人:なんか妙な出来事が頭に残っている主人公が奇妙なことに巻き込まれる話
墓地中の道:嫌がらせほど叔父から厳しくしつけられている主人公が、叔父とともに曰くつきの墓地中の道を歩く話
きりぎりす:主人公は妙なキリギリスと出会い、あれが夢だと思った頃に問題が起こる話
おしとんぼ:父親に翻弄され、祖父のもとに預けられていた主人公が父親について思い返す話
父帰る父親と祖父にめちゃくちゃにされる息子と妻の話
つぼ:新境地にて生活を始めた青年がいろいろ画策してみたりする話
夏の軍隊:近くの空き地に妙な人間がいると気がついた主人公の話

「街に大量の泥が襲い、もう食料も水もままならない事になった」みたいな、不思議な話で基本的に展開するのでそれを頭に入れて読むと良いかもしれません。

----(ネタバレあり)-----

ぬかるんでから
たしか街に泥が大量発生して、食糧難が起こってごたごたとかなんとかでした。
まず思うのはあの泥ってなんなのかって話です。僕がイメージしたのは、地震みたいなことがあって起こる液状化現象的なことかと思えば、そもそも地震が起こってなさそうですし……うーん。あの最後あたりに出てきて死体? みたいな地底人が起こしたってことでしょうか。
そういばその地底人と交換条件になった妻も不思議でした。全く食べないのに元気で、そして始めからすべてを悟ったようにしていたところが謎です。まぁこの話の大部分は妻を生贄に沢山の人が助かった、ってことですよね。

春の訪れ
なんか妙なことを言う妻に連れられて「春」を探すことになる夫の話でした。
物語の展開的に「春」こそ何かの隠語だとか思ってたりしたのですが、まさかの本当に春だそうで、あのムカデみたいなのが春そのものだそうです。
いやぁまぁあれが春なのはいいですよ。問題は春がこう上空に立ち上がった時、たしかヘリコプターが撃墜しているんですよね。あのヘリコプターあのあとどうなったのか心配です。
どうでもいいですが最近冷えてきています。まだクリスマス来てないですけど、もう春来ていいって思ってます今。

とかげまいり
いろいろ変な人達に絡まれていましたね。どれも「ひえっ」ってなるような人種ばかりなのでこの話の展開的どうなるのかと思えば、もともとあの世界はおかしな人ばかりだということがわかりました。
最後あたりで主人公の妻がトカゲになったわけですけど、そのトカゲになったことを牧師に行った時「悩んで信仰の対象にした(意訳)」の様子から、日頃からこういう出来事が多いのかな、とか思ったりしました。
まぁでも多いとは言え、帰ってきたら妻がトカゲになったなんて知ったら腰を抜かして失神する自信があります。あ、そういえば食事はどうするんでしょうか。コオロギとか食べるんでしょうか。

記念樹
彼女と楽しい生活が始まったかと思えば、唐突に現れた男性(ほぼ死体)を埋めるのを頼まれて、その夜に埋めた墓のあたりで妻が死んだはずの男とダンスしているとかいう話です。
ダンスしているところを見てしまった主人公が妙な気持ちで終わるのかと思えば、男性と妻はなんと家まで帰ってきて荷物をまとめて出ていってしまうのだから、「えぇ…」となりました。
荷物が運べるなら「死人」ではないそうでしょうし、でも一方で生きてるなんてこともなさそうですから……どういうことなんだってばよ。
ところで主人公、よく正気を保っていましたよね。あれだけのことが起こったのですから、主人公のSAI値がピンチになって発狂していたかもしれないのに。

無柳の猿
唯一終始意味がわからない作品でした。初っ端の変な部屋に入ってたまではいいです。それからその部屋の描写が連続して続いていて、窓を開けると真下に井戸? っぽいものがあるということはかろうじてわかったものの、なにがいいたいのか難解でついていけませんでした……。
おそらくですが、おそらく何かの暗示みたいなものがあるんでしょう。そしてそこにはなにか特別な意味があるのだろう、とか思ったりしています。もっと読解力がある方がこの記事を見ているなら、ここの考察を書いてほしいです。

やもりのかば
妙な死体の犯人は家に住み着いているカバだそうです。
この話なんかすごい展開でしたよね。遺体が見つかって、それはありえない死に方だそうですから、ミステリーが始まるのかと思えば普通に天井に住み着いているカバによる圧死だそうです。もうちょっとした夢を見ているようです。
加えてそのカバはしゃべるらしいです。そして祖父が死んでしまったその理由はカバ側の不注意だとか言ってました。いやぁ、不注意で主人を殺せますかね?(ゆさぶり)。
主人公も主人公で、結局カバを追い払おうとしてカバと喧嘩みたいなことをした後、自殺しようとしているカバの下に寝転がるということをしています。
あのあとどうなったのでしょうか。和解したのか、それともカバが家から出ていくのか、主人公がどっか行くのか、どちらとも死んだのか。

巨人
なんかよくわからない巨人を見て、それを老人に話して、ちんこがとれて(?)、実はこの世は始めから違う! むしろお前が異分子なのだ! 的な話でした。
異分子的な言い分はまぁわからないこともないですが、やっぱ個人的に驚いたのは男性器がぼろっと取れる下りですよ。なんで取れるんですか。いや、いやぁ……なんというかポロッと取れた後も取れたやつをポッケにいれてるんですよね主人公。まぁそれもわかります。けどねぇ……そこで冷静になれるかって言われたら……いや、逆に冷静になるかもしれません。
そういえば主人公が問いかけられる時、足つかまれてゆっさゆっさされると、その男性器がぽろっとポッケから落ちるんですよ。それを相手につまみ上げられて、目の前で示されるなんてもう、えぇ……。って感じです。この短編は作中トップレベルにぶっ飛んでいると思います。

墓地中の道
周りに墓地が並んでいる妙な道を歩いていると妙な体験をする少年の話でしたね。
この妙な体験とは全く巻き込まれただけの話であり、今思い返しても「主人公は災難だったなぁ」という思いが拭えません。
たしか鼻が男性器をになってしまった奴らか「私たちの恨みを感じ取れ」とか言われつつ、なんかよくわからない白い液体(意味深)を少年に流し込もうとしてました。
てかそもそも、その原因を作った出来事を起こした武士の話も自業自得というか、ただ墓で手淫していただけだけでしたよね。それで呪われたとか。
てかなんでそれで子孫を残そうとしたんですか。酷なこと言っているとわかりますけど、たくさん子孫を残してちゃっかり鼻が男性器の種を残しているってのがね。鼻が男性器だろうが種を残せてるってのにおまいらといえば……。

きりぎりす
いろいろ妙な話がある中で、これはB級ホラーを連想する妙な雰囲気を持っていたように思えます。
たしか主人公は妙なキリギリスと出会うことから始まり、やがて妙なうさぎの死体を見つけることになってそれに怒った住民が「コレは犯人捕まえないといけない!」と立ち上がったところ一人が行方不明になり……、とちょっとしたパニックものになっています。
主人公らは子供たちだというのに、使命感からか「こっそりと行方不明の男性を探しにゆく」ってのがいい感じのホラーさを出していると思います。そしてすでに絶命している男性を見つけて、ついでに何故かチェーンソーを操っているキリギリスがいて、追い詰められて、逃げたかと思ったらまた登場と基本的なホラーポイントを押さえているような気がしてきました。
まぁ結局なんとか撃ち倒したわけですが、あのあたりの父親と警官の冷静さやばくないですか。

おしとんぼ
こちらのホラーはサイコパス的なものがありました。なにやら抗議運動をしている父親がいろいろと巡った挙句、狂った? みたいな感じになっています。
主人公の回想シーンが大多数を占めるこの作品の特徴ですけど、まったく主人公の父親はだめな人(とはいえ当の本人は活動でイキイキしてましたけど)だと主人公は断言してました。
この作品のインパクトを強くしているとんぼを殺していいるシーンですが、あれなんでしてたんでしょうね。血迷っていたのかといえば簡単ですけど、慣れた手つきの様子から日頃からやっていたように思え、なんだか妙な不快感を覚えます。
ただあれを息子と久しぶりに出かけたあとにやるのだから味わい深いです。

父帰る
一見、父親と祖父になんだかんだいじめられる話かと思えば異世界バトルものみたいなノリになっています。
僕は結構内向的な人間なので、この父親と祖父のノリはまたくついていけないだろうなと想像します。そう考えると主人公が不憫でならないですね……。まぁ結局主人公が花火最中にやらかして、そのままふたりとも行方不明になるという、なんとも奇妙な展開になっていたりもしたりしてたりするのですが。
最後のバトルなんか異世界バトルって感じでしたよね。でも祖父と父親が戦っているだけだと考えると、「祖父から父親が守っている」なんて事を考えたりしましたが、考えすぎかもしれません。

つぼ
青年が一人暮らしをして、色々画策した挙句トイレに行ったところ、トイレの便器がツボだったとかいう話です。
結局あのツボってなんだったんでしょうかね。僕としてはトイレに陶器を使っている様子を何度か何処かで見たことがあるので「あれ的なもの」という考えを持っていたのですが、終わりの方にあるトイレの便器が壺になっていた話から察するに、便器の中に壺が入っているようなのでそうではないことがわかります。
まぁ僕があの場にいて、便器開けて壺があったと気がついたなら(すごくトイレに行きたい時以外は)普通に放置して、そのまま別のトイレを探すと思います。でもまぁびっくりすると思います。
しかし文の最後の「とはいえあの悲鳴はいったい何だったのか」みたいな一文はなんだったんですか。

夏の軍隊
家の近所にまだ戦争が続いていると思い込んでいる兵隊がいる話でした。
結局のところ兵隊は幽霊みたいなもので(でも家に乗り込んできたなら幽霊でないかもしれない)、主人公はその人達に食料を分け与えていたそうです。まぁ母親が厳しくて、見つかった上に叱られたみたいなことになっていますけど、もし優しい両親だとすればあのあとも交流が進んでいたのでしょうか。
夏になるとそういう話をちらほら見ます。ああいう戦争がまだ続いていると思っている幽霊と接触して、それからどうたらみたいな。夏という境遇もあって、それはひどく幻想的に思えますよね。

【まとめ】
なんというか、難しい作品ばかりでした。投げやりといったら表現悪いですけど、そんな感じにどうなるのかと思った矢先に終わってしまうような、謎が謎のまま終わってしまうような、そんな本です。
でも思ってみれば純文学とかそういうのってだいたいこんな感じだよなぁと思い返したりしました。まぁこれはジャンル分けするなら(個人的に)純文学っていうより幻想小説のほうが近いと思いますが。

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