とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

感じる経済学

160冊目
経済を「感じる」本

経済を「感じる」というテーマで書かれた本になります。
内容は基本的にわかりやすく書かれており、経済を感じてもらうと身近な例など出したりしていて、タイトル通り「感じる」ということ「身近な存在としての経済」というものを理解できるようになっていました。
経済と聞くとどうにも金融や投資など堅苦しいイメージ、あるいは株FXのようなよくわからないけど身近ながらちょっと遠い存在に感じますが、この本ではそういった人向けに書かれている感じがあって、経済初心者とかが読んだらいいんじゃないかなと思いました。特に経済に関心がある若者が読んだらいいんじゃないかなと。

どうでもいいですが、表紙のイラストがかわいいです*1

※ネタバレありとありますが気になったところを挙げていこうと思います。

ーーー(ネタバレあり)ーーー



コンビニコーヒーという革命
コンビニコーヒーは最近から始まったあれ、ぐらいしか認識してませんでしたが、業界の中ではまさかこれほどまでに衝撃的な存在だったとは思いもしなかったです。
たしか顧客を獲得するためには2パターンの方法があり、一つが「顧客を奪う形」で、もう一つが「新しい顧客を作る形」でした。コンビニコーヒーはまさに新しい顧客を作る方に含まれていて、今までやってきたスターバックスなどのコーヒーチェーン店などの業績に影響を与えてないというのに(顧客を奪ってないのに)、コーヒーチェーンと引けを取らないぐらい儲けてるとかなんとか。すごいですね。
思えばコンビニに行ったときコーヒーがちらほら見えて、たまに注文している人を見るぐらいの日常的なものだったんですけど、こうした本で数字やら考えやらをまとめて見てみると、「あれは画期的なものなんだ」と改めて思いました。

GDPの話
テレビとかでよく聞くGDP*2ですが、いまいちこの単語の理解ができてませんでした。なんとなく「これが日本全体の消費指数」的なイメージはあった程度だったんです。
実のところ、なんとなくのイメージ(これが日本の消費指数)というのはやや当たっていたようで、この本では、

消費、投資、政府支出という3つの役者が出揃ったところでGDPの話にもどります。GDPは、消費(C)と投資(I)、政府支出(G)を足し合わせたものとして定義されています。(後略)

このGDPの定義は、お金を支出するという面に着目したものです。

など紹介されていました。
「消費」「投資」「政府支出」という新しい3つの単語が出てきましたが、この単語たちは引用した文章の前に出てきて、要はそれぞれ「必要なものや満足するために使われるお金」「(設備投資など)お金を稼ぐために使われるお金」「政府から出されるお金」になります。
そんな3種類のお金が支出する時ぐるぐると回りながらめぐっていて、その使われた量によってその時の景気の良さなど表しているようです。
おもしろかったのは支出にもいろんな種類があるというところで、加えてそれら支出たちは簡単にまとめることができてるところです。「個人が出すお金」「企業が出すお金」「国が出すお金」など種類はいくつかあるんだろうなと想像はしてたのですが、それぞれまた複雑な特性があるのかなとか勝手に思っていたわけですから、こうしてざっくり三種類でそれらが足された数がGDPだよ! と言われるとわかりやすくてよかったです。

日本の状況
上のGDPが理解できたら、現代の日本の状況がより一層深刻(深刻というか八方塞がり)ということがわかってきました。
とはいっても、毎日のニュースの様子からおおよそ景気のいいようなことはないのだなとか思ったり、一方で国が「景気は上向き」とか言っている様子から「僕が知らないだけで景気は良くなっているのかな?」とも思ったりしました。それでも、まさか悪い意味で両方とも起こっているとは思いませんでした。
現在のところ景気が実際よくなっている風な感じがあるのですが、企業は設備投資を渋っているらしく、投資の部分が横ばいの一方で物価は上がってて、なのに労働者の賃金は並行かやや下がっていってる(たまに上がる)ようです。
つまり景気は良くなっているから物価は上がるが、収入は上がらない。だから好景気の実感がわかないような微妙な感じらしいです。
それらのしわ寄せは若者や弱者に向けられたりして、そんな疲弊した社会になるからさらに消費者は倹約が進んで、さらにお金が回らなくなって……みたいにおおよそいい感じではなさそうでした。だいたい長時間労働と給料が低いのが悪い(偏見)。

成熟国に必要なのはイノベーション
物価は高くなるのに給料が下がっていってる、なんて暗い話がある一方で、さらに追い打ちをかけるように少子化(単純に労働者が少なくなる、市場が小さくなる)など待ち構えているなど、これからの日本はなにか転機がないと縮小していく一方になりそうです。
とはいえ「転機」さえあればなんとかなる、ということもまた事実のようです。後半ああたりに書かれてあるイノベーション*3というものが起これば(起こりやすい環境になれば)新しい市場が生まれるからいいとのことです。
話が多少それるのですが、経済的に国が成熟しだすと国民に道具などが分け与え切ってしまい、自然と消費が少なくなる傾向があるのだといいます。みんな持ってしまったら買わなくなるような飽和した状態になるのだそうです。確かにそうです。
そんな「別に必要ないのでは」と思われてる中で、革新的で新しい技術、もっと言えば人々を魅了するような技術というものが出てくれば、消費者が多少無理してでも買ってしまうような感じになれば、また消費者がお金を使って景気が良くなるのだそうです。

イノベーションを許さない社会
問題なのがそんなイノベーションを阻止するような社会(もっといえば空気)が日本に漂っているところです。
ベンチャー企業が動きにくい仕組みがあったり、むしろ大企業が環境を閉鎖的に縛ってしまうなんてこともあるらしいです。国もそれには危惧しているらしく、ベンチャー企業を応援するプロジェクトなんか立ち上げているみたいですが、応援を受ける側(ベンチャー企業側)の人たちが集まらないなど思うような成果が出てないようです。
なんというか、読んでて「問題がいっぱいだぁ…」と思いました。そんな苦しい社会になっているのは終身雇用やその他いろいろな日本の特殊な会社内部の状況など相まっていて、「これさえなんとかなれば全部解決」なんて問題が見当たらないのが難しいところです。ましてや個人がどうすることもできなさそうな感じなのが、また難しいところです。
少なくとも僕はイノベーションを肯定できる側でいたいものです。

とはいえ幸福に生きるように
日本の景気や将来のことを考えると暗い気持ちになってしまうのはしょうがなく、ましてやその暗い気持ちの日本しか知らない僕らみたいな若者たちが将来に希望を持てないというのはしょうがないことかもしれません。
ただこの本に書かれてあった一番大事だったと思える箇所は、それら踏まえて「前向きにやっていこう」という形の肯定した希望的な考えでした。
本にちょくちょく書いてあった経済はメンタルに左右されるというのも頷けて、景気がいいあの高揚した感じが日本に今不足しているのではないかという感じは僕も持っています。
だからといってこう前向きになったとしても、現在貧困にあえいでいる人たちが皆裕福になるわけではなく、明らかに怪しいものに対しては前向きではいられない(疑っても仕方ない)んですけど。まぁそんな良い悪い空気感を「感じる」という意味でできたらいいですね。

【まとめ】
経済とは意外とメンタルに左右されるものらしく、メンタルは国の現状などの「不安」などによって左右されて、そんな不安が巡って生活にダイレクトにぶつかってくるというのがなんとなくですが感じることができました。
恐ろしいのは日本がこのままではまずいというのもなんとなく明確にわかったというところで、どうにかいい感じに転機が起こっていいようになってほしいと強く思いました。そのためのイノベーション、魅力的な商品、システム、そんなものが日本に溢れたらなぁ……。
でも少し考えてみたら今まさにワクワクする技術けっこうありますよね。ぱっと思い出しただけでもいろいろあります。ああいったのを友達に教えてあげたり、SNSで紹介したり、もちろん自分で買って楽しんでみたりとかしたらいいんじゃないですかね。ていうか、一般市民の僕にはそれぐらいしかできないです。

*1:イラストは456さんです、Twitter:@456log

*2:国内総生産:Gross Domestic Product

*3:ここでのイノベーションは科学技術のほかに物流やITなど多岐も含んでいる