とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

人類は衰退しました4

28冊目
人類は衰退しましたシリーズ四巻目になります。
個人的に好きなシリーズなので、今回はどんな話になるのかとワクワクしながら手に取りました。
ワクワクの理由は、アニメ版で覚えていた『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』が収録されていると知ったからかもしれません。

人間の科学発展がほとんど失われているほど衰退したこの世界では、妖精さんが現「人類」として君臨していました。
そんな現人類の妖精さんは不思議な存在です。好奇心の赴くままに超越した技術を使い、遊びついでにとんでもないことをやらかします。
主人公わたしは、妖精さんと接触を図る調停官という職業についています。職業柄妖精さんと関わることが多くなるのですが、だからこそ妖精さんのとんでもにも巻き込まれることがよくあるのです。
(今作は『妖精さんの、ひみつこうじょう』と『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』の二作が収録されています。)

妖精さんの、ひみつこうじょう』
主人公わたしがいるクスノキの里は食糧難に陥っていました。ただでさえ自給自足でなんとか食いつないでいるような世界であるので、慢性的な食糧難はクスノキの里にかぎらず、かなり大規模で困り果てていました。
わたしと祖父はグチグチと言いながら、辛うじて食べれるような食料を飲み込む日々を過ごしていました。
ちょうどその頃、定期的にやってくるキャラバンや、食料を売るお店にて、いつの間にか正体不明の缶詰などが陳列されている事件が勃発します。
その陳列された缶詰などを見ると、「妖精社」という発行元が書かれてありました。
わたしと祖父はその妖精社の視察に赴くのです。

妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』
わたしがいることによって妖精さんの過密地域と化したクスノキの里では、妖精さんの数が多いが故の弊害を妖精さん自身が受けていました。
いつもは雑念なく楽しんでいる妖精さんも数が多いと、ネガティブになることが現象として観察されたのです。
そこで祖父はわたしに単身赴任を命じます。数ヶ月、数年ほど帰れない単身赴任の目的とは、妖精さん分散させること、ネガティブになる妖精さんたちの移民を行うことの二つでした。
わたしは嫌がるのですが立場が上の祖父に勝てるはずもなく、わたしはキャラバンに乗り移民先の目的地に向かうのです。



----(ネタバレあり)----



妖精さんの、ひみつこうじょう

妖精社の階級システム
妖精さんが作ったという会社でした。ただ、チキン(あの方たちをチキンと表記します)によって乗っ取られていたという現状でした。どう乗っ取たのか、なぜチキンにの取られてしまったのか、などいったん置いておいて、気になったことを挙げていきます。(前置きが長くなってしまった)
妖精社は現幹部らチキン数羽と受付のおじさん、あとVIP局長がいましたね。不思議に思ったのは、受付のおじさんはVIP局長から指示を受けていたとして、VIP局長はだれから指示を受けていたというところです。
VIP局長は新人を呼びこむことで階級が上がってゆく的な事を言っていましたが、VIP局長の上などおらず実質現場監督でした。なのにVIP局長は上司のチキン幹部らの存在を知っていません。ならば、どうやってチキン達はVIP局長に指示を与えていたのか、階級が上がっていくとはVIP局長は誰から教えてもらったのかそれが気になるところです。
まぁVIP局長が勝手に乗っ取って、言い出したなんてことも考えられるのですが。

妖精社の働き手たち
チキン達、VIP局長(こうしてみるとニコ生主の名前みたいですね)と受付のおじさんと、あともう一人忘れてはいけない働き手がいましたね。一斤さんです。
一斤さんはとんでも技術で生み出された、パンであり、合成食品でありながら、稼働し、質問に答え、説明し、自らを食品として食べれるようにしたすごい一斤でしゅ。
いやもう、その説明している所想像したらおもしろいことこのうえないでしゅ。たしかこの回アニメで見逃したんでしゅが、一斤さんのブラックユーモアを動いているアニメでみたかったでしゅね。
ところで、僕がもしあの裂けた一斤さんを目の前にした場にいたら、もしかしたら好奇心で食べちゃうかもしゅれません。キャロットミックスなんておいしそうでしゅ……。

子ども部屋でモノポリするおじさんたち
モノポリやって祖父さん勝利してましたね。僕はモノポリのやり方わかんないので強さの基準もわかんない身なのですが、たぶん、祖父さんゲームもめっぽう強いと思います。モノポリに限らず、頭脳系ボードゲームなんて喜々としてやりそうですし、エンジョイ勢でありながらかなり実力者の風格があります。そしていくら難しいゲームを楽しんでも「こんなもの遊びだ」とかバッサリ言いそうです。(イメージ)
モノポリ強さのイメージだと、祖父>VIP局長≧受付のおじさんという感じですかね。あるいはVIP局長は煽りとかに弱く、受付のおじさんが二位かもしれません。まぁ、祖父に破産させられて負けたらしいですし、祖父一人勝ちは間違いないでしょうね。

妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』

移民する妖精さん
いじめが勃発し、移民を余儀なくされてました。妖精さんの数で主人公補正が決まってゆくなど書いてあった記憶があるのですが、ただ数が多いのはいけないようです。
妖精さんによる「自分は居なくてもいいんじゃないか」と自分を低く見てしまうという現象については深く追求しないとして、そんな現象がありながらも、冒頭で漂流された時、数人妖精さん行方不明にわたしが「何人かいないようですが?」と焦りながら聞くと「たぶん、しんだ」と答えているんですよね。同種に対して淡白なのか、それともふつうに興味が無いのか。たとえ移民した同胞だろうがそれは同じようです。


僕が無知で悪く、たぶんです。たぶんですけど、この中編は聖書のオマージュ(または天地創造のなにか)があると思います。およそ七日間で世界を作るところとか、始めいた妖精さんの数とか、おそらくなにかしらのオマージュがあると思うんですよ。思うだけで具体的にはよくわかりませんが……。
たまたま漂流したこの島の一生は、メルヘンチックな雰囲気にこそ囲まれてますが、本当に発達から滅亡までの縮図を表していたと言っても過言ではないような展開でした。調子に乗って発展させたら、いつの間にやら土壌がやられていた、今更元には戻せないなんて、まんまいまn……なんでもありません。
ところでこの島、最盛期は小さい島ながら妖精さん八千人でしたっけ、そのぐらいの妖精密度があったみたいです。かなりの高密度な気がするのですが、それほどまで増えてもいじめが起こらないとなると、やはりわたしの采配が良かったというのが察して取れます。

島の特産物
なんかいろいろ出てきましたね。空豆が一番印象深かったです。あとはもう色々ありました。
出てきた特産物については、ほぼダジャレと言っていいほどでした。ただ、そのダジャレに設定があり、読んでいるぶんには面白かったです。そもそもこんなに思いつく田中ロミオさんすごいです。
ある海賊児童文学と負けず劣らずの不思議な道具にはわくわくしましたね。
そういえば出版社は小学館ですね。これを児童文学としてもいいかもしれません。(にしてはちょっとブラックユーモア強いかな)

人類が衰退しました四巻目でした。
個人的にアニメで好きだった話『妖精さんと、ひょうりゅうせいかつ』が原作で読めました。アニメでこの話が一番印象に残っているんですよ。おもしろかったです。
もちろん『妖精さんの、ひみつこうじょう』もおもしろかった。工場見学しているような感じ、感じがしただけで実際は遭難ですけど、それがまたダンジョンを歩いているようでおもしろかったです。
前巻では冒険、SF、ときてサバイバルでした。今巻はジャンルで言えば、サスペンス(陰謀を暴く系)、創世記でしょうか。
今巻はわりとそれがメルヘンチックな風合いも強く思いました。たぶん中身のブラックユーモアが過激になったから、二割増しにメルヘンチックを入れているのだと勝手に想像します。
相変わらず感想が書くのが難しい作品でした。しかし、相変わらずおもしろいのも確かです。
「おめーのせき、ねーです?」というシーンもう一回見たいなぁ。二期きて欲しいものです。