とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

人類は衰退しました3

23冊目
人類は衰退しましたシリーズの三作品目になります。
特に記述することないので、早速感想を書いてゆきます。

人類は衰退しました3 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました3 (ガガガ文庫)

人類という枠組みを「妖精さん」に明け渡した旧人類の人間は、特に犯罪も争いごともなくゆるやかに衰退していました。
そんな衰退する世界で、数少ない国家公務員を務める「わたし」は調停官として摩訶不思議な問題に向かってゆきます。
ある日、かねてから準備されていた「ヒト・モニュメント」計画がついに始動します。
ヒト・モニュメント計画とは、数世紀前にあった「人類」が残していた情報をすべて集めてまとめ上げようという壮大な計画でした。あらゆる場所から学者を呼び込み、わたしや祖父も加えて人類が残した遺跡を数日かけて調査するというのです。
大規模な計画だけあって、ふだん使うことなどない電力を贅沢に引いて「夏の電気祭り」というのも計画されていました。
民衆にとってはこっちのほうが本題と言わんばかりに、わたしのいる街は活気に溢れてゆきます。
わたしはそんな活気に巻き込まれたい欲を持ちながらも、祖父とともに遺跡へ向かうのです。

-----(ネタバレあり)------




地下都市での極限状況
「やばい」の一言に集約されます。水がないこと、出口がないこと、明日が見えないこと、絶望していい状況にわたしと助手はおかれていました。
妖精さんそのものの存在感が主人公補正、ご都合主義に基づいた存在だということが暗に伝えられたあとなので、この飢餓状態というものがより一層危なっかしく感じました。
正直わたしが、妖精さんの扱い方の本を読まなければ本当に餓死していたと思います。わたしの用意周到さでなんとかかんとか命が繋がり、生きて帰ることができました。
作者の腕により、飢餓状態特有の必死さが、ちょっとユーモアある言い回しに昇華されていました。あれ作者のユーモア光るからこそであり、考えてみればすぐにあの二人にとって絶望が笑えないぐらい感じることができます。あれがもし別の作者だったら、もうすごい緊迫感になっていたと思います。
ほんと、よく無事に帰れたと思います。あの世界がもし『Another』の世界なら、50回はゆうに死んでいましたよ。(確信)

ヒト・モニュメント計画
本題である途方のない目的を想像してみれば、本当に壮大な計画を浮かばせますね。
人間が人類だった頃のデータをすべて集めてまとめるなんて、そんな方法あるのかと思うほどで、ある意味知識人の知的好奇心を踏まえてである趣味と言えたかもしれません。まぁ、わたしの所業でおじゃんとなってしまいましたが。
わたし目線だからしょうがないところもありますし、祖父も「やれやれ」と言わんばかりに納得しているのもわかります。しかし、怒る学者の気持ちもわかります。僕でも怒ると思います。
ただ、もしわたしが壊すことを交渉したらどうだと考えてみると、壊すことに対しての許可は降りなかっただろうし、あの二機は宇宙へ飛び立ってしまい、妖精さんもいなくなったのだと思います。
だから無断でやったからこそあの結果になったのだと僕は考えます。だから、わたしGJですよ。

調停官わたし
いつもぐーたらとか言っておきながら今巻はほんと有能でしたよね。というか、毎巻有能なんですけど、今回はもう、なんども「天使かな?」というような言動があり、汚れ役も買って出て、髪や信頼を落としてまでも最善の答えにみんなを導きました。
「調停官」であるから行動に移せたのか、それとも自らの使命感かなんかよくわからないですが、主人公していましたね。

救世主妖精さん
あの紅茶からでてきた時の安心感はすごかったですよ。妖精さんはいつも何やらかすのかとかドキドキしていたというのに、今回ばかりは登場した時、「きたああああ」「これでいける!」と、脳内で形勢逆転のBGM流れてました。実際は水かかけられて起きただけで、かつ現状をおもしろがっているだけなのに、この存在感。妖精さんというものはすばらしいものですね。
あの紅茶から登場してからの妖精さんセラピー最高でした。

パイオニア計画
宇宙で知的生命体を見つけること、そんな使命を受けていましたね。
この二機(ボイジャーだとわかりにくいのでP子とO太郎とします)は祖父の推理により、発射時から深層心理で「行きたくない」と思っていたと言い当てられます。二人は困惑したまま「そうかもしれない」として終わっていますけど、今までの行動を考えてみればちょっと同情してしまいます。笑い話にしていたO太郎「ニート発言」についても、任務を考えてみればしょうがないのかなと思ってしまいます。
言動こそロボットですけど、実に人間らしかったです。そこがまた良かったですね。
この一件は、ちょっと対象は違いますが、星新一の『不満』を思い出しました。

【まとめ】
今回もおもしろかったです。
前回を冒険記にSFだとすれば、今回はサバイバルですかね。絶体絶命の箇所もなんどもありました。その都度、いろいろ元ネタを挟んで、ウイットに富む会話、笑い話から真剣な話への転換、ブラックユーモア……もうたまりませんね。
そもそも地下都市の探索、そして都市の異変についての謎について触れつつ、サバイバル、やがてゆるやかに謎も解かれてゆくのがもう、いいっすねぇ。命がけの探索も、サバイバル感があっておもしろかった。
この感想は魅力を思い出していただけるように書いたつもりですけど、全然魅力伝わってないと思います。相変わらず感想書くのが難しい作品ですね。
人類は衰退しました』二期こないかなぁ……。

Another (上)<Another> (角川文庫)

Another (上) (角川文庫)

Another (下)<Another> (角川文庫)

Another (下) (角川文庫)