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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

故郷

魯迅 近代文学

129冊目
たぶん30代や40代が読むとおもしろいと思う

故郷

故郷

厳しい寒さの中、20年をぶりに故郷に帰ってきたわたしが引っ越しの手伝いをしながらいろいろ思い返す話です。

いきなり余談なんですが、この物語は若い人より年食った人が読んだらおもしろいだろうなとか思いました。


----(ネタバレあり)----

久しぶりの故郷
実に20年ぶりの故郷だそうです。20年といったら、生まれた子どもが成人するぐらいの時間であり、20歳の人が40歳になります。
現在から20年前となると1990年代となるわけですが、(あくまでその感覚からすれば)いくら田舎だとはいえ、それなりに変わっているのではないかと思ったりするものの、物語に出てくる故郷は変わることもなく、しいて言えば寂れているだけのようでした。
けれども「わたしがいた故郷はこんなんだったか?」と思う風から、想像と違ったような、なんともいえない寂しさをわたし感じます。
子供の頃の記憶ってキラキラしてたりするんですよね。それが思い出補正になってたりして、その楽しさを思い返すように現にその場所に行ってみると大したことがなかったり……けれどもそんなものなのかもしれません。

引っ越しまでのご近所づきあい
中国の風習はよくわからないのですが、この物語の描写からして(少なくともこの故郷では)引っ越しをする際にいらないものを近所の人などにあげるという習わしがあるみたいです。
この風習わからないわけでもなく、こういう中国の地方からしてみれば、子沢山で貧困生活にて助け合いをしているでしょうから「皆家族」みたいな発想も分かるんですけど、どうしてもあの豆腐屋のだった女性(ヤン)からは放たれてる卑しさを感じました。
ところで、気になるのがその「卑しさ」がその故郷にとって日常だったかというところです。その日の食事にすら困難している生活というのは、想像を超える苦しみがあるでしょうから、そういう卑しさも生きるために必要なのはわかってますけど……そういうことが日常ならば、終わりあたりに気がつく古い友達(ルントウ)に渡す予定だった品物を奪った、なんてことも日常的にあるわけで、なんかそういうのが「かなしいなぁ」と漠然と思わせました。

幼少期の思い出
古い日に出会った頃のわたしとルントウとは、わたしの大切な思い出になっているようでした。わたしはどうやら昔から裕福だったそうで、それゆえに世間知らずでもあったようです。しかしそんな彼を友だちになったルントウは少々冗談をまじりながらも、夢のある話題を提供してくれるなど、とてもいい友達であったことが伺えます。
男子二人集まるとだいたい「探検ごっこ」とか始めたりするんですけど(個人的な偏見)、この二人はそうではなくひたすら喋っているようでした。それだけ話題が尽きないっていい友達だと思いますよ。

旧友との再会
そんなルントウが、私の前にわさざわざ顔を出してくれます。もう二度と会えないだろう、そんなことを思わせていた描写からですから、それはそれは感動的で「おー!」といえるシーンなのですが、同じくしてどうしようもないやるせなさを覚えるシーンでもありました。
この「旦那様」にしても、間があって「旦那様」と呼んでるんです。その様がなんとも、なんとも言えない気持ちにさせてきます。いろいろ思うところはありますが、「おとなになってしまったんだな」という感想を持ちました。
感想書いてて思ったのですが、幼少期のわたしは自分のことを「いかに狭い世界で生きていたのか」など思っていましたよね。そして成長してルントウと再開したときのこと、僕はふと「ルントウはこのまま小さな小さな輪の中で消えていくんだろうか」など思って、はっと、ここはある種の対比をしているのかとか気が付きました。まぁだからといってなんだって話なのですが。

別れとその後について
最後あたり「ルントウには好きなものを持って行かせよう」という提案をしていました。おそらくルントウは嬉しながら色々探していろいろ物を選んでたのでしょう。ここで「よかった救いはあったんだ…」と思ったのもつかの間、なんと豆腐屋の女がそれを見つけて持っていってしまうんですよ。そしてそれをルントウが知らないまま放置して、多分あのまま曖昧に終わってしまうんだろうと思いました。
ルントウのその後のことはわかりませんが、ルントウはむくわれないなぁとか思いました。
救いといえば、ホンルとシュイションが仲が良くなって「また向こうの家で遊ぼうって約束した(意訳)」的なことを言っていました。あの短い間に偏見なく仲良くなっていた子どもを見てほほえましい気持ちになる一方で、わたしの「この子にはわたしのようになってほしくない」みたいな様子から「もう(二人は)出会わない」という方法を取られることもまた想像できるので、うーんって感じさせます。

【まとめ】
悲壮感とやるせなさを覚える作品でしたが、(作品として)全体的な空気感よかったと思います。
実はこれ、たまたま(たしか中学の)教科書を開いて見つけた作品です。いや、なんというか、これ中学で読ませてどうするんですかね……って読んでて思いました。

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