とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

坊っちゃん

119冊目
かの有名な作品です

坊っちゃん

坊っちゃん

※僕は教科書に掲載されている作品を読みました。

いたずら坊主で無鉄砲の主人公と、その家に仕えている清という女性の話ですね。

正直、この説明だけでだいたい完結しているようなものなので、あとは各自で読んでくれたらなと思います。

---(ネタバレあり)---

主人公
確か名前がでてこなかったような、そんな気がします(見落としてるだけかもしれない)。
そんな主人公は無鉄砲でいたずら坊主とかなんとか、作中にもやらかした(時代を感じさせる)いたずらがいくつか出てきて「それ無茶苦茶だな」っていうほど無茶苦茶でしたよね。
僕自身いたずらなんてしてこなかったわけですからやらかしている人を見ると、これは偏見ですがカエルに爆竹入れて爆発させてそうな人だ、など思います。なんというかまるで物語の人物を見ているようで不思議な気分です。でもリアルでもこういう人いたんでしょうね……。

清さん
良心のあるようで、思い込みが強そうな人でした。
個人的に清さんから時代を感じさせるような、彼女から古き良き雰囲気を感じさせていいなと思いました。なんか江戸幕府が滅びて主人公の家に仕え始めたとかなんとかでしたっけ、意識が古い時代のままで、考え方も多少古臭いようです。それが比較的近代文学的な考えをしている主人公側と、清さんの時代劇に出てくるような人の思考が対比しているようでよかったです。
あの主人公の評価である「正直な人だ。出世する」というのも、実は単なる思い込みではなく、若かりし清がなにか見てきたからかも知れないなとか思いを馳せたりしました。
まぁこれは物語には関係ない話なのですけど。

主人公の家族
こういう問題児が登場した時「親はどんな人だろう」と個人的に気になります。ライトノベルみたいに親が登場しないパターンもありますが、この作品では「この親にしてこの子あり」といったところでした。
主人公の行動から発達障害的なことをイメージしてみると、ちょくちょく出てくる父親も同じような傾向が見えて「あっ…(察し)」みたいな感じでした。良心的だと思っていた(まぁ良心的な方でしたけど)兄もちょくちょく性格の悪さを滲み出していたりして、この家庭もなかなかに(全員共々)大変だなぁと、特に母親さんは大変だろうなぁとか思いました。
こんなこと書いていますけど主人公も大概でしたし、主人公の所業に周りはきっと苦労したと思います。

主人公の無鉄砲さ
勢いで学校を決めたり、勢いで就職先を決めたりなどしています。良く言えば瞬発力がある。悪く言えばなにも考えていない。といったところでしょうか。
個人的におもしろかったエピソードは清から3円もらって速攻便所に落としたエピソードですかね。
読んだ人なら覚えていると思いますが、可愛がられている主人公が清から3円というお小遣いをもらい、喜々としてなにに使おうか悩んでいる矢先にお金をボットン便所に落としてしまって、主人公はそのこと清に言うとなんとすぐ便所からお金を取ってくれるというものです。
結果として1円しか救出できなかったものの、(主人公が「なんか臭い」など発言により)なんやかんや3円の銀貨をもらうというまぁまぁの溺愛エピソードですね。
この話の個人的に好きなところは、そんな大切な思い出の3円を「なにに使ったのか覚えていない」と主人公が言っているところにあります。過程がいい話だったから覚えているのは分かるとしても、ここで「なに使ったのか覚えてないんかい!」みたいなツッコミを脳内でしました。

別れ
この時代だからしょうがないことですが、一度の別れが永遠の別れになることもあったようです(まぁ今でもそこそこある話だと思いますけど)。
携帯電話などなかった時代、そんな時代の別れシーンを想像すると「あぁ…」と思います。そういう風情があっていいなんて今なら言えても、当時の人からすれば切実な話でしたでしょうし……。
今回の物語であの別れのシーン後、坊っちゃんと清さんは会ってないんでしょうね。手紙でも書いたのかと思ったらそうでもなく、かと言って主人公が故郷に帰ったとも思えないような気がします。
どちらにせよ、清さんにとってはとてもつらい別れだったでしょう。別れ話のときに清さんの世間知らずっぷりが露呈されたりしましたけど、あれは一種「外を知らない」ってことですから、主人公が「外の世界に出ていってしまう」ことは嬉しいような悲しいような(おそらく悲しい方が大きい)気持ちを持っていたことと思います。なんというか、それでも希望を持っている姿がなんとも痛々しかったように思いました。

【まとめ】
坊っちゃん』というだけあって、読む前まで「なんか裕福そうな家の坊っちゃんの話なんだろうかな」とか思ってましたが、まさかの問題児話でした。たしかその問題児が広がって、町内では乱暴者の悪太郎など呼ばれていたそうです。
ときに「乱暴者の悪太郎」とはいい響きですよね。なにかで使えそうな、現代でも通用するニュアンスがあるような気がします。
近代文学はこういった(ふとしたフレーズに限らず)現代でも通用するような話題がよく見られておもしろいですよね。