とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

地図の読み方が分かる本

124冊目
地図の魅力とは

地図の読み方から楽しみ方まで書かれてある本になります。

読み方は基本的な地図記号、等高線など基本的なものから、完全にロスト(山登りで道を見失った時)の対処法まで書かれてあります。おもしろかったのは完全にロストした上にホワイトアウトした状態でも、地図とコンパスさえあれば位置特定はなんとかできるかもしれない方法とか書かれてあるところですよ。こんな方法があるのか、と感心しっぱなしでした。

個人的に紹介として書きたいことは、「この作者は地図が大好き」だということですかね。
好きなものを喋っている人特有のキラキラしたようなものが、この本をを読んでいると感じ取れます。垣間見えるそのらしさは読んでるこちらもうきうきさせてくれると思います。

※今回もネタバレありとありますが、気になったところを書いていこうと思います。

----(ネタバレあり)----

いろいろな地図
僕が馴染み深い地図となると、まず小学校の頃にくれた地図帳を始め、地球儀、旅行のガイドブック、知ってて地形図ぐらいのものでした。
この本に登場している地図といえば、ほんとたくさんありましたよね。今思い返せるだけでも、海の地図、川の地図、崖の地図(ロッククライムとかする用)など登場していました。
どうやら地図には「客観的」と「主観的」があるそうです。客観的とは地形図とか地球儀とか客観的に見てから作る図、主観的は自分が自ら行って記録した図になります。この主観的な図は川の地図(遡行図)と崖の地図(ルート図)などなるわけですが、これらは自分が通った道などを「主観的」に書いてるため、ちょっと現実の川や崖などと違う所があるらしいです。作者さんは地形図などを併用して使っているとかでした。
個人的に思うのは、人が書いてある以上、感情的な部分もあるとはいえ、それはすなわち自分の川や崖に対する情熱みたいなものが含まれているってことですよ。地図として使いながらその情熱に触れれるのはちょっと新鮮でおもしろいかもしれません。

基本は正置
地図を読むにおいて大切なのは正置だそうで、正置とはコンパスを使って地図の向きを合わせる作業のことをいいます。これはもうここで説明するより実際にやってもらったほうが理解が早いと思いますから、気になる方は各自調べてみてください。
その正置ってやつ本当に基本中の基本のそうで、迷っても迷わなくても常にしてないと行けないやつだそうです。なんというか、GPSで現在地を調べるように、山や海などに入ったら正置をしないと知らず知らず知らないうちに変な所に歩いてたなんてことがあるらしいからです。
ここで説明できないと書きましたが、実際にやるとそれほど難しくないように個人的には思います(まだ実際に山で使ったことないからわからない)。GPSもいいですが、地図の使い方や正置は会得した方がいいと思いました。

方向音痴の直し方
作中のコラムですが、作者さんが(住んでいる村の住民の)義務として村普請(農業用水のドブ掃除や山道の草むしりをすること)をしているとき、同じくしているオヤジさんたちが10分休憩とかそんな休憩時間にふらりとどこかにゆき、山菜やらきのこやら持ってくるという話題があります。
この本を読んでいると、僕からすれば「作者さんも山のエキスパートでしょ。いけるいける」と思うんですけど、この作者さんは森に入るたびすぐ方向がわからなくなり、山菜どころか迷ってしまうのだそうです。
作者さんは「なぜも道が分かるんですか? コンパスもないのに(意訳)」とオヤジたちに聞くと、森の達人たるオヤジたちは「コンパスはないが、地図のようなものがあるんじゃねぇか(意訳)」と答えています。つまり森の達人たちは、長年の経験で森の道や外見などが頭のなかに入っているのだそうです。

(前略)よく聞いてみると、長年の経験から山道の曲がり具合などがすべて頭に入っていて、そこからの距離感をつかんでいる。「うちの田んぼの大きさぐらい入ったところに、小さな小川があるだろ。その川を越えればササヤブがあって、ネマガリダケがいっぱい採れる。その裏の土手には、ウドが出ているはずだ」。たしかにそのとおり、そこにはササヤブとウドがあるのだ。「この辺の森はみんなそんな感じだ」といわれたとたん、またわからなくなるのだが、この体内地図は結構どこでも使える地図らしい。

作者さんはこの後「森の達人になる秘訣は?」と聞いたらしいです。その回答がこちら。

森の達人になる秘訣はとたずねたら、「山のウマイもん食ってないんじゃねぇか?」と返ってきてしまった。方向オンチを直すには、どうやら山のウマイもんを求めて、森を歩くこと以外にないようだ。

作者がスカイダイビングした時の話
これもコラムですが、作者さん20年前にスカイダイビングをしたっていう話がちょこっと書かれてあるんですよね。そこに書かれていたことが、作者さんっぽい感じのエピソードだったので気に入ってます。
スカイダイビングは降り立つ場所を決めておき、その場所に降り立つように空で調整するそうです。しかし風などのアクシデントも起こるそうで、起こったときは適当な着陸できそうな場所に着陸します。そしてここで考えてほしいことは、どこで着陸したかわからない(いわゆる遭難した状態)でもあるわけですよ。

突然、無線機に呼び出しがかかる。「いまたぶん飛行場から西にいると思うんですけど、よくわかりません。ワニのいそうな沼地におりちゃったんで助けに来てください」、この情報だけで車に乗り、捜索にかかる。地図とコンパスと仲間たちと飛行パイロットからの情報だけが頼りだ。ときにはヤブに入り、ときには本物のワニにでくわしたりして、行方不明者を捜すのは本当に楽しい。

行方不明者を探すのは本当に楽しい(2回目) 
あとこんなことも書かれてありました。

(前略)あらためて考えるとジャンプそのものよりも、行方不明者の捜索のほうが楽しいスポーツかもしれない。僕はこうやって地図の読み方を覚えたような気がする。

これ引用して思ったのですが「いまはスマホが発達しているから、そんな地図を見ながら宝物を探すようなことはしなくていいのかもしれない」と思いました。でも、なんかこの文章を見てるとそれは無粋なのではないか、とも思ったりしています。

紹介されてるサイト
国土地理院
URL:GSI HOME PAGE - 国土地理院

◯日本地図センター
URL:一般財団法人 日本地図センター | 地図を見る・知る・買う

◯アメリカ地質調査所
URL:USGS.gov | Science for a changing world

アルプス社
アルプス社はヤフーに吸収されて解散したそうです。
URL:地図のアルプス社が4月1日で解散、ヤフーに吸収合併

◯ゼンリン
URL:株式会社ゼンリン - 地図 情報で未来を創造する Maps to the Future

昭文社
URL:MAPPLE - 明日、どこ行く?|地図とガイドブックの昭文社

◯山の展望と地図のフォーラム
URL:山の展望と地図のフォーラム - FYAMAP

どうでもいい話題ですが、本に載っているサイトの写真と、こうして今リンクを貼っているサイトを見比べて時代を感じました。

【まとめ】
現在、スマホが発達しているため地図が不要になっている時代だといえます。べつに正置しなくても東西南北分かりますし、そもそもこの本が書かれた時代よりもGPSが格段に発達していますよね。
まぁ場所を知るためならスマホだけでもいいかもしれませんが、それでも「地図いいなぁ」と思える魅力を感じさせる情熱がこの本にあった気がします。いろいろ感想書いていますけど、それ以外にもこの本には興味深い話題がちらほらありました。冒険家の話っておもしろいです。
とりあえず「ナチュラルジオグラフィック社」とやらを調べてみようかな!