とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

なれる!SE3 失敗しない?提案活動

136冊目
ブラック感ある仕事系ライトノベル

終電帰宅は当たり前、そんなブラックシステムエンジニアになった桜坂工兵がスルガシステムに就職してから3か月が過ぎようとしていました。
仕事に慣れてきたとは言えないものの、なんとかギリギリのところをなんとかこなします。

そんなある日のこと、工兵は職場に自分一人しかいないことに気がつきます。
職場に1人という開放感に飲まれながらも、工兵は黙々と仕事をこなしていると、ややあって社長が現れます。工兵は困惑しながらも社長と雑談すれば、社長は熱を帯びながら「仕事とはなんだ」という問いかけを語りだします。
次第に工兵も熱くなってきて、社長も工兵に「可能性を広げてみないか」と持ちかけます。「プロジェクト管理! コンサルタント! プリセールス!」など単語を並べます。工兵は意気揚々と「いいですね!」と頷きます。
すると社長は「そんな君に丁度よい話があるんだが…」と話し始めるのでした。

やがて帰ってきた上司である室見が工兵の異変に気がつきます。
「どうしたの」と室見が聞くと、つい前にあった頼まれ仕事「(仕事を受けるため)提案活動をしてくれないか」を室見にいいます。室見はため息をしました。
本来ならスルガシステムの全営業は社長が行っています。ただ今回の案件は提案前にて社長による不正が行われ、相手の会社から社長は出禁を言い渡されていたのです。

工兵は絶句しながら今後のことを考え始めるのです。


----(ネタバレあり)----




唐突な説明会
僕は提案の正しい流れを知りませんが、物語では時間の都合により、合同説明会が行われていました。
あの説明会の場って、いわば「強敵チームと顔合わせ」みたいなもので、思えばほぼ素人の人が入れるような場所ではなかったように思えます。工兵にいたっては場違い的なものを感じるだろうと思うし、その感覚が緊張となって、頭真っ白だろうな……とか思いました。加えて工兵にとっては初めての企画説明会RFPですから、もうそれはそれは大変な事になってたでしょう。よく行けましたよ。
まぁこの時は本人に使命感的な、メラメラ燃えたものがなかったので、こうした状況に飲まれている事になっているんでしょうけど。
でも逆にメラメラ燃えているものがあったら場に飲まれないどころか質問とかしてそうです。そんなイメージが湧くほどに工兵くんは優秀な社員だと思いますね。

発端
JT&Wでしたっけ、彼ら集団の働きによって物語が大きく変わってきます。
たしか発端は、工兵と室見とともに食事をしていたところに彼らがやってきて「なんだったんだよwあの素人らw(意訳)」的な煽りをして、室見は反論して、向こうも反論して、どちらも譲らず喧嘩になって、警察呼ばれて、向こうが謝って来たかと思えば悪意ない悪意みたいなものぶつけてきて、たまらず工兵は「は?」ってなるところからスタートしてます。
警察呼ばれたあたりで「こいつらも出禁になるのでは?」とか思ったりしましたが、レストラン側もJT&Wの人も穏便にしてくれたおかげで、問題が大きくならなかったそうです。しかしそれで安心したのか(たぶん素なんでしょうけど)、JT&Wの人(優男)がやらかしてました。
ところで優男さん、あれだけ合理的に動けるんなら、格下相手でも適当にやってれば問題も起こらなかっただろうに……って思うんですよ。なんというか格下だろうが尊敬してる風にすれば(優男ならできると思う)こういう無駄に煽って相手から殴られる可能性もかなり減ったと思うんですよね。まぁあんな感じの社員ですし、あんな会社なのだから誰かがやらかすのは時間の問題だったのかもしれません。

ていあんいらいしょわからない
提案依頼書の書き方がわからない工兵に対し、室見は「任せなさい」とか言って作ったのがもう完成品でしたよね。今振り返ってみてもあれを(電子部品専門商社で業界第三位を誇る会社のディザスタリカバリシステム)半日ほどで作ってしまうのは、恐ろしい技術力の賜物と言えます。提案依頼書作るはずが、もう完成品作っちゃたわっぺーって言えるレベルじゃないのは確かですよね……。室見さんのですから正確さも抜群でしょうし、「もうこれ添付してメール送ればいいのでは?」とあの時思いました(室見さんに対して絶大な信頼)。
ところで、そんな提案依頼書つくった室見ですが、まったく提案依頼書を作ったことない工兵に否定されています。室見としても本意ではないそうでもやもや感ありながら頷いてました。
これ前の巻でも思ったことですが、わからなかったらとりあえず書店行ってそれっぽい本いくつか買って読めばいいと思うんですよね。まぁでも就活サイトやネット掲示板を参考にしている室見さんいいと思うので、そのままでもいいと思います。

強力すぎる助っ人
わからない二人のもとに現れたのは、前回登場したライバルの梢でした。
梢さんわりといろんなことやってたそうで、企画書もその1つだったそうです。それは意外な特技……というレベルではなく、「プロやんけ」と思ってしまうようなレベルでした。
ところで梢がこういう企画系統が好きな理由というのは「文化祭っぽいから」というものでした。そんな様子も踏まえてチームに携わり、いわゆる価値観の不一致で「どうせ負ける」と言い出せないようでもありましたよね。けれども展開的にそれらを明かして、チーム全体で葛藤しながらチームで乗り越えているってのが、前巻を踏まえるとなんとも熱い展開だなと思ったわけです。
余談ですが、梢さん技術は半端ないですけど、性格も半端ないので工兵くん気をつけたほうがいいと思います。でも物語的におもしろいのでいいぞもっとやれです。

仲間と意見の不一致
工兵は真剣に案件を取りに行こうとして、室見はやや諦めもありながらやっていて、梢は楽しいから企画している、みたいな感じでした。そんなバラバラな理由はやがて理解の不一致となり決裂……この決裂ですが、チーム内でバラバラにそれぞれくっついたり離れたりしてましたよね。誰々がどうする、ってのも工兵が選択しなきゃいけない場面もありましたし。
最終的には工兵が室見を説得する展開になったりするものの、なんとかなってます。思うんですけど、やっぱ工兵って営業の才能あると思うんですよ。

業平産業
災害時に問題なく流通(商売)を止めないようにという理由とはいえ、今あるシステムとほぼ同じレベルのシステムをもう一つ用意するということは実際にあるのでしょうかね。
言ってることはわかるし、やってることも「すごいことやってるな」と思うんですけど、もしこんな大きな災害などが起こった場合、そういう時はたぶん流通も上手く回ってないでしょうし……って、もしやAmazonとかヤフーとか楽天とかそういうレベルの会社なんですかね(今更)。
まぁどちらにせよ、この会社に対してやからしをして出禁にさせた様子からちゃんとした会社だなとか思いました。今回、上層部の意向で面倒な事が起こっていたそうですけど、それを除けば良い企業なんじゃないかなとは思いました。なんかそんな気がします。
しかし橋本課長のインパクト大きかったです。またどこかの巻で登場しそうですね。

工兵は社長側の人間
室見が終盤あたりでそう言います。僕も今までの工兵の行動からSEよりなにかの営業やら人と人とのコミュニケーションの間に入る役、窓口、潤滑油的なものが向いているとか思ってました。これ書いてて気がつきましたが「編集者」という表現がぴったりかもしれません。
今回その編集者に企画という新しい仕事を任されたりしていましたが、なんとまぁほぼ完璧と言っていい結果を出しました。それに室見さんが「あんたはエンジニアのことを考えない、社長側の人間ね」と悪い顔をして言ってました。そして工兵も社長がいることでスルガシステムが回っているのだと、こうやって自分たちが苦しめられていたのだと気がつきます。
でもこの納得、違和感あるんですよね。どうしてもいつもの社長の動きから、スケジュール管理できていたら、もっと事前にいろいろわかっていれば、など思うシーンがたくさんあり、そういう小さな行動は工兵ならなんとかやれるんじゃないか、って思うんですよね……。
なに言ってるのかわかりますか。社長の仕事を工兵君がやればもっと良いようにスルガシステム回るんじゃないかって思っているんですよ(暴論)。

【まとめ】
読み応えがある巻でした。いろいろなキャラが登場して、それぞれの行動をして、伏線もちゃんと置き回収していて、ドラマティックな展開でした。
ところで、今回の話は「仕事を受けるまで」の話でした。つまり次は「仕事を処理する」段階に入るわけですよ。ここまでですでに満身創痍と言っていい彼ら彼女らはこれからの仕事ができるのでしょうか心配……とか思ったんですけど、もうすでに室見さんが仕様まとめてますし、たしかテストもしてたんですよね。あとは実装だけなら大丈夫なんじゃないんですかね。