西洋美術入門 絵画の見かた
112冊目
好みの画家を探してみよう!
内容はざっとかいつまんだほどで詳しく書かれてはないですが、絵はカラーでたくさん収録されているためとても興味深いですね。
解説もわかりやすいので、入門編として読めば後々いろいろ調べるための手がかりになると思いますよ。
ぱらぱらとめくってみればわかりますが、「一つの絵を詳しく見てみようコーナー」と「絵と絵を比べてみようコーナー」があります。それぞれ絵を詳しく見てみようで絵の見方がわかり、比べてみようで同じ傾向でも違い(魅力)を知ることができます。
名画も数多く収録されているので好みの画家を探してみるのもおもしろいと思います。
※ネタバレありとありますが、今回も気になったところを挙げていこうと思います
----(ネタバレあり)----
寓意について
絵の時代背景、画家の半生……絵画を鑑賞する人たちはなにを見ているのだろうか、と前から思っていました。たしかに「超絶技巧のすごい絵」は眺めるだけでパワーを感じることはできていても、僕はまだ深い楽しみ方ってのは見出だせていなかったんですよね。
今回この本でちょくちょく(というよりほとんどの絵で)寓意(アレゴリー)が登場します。ここにいる男性はキリストでどうたら、ここにいるヨハネがどうたら、あとバラを持っているからどうとか、画中画があれだからどうとか……そんな暗示みたいなものが魅力なんて、正直知らないとわかるはずないです。
僕としてはああいう気取った雰囲気はちょっと……、とか思っていたのに、読んですこし触れただけで魅力がわかったような気になっています。とても興味深いものでした。
ただここに「見栄えがいいから、なんとなくヴァイオリンもたせたろ!」みたいなノリ(の絵もありましたが)は少なくて、むしろ「これの裏設定があってこういう意味でヴァイオリンを持っている」というのが大多数だと言うんですって。こう大多数に意味を求めているのだから、一方で特に意味もなく書かれた『豆を食う男』(カラッチ)が魅力的に見えてくるのだからおもしろいですよね。知れば知るほど見方が変わる、なんてよくいできた娯楽ですよね!
超絶技巧の画家たち
構図もそうですが、よくよく見るとすざましい画力を持った画家の絵がいくつも登場していました。
いま印象に残っているのは、
・『プログリィ紀の肖像』ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル
フリルっていうんですかね、服の質感がすごい。
URL:ドミニク・アングル - Wikipedia
※URLの『ド・ブロイ公爵夫人』ってやつです
・『両替商とその妻』クエンティン・マセイス
金属の重厚感がすごい。
URL:クエンティン・マサイス - Wikipedia
・『聖イグナチウスとイエズス会の伝道の栄光』アントレア・ポッツォ
だまし絵すごーーーーー!
URL:アナモルフォーシス - Wikipedia
※『イニャツィオ聖堂に描かれたアンドレア・ポッツォの絵画』ってやつです
あと「点描」という手法がすごかったですよね。なんだよその気が遠くなる作業! って気が遠くなったものです。有名なスーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』でしたが、本当に点で書かれているのか見て確かめてみたいですね。(現在はアメリカ合衆国のシカゴ美術館にあるそうです)
てか、ほとんどだいたいの絵がすごかったです。なんというか、今でこそデジタルで描いた絵を見ることが多い時代ですが、冷静に考えてみれば絵の具なんて混ぜれば暗くなるんですよね。だから混色はどうしても暗くなる。なのに光を表現したり、暗闇の中の光を表現したりとかしているんですよ(光の表現はルノワールとフェルメールが好みでした)。もう「魔法」としか表現できませんね。すごい。
個人的に面白かった話
画家のエピソードがかいつまんで書かれてありました。個人的に面白かった話、いまぱっと思い浮かんだのは「レオナルド(ダ・ウィンチ)とミケランジェロの関係」ですかね。
この両者は、ことあるごとにぶつかっていました。ミケランジェロの方がふたまわりも年下でしたが、(中略)彼は「絵画が至高の芸術。彫刻は野蛮」と言ってはばからない有名人のレオナルドに向かって、「未完成ばかりじゃないか!」と嫌味を直接言ったことさえあります。
レオナルドやミケランジェロといえば神格化されたような存在だったのですが、こうしてみると一人の人間だなって思います。でもまぁ、面と向かって「未完成ばかりじゃないか!」は草生えますよ。
もう一つはフラゴナール作品の『ぶらんこ』作成エピソードですかね。
URL:壁紙Link 「ぶらんこ(ジャン・オノレ・フラゴナール) The Swing, (Jean-Honoré Fragonard)」
URL先の文章を読んだ人はもう分かるかと思いますが、一見スカートを履いた女性がフランコをして手前に男性と楽しげな印象を受けます。しかし、
一見、無邪気な恋人たちを書いた作品ですが、(中略)注文主のサン・ジュリアン男爵は、「司教の揺らすぶらんこに私の愛人を描き、彼女の脚をのぞき見できる所に自分を描いてほしい」と依頼したのです。
ちなみに依頼された画家は背徳さのあまり断ったんですよね。そして次に依頼されたのがこのフラゴナールというわけです。
実際に男爵がこれをそのまま言ったとはわかりませんが、画家側に背徳感を負わせるほど注文をしたってことですよね。なんかおもしろくないですかね。
画家もひとりのアーティスト
パトロンという職業があったり、宮廷画家なんかがある一方で、時代とともに変革しそれに巻き込まれてしまった画家たちは少なくないようでした。いまでもイラストレーターが低収入だということもあるようでしたが、昔も昔で貧困に悩んでいたそうです。
事あるごとに「失意のまま亡くなった」と本に書かれいて、「もっと評価されるべき」と思う一方で脚光を浴びることなく亡くなってしまったことが虚しく思いました。今は有名がゴッホのエピソードなんかいたたまれなかったです。
そういえば今はTwitterなどで絵師たちの交流があるように、昔の絵描き同士も互いにモチーフにしたり交流をしていたとかなんとか書かれてありました。それ以外にも自己顕示欲が高い人だったり、たまに問題起こしたり、一方で生真面目な人もいたり。そう考えてみると時代と場所が違えど絵師はずっと通ずる人たちなんだなと思ったりしました。
参考文献リスト
(僕が検索しやすいように)ここに参考文献リストを載せます。
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【まとめ】
いろんな画家の絵が見れておもしろかったです。なんとなく見ていた絵でも、こういろいろな方面から見るといろんな表情を見せて興味深かったですね。
初めて見た絵も数知れず、好きになった画家ありました。個人的にターナーとコンスタブルが好みストライクでしたねぇ。とくにターナーはよくて、彼を知れただけでもこの本を読んだ価値ありました。画集ほしいですね……あぁでもちょっと値が張ります。
みなさんも教養の一つとして絵画も嗜んではいかがでしょうか。好みの画家を見つければ、絵を見るのが楽しくなるはずです(WEBでターナーの絵を見ながら)。