とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

人類は衰退しました5

33冊目
ここらあたりからアニメで放送されていない作品が収録されています。なので、未知の領域に足を踏み入れるような、そんなワクワクを覚えながらこの本を手にとりましたね。

人類はゆるやかに衰退を迎えているこのご時世では、もはや争いなぞ科学とともに過去の産物となっています。
のほほんと生きている人が多い中で、現人類は「人間」ではなく、「妖精さん」に明け渡していたりします。
主人公わたしは、調停官として現人類の「妖精さん」に外交のごとく接触を試みるのですが、妖精さんとは不思議な存在で、いつも嵐のようなトラブルを起こしていました。

本書は『妖精さんの、ひみつのおちゃかい』と『妖精さんたちの、いちにちいちじかん』の中編二作品が収録されています。

妖精さんの、ひみつのおちゃかい
一言でいえば、主人子わたしの過去編です。
学舎時代のわたしが、現調停官になるまでの記録というべき、青春の葛藤が描かれていますね。
学校らしい、輝けるサークルなどあれば、いじめなど陰険な記憶も書かれています。
入学から卒業まで、わたしの成長を眺めることができます。

妖精さんたちの、いちにちいちじかん
トラブルは唐突に起こりました。いつの間にか、この里がゲームのような(というかゲームの)世界に変わりしていたのです。
わたしと祖父は問題の対応に追われるのですが、民間人こそ知っていないものの、これは妖精さんたちの影響が人間に被ってしまうという、童話災害そのものだと二人は確信していました。
わたしと祖父は原因を究明するため、ゲーム特有のコマンドに翻弄されながら真相を探してゆきます。




------(ネタバレあり)-----



妖精さんたちの、ひみつのおちゃかい

学舎の生徒たち
混沌としていました。学校は社会の縮図と言っていいほどの、いろいろなものを詰め込んだ姿は、暗い絵の具でかき混ぜた液体を眺めるようでした。
個人的には、隠し通路がある学舎の建物そのものの過去が知りたいものですが、今回は学舎にいる生徒たちにスポットを当てていこうと思います。
学舎のシステムを見るに、まだ若い(子供)が一人で来るものだから、本当に軽い気持ちで心が歪んでしまいそうです。学校側も健全な学生を育てるからといって、教員の威圧感、抜き打ちの点検など、生徒から見れば気の緩むことのない生活はある意味刑務所を彷彿とさせます。
とはいえ、仲の良い友達と群れるものだから、悪ふざけが目立つ生徒もいました。男子らしいスカートめくりとかしてたんだろうなというギャングや、愛情表現が苦手でまだ精神が幼い巻き毛、それらの他にもいたんでしょう。
彼らも歳とともに成長しています。この学舎という場所は、社会の縮図とだけあって勉強の他にも、タバコなど俗物、それらを禁止する教員、それら駆け引きなど、生きる上での要領も学ぶのでしょう。そして、対人関係もやけどしながら学ぶ場なのだと思えば、実に不健全で、健全な教育の場なのだと僕は思いました。(優等生みたいな感想)

のばらの会
少女漫画である理想の生徒会をそのまんまに写したようなサークルでした。ただ実際はそんな花園のとは別の、アンデルセンならぬ病んでるセン(この表現すき)なサークルでしたね。
病んでるセンとギャグっぽく表現されているものの、やってることはメンのヘラのそれですからね。さすがの僕もドン引きレベルの、あれですよ。もう、蓋を開けたら魔境みたいな。そんなんですよ。
とはいえ、表向き健全なサークルとありました。女性特有の理想がそこにはあるんじゃないかって思うほどであり、クラスメイトから憧れの眼差しをわたしは受けていましたね。実際僕もあの学舎にいたなら、あの魔女の先輩に憧れの目を持っていただろうな的なことを思ったりします。
ところで「のばらの会」という単語で思い出したのは、『儚い羊たちの祝宴』という作品にてそんな会があったということです。たしか……パンドラの会、違う、女郎蜘蛛の会……ちがう……なんでしたっけ? (正解:バベルの会)

わたしの学校生活と妖精の加護
わたしの学校生活は葛藤あり、いじめありと壮絶なものだったものの、終わってみれば充実していたと言えるものでした。
「それは妖精さんの加護があったから」と一言で言えばそうかもしれません。しかし、それでもこの話のわたしと妖精さんの再会はぐっと来るものがありましたね。
この感情については、言葉に言い表せるようには思えないんですよね。けど、それでもいいと僕は思います。
ときに、Yと仲良くなるきっかけになった隠し扉を偶然見つけるシーン覚えていますでしょうか。あの隠し扉を偶然見つけたというのは妖精さんがいたから、でしょうか。まぁ、結果オーライなので気にしないです。

妖精さんたちの、いちにちいちじかん

ゲームの世界
ドラクエから、ぷよぷよ、マリオ、テトリススペースインベーダー……といろいろありました。僕が分かる範囲はこの程度ですけれども、詳しい人が居ればもっと小ネタを見つけたとことだと思います。
このゲームが現実になった世界というものは、実に不便そうでした。僕はたまに「人生がゲームだったら楽なのに」と青いたぬきにいいそうなことを考えるのですが、もし即死モードで設定されたならば、小指ぶつかっただけで死ぬみたいな、不便を超えた不便でしょうね。そんなの現実になられては困ります。
それにパラメータが数値化されたら、この現実よりもスペックが大切な世界になりますよ。僕なんかすぐパーティから外される自信があります。これを見て「現実がゲームの世界じゃなくて良かった」と思うよりは、「レベルアップ、経験値集めがんばろ……」と思いたいものです。てか、思ってます。僕、レベルアップ頑張ります。

妖精さんを召喚
妖精さんテイルズでいう精霊みたいになっており、召喚されるなり本当にチート(核爆)を使うその姿たるや、もう悪魔のゴブリンのそれですよ。そういえばFFでかわいい顔してえげつない火力の敵がいた気がします、あるいはきゅうきょくキマイラってこともあるかもしれません。まぁ、イメージするならそんな感じでしょう。
その戦いのレベル差、オーバーキルっぷりはギャグのようで、モンハンの悪魔猫みたいでした。ていうか、まんま悪魔猫でしたね。入手した素材はわたしは捨ててたようですが。

助手がやらかしたこと
助手さんの手に渡った、あの万物ゲーム機がよもや恋愛ゲームに変更されていました。
影響なんてもう恐ろしいもので、偶然のベビーブームとありますし、離婚ブームともありました。そもそも恋愛ブームと軽々しく描写されていますけど、おそらく里にはあの巻き毛みたいな人が量産されてますし、貞操観念が薄くなったりでもう、すごいことになっているんじゃないでしょうか。そんなエンディング後みたく、さらっと流すレベルではないですよこれ。
そんなドロドロとした感情の予想は置いておいて、助手さんがわたしを振り向かせようとしても、振り向いてくれませんでした。あくまでフラグぶっ壊す系女子だという説が上がりますけど、もしかすれば恋愛ゲームでいう補佐役のかわいい女の子ポジションなのかもしれませんね、わたしは。

【まとめ】
人類は衰退しました五作品目になります。相変わらずおもしろいんですけど、相変わらず感想を書くの難しい作品でした。
とくに『妖精さんと、いちにちいちじかん』は読んでもらうのが一番おもしろいと思います。(それを言ったら『妖精さんと、ひみつのおちゃかい』もそうです)だから、ここまでネタバレ感想読ませておいて言うのもなんですが、未読なら読んでみてください。
妖精さんと、ひみつのおちゃかい』についてはアニメ化しているんですよね。もう一度見てみたいものです。
それを言うなら、『妖精さんと、いちにちいちじかん』もアニメ化してほしいものですけど、ほんとあれの映像化は映画並みに大変そうです。その点、想像だけで補える文章、これは小説の利点でしょうね。

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