とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

知るほど面白くなる 日本地理

145冊目
地理に触れ日本を知る

知るほど面白くなる日本地理

知るほど面白くなる日本地理

日本の地理について書かれた本になりますが、この本の「地理」というのは土地や川とかに加えて「人の暮らし」も含まれています。おもしろいことに地理とは人の暮らしと密接に関係していて、地理を知れば見える情報から「日本」という場所について知る本になります。

上の紹介を読めばわかるように、ただつらつらと日本の風土について書かれてあるわけではなく、むしろ「日本」ということについて様々な方面で(とはいっても地理中心で)記されてあるので、今の日本について多方面から見ることができます。
記されている傾向も様々で、「地理ってなに?」という基礎的な話から、日本の自然環境、人の移動について(新幹線ができて)、食(お米の話とか)、モノ(生産輸入輸出)、文化(祭り)など……いろんな傾向の話題があるので幅広く触れることができますね。

個人的におすすめしたいのは、僕みたいに地理について知りたいけどなにもわからない人、あとは小中学生高校生とかじゃないですかね。読んでて、地理のとっかかりとして使えそうな気がしました。

※ネタバレありと書きますが、個人的に気になったところを書いていこうと思います。


ーーー(ネタバレあり)---




いろいろな地理の種類
個人的に割とざっくりとしたイメージだった「地理」でしたが、どうやら様々な「地理」の形があるそうでした。
思えば地理で頻繁に使われる「地図」こそ、観光、登山、避難、建設現場はたまた戦争までいろんな場面でいろんな理由で使われています。その多様性こそ地理の多様性であり、地理学にはその多様性を網羅した学問だそうです。
改めて考えたらごくごく当たり前のことですが、中学校以降地理にあんまり触れていないがために、「地理とは県庁所在地とか場所によって取れる作物とか知る学問でしょ?」という固い考えが柔らかくなったような感じがありました。

GISGPS
作中に登場したGIS*1ですけど、読んでてずっと「GPS*2のことを言っているのでは?」と妙な感覚を覚えていました。ただ調べてみるとこの2つは違うようで、(各脚注見てもらったらなんとなくわかる思いますが)簡単に書くとGISが「地図を作るシステム」だとすれば、GPSは「自分の位置を知るシステム」といったところでしょうか。グーグルマップなどで地図を見るあの地図がGISで、グーグルマップで自分の位置を特定しているのがGPSになります。
近頃はGISGPSが両方合わさってカーナビとかになっていますから、「機能すべて合わせてGPS」と僕らが呼んでいるってことでしょうかね。まぁ勘違いしても仕方ない。
そういえば最近、GPSの精度上げるために人工衛星(日本版GPS)を飛ばしましたよね。
URL:【日本版GPS衛星】準天頂衛星みちびき3号機、打ち上げ成功 地上の位置を高精度に測定へ - 産経ニュース

六次産業化してゆく
この本読んで初めて「六次産業」という単語を知りました。この六次産業というのは、農家さんが作った野菜などをその場でレストランなどで使うなど……いわゆる「その場で作ったものをその場で使う」という地産地消の考えです。ちょくちょく自分の畑でとった野菜を使ったレストラン、あるいはとった果物を使ったスイーツなどを「農家の人が」行っていたりする姿をテレビで見た記憶があります。
この先TPPなど控えてある様子から、どうやら普通に野菜を作って売る時代は(終わってはないですけど)終わりつつあるようで、これから先は農家の人自らが作品(野菜など)に付加価値を付けるよう工夫しなければならない時代が来つつあるというのを感じられました。この話題ちょこっと出てるだけなんですけど、なんだか大変な話だなと印象深く思ったんですよね。どうなるんでしょうか。

都市鉱山
鹿児島県伊佐市菱刈鉱山など鉱山と言えば山というイメージがありましたが、一方で携帯電話など機械を回収して金を抽出する技術があるそうで、その携帯電話などが集まっている都市も鉱山みたいなものなのではないかという話がありました。
この話僕も多少知っていたのですが、半信半疑(できても生成コストが高すぎて現実的ではない)でしたけど、どうやら現実的でむしろ都市鉱山の「鉱山としての量」は目を見張るものがありました。
上に書いた菱刈鉱山は鉱石1トンあたりに含まれる平均金量が約40グラムもあり*3、現在も使われていて1年あたり約7トンの金が発掘されています。
さて一方の都市鉱山ですが、まず携帯電話を1トン集めた場合、1トンあたり300グラムという山とは段違いに量が多いうえ、日本は都市鉱山として(金属が集まっている場所として)試算*4した結果ある金の量が6800万トン*5あるそうです。
すごい話ですよね……。昔は日本はたくさん金が取れていたけど今はもう取れなくなった的な話を聞いたことがありますが、まさか現代も意外な場所に金が眠っているなんて驚きです。しかもその量はとてもあるって……いいようにやってほしいものです。

クリーンなエネルギーを福島で
福島県土湯温泉東日本大震災やらなんやらで観光客が激減したそうで、16あった旅館のうち6が休廃業に追い込まれたそうです。そんな土湯温泉は温泉資源を利用してバイナリー発電*6、小水力発電*7といったエネルギー事業を模索し始めたそうです。

土湯温泉16号源泉バイナリー発電所では、年間1億円の収入があり、約8年で投資資金が回収できる予定である。

すでに発電能力はバイナリー発電(400kw/h:約800世帯分)と小水力発電(140kw/h:約300世帯分)で賄えており(土湯町は1020世帯)余力で小水力発電の増設なども考えているそうです。
読んでて、8年無事稼働といいなと思いました。そして福島というある意味特殊な環境にて「持続可能でクリーンなエネルギー」という目標を達成する仕組みができるということはなんとも熱い展開だとも思いました。成功するといいですね。

ときに土湯温泉にあるバイナリー発電機の写真が本に載ってるんですけど、このバイナリー発電機というの男子好きそうな外見してるので「バイナリー発電機 土湯温泉」と画像検索してみたらどうでしょうか。

【まとめ】
日本各地をまんべんなく書いてあるよりどりみどりな本でした。書かれている内容も日本の風土ばかりではなく、日本の社会問題や、今行っていること(再生可能エネルギーや植林運動)とかも触れていて興味深かったです。
そういえばこの本かなり自由研究に生かせそうだと思いました。本に書いてあった食料自給率の話題一つでも、食料自給率というものは実は2つ(「カロリーベース」と「生産額ベース」)があってそれぞれで計算したら全然答えが変わってくる……からの世界各国の食料自給率とかまとめてみればいいし、日本では最近なにが食べられているのか(お米や魚の消費量)とか調べてみてもいいかもしれません。
ほかにも遠洋漁業がめっちゃ減っているって話も排他的経済水域とかと絡めて……ってあれ、もしかして地理は自由研究と相性がいい?

*1:Geographic Information System:地理情報システム

*2:Global Positioning System:全地球測位システム

*3:40グラムはかなり多い方、世界の主要金脈では1トン当たり約3~4グラム

*4:2008年1月、物質・材料研究機構が日本の都市鉱山規模を公表した

*5:>>(前略)日本の都市鉱山にある金は6800トンと世界の埋蔵量の16%におよび、南アフリカ共和国を上回る規模だという。同様に、銀は世界の埋蔵量の23%、インジウムは15.5%が、国内の都市鉱山に眠っているという。 <<

*6:地熱発電の一つ。地熱から出てる水蒸気をそのまま使わずに、その水蒸気熱を使い沸点の低い「ノルマルペンタン」など代わりの媒体を気化させてタービンを回す方法

*7:ダムのでかい水力発電ではなく用水路や小川を利用した水力発電方法