とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

ギフテッド

97冊目
異物が生まれはじめた世界、困惑した人類はどこに向かうのか

四半世紀も前のこと、アメリカのミネアポリスに住む13歳の少年が腹痛を訴え、病院で検査を受けました。腹痛の原因は見つかりませんでしたが、その時の検査によって腎臓に張り付いた奇妙な腫瘍を見つけます。その時は腎臓ごと腫瘍が摘出され、更に詳しい調査が進められます。しかし、少なくとも悪質主要ではないことがはっきりした以外何もわかりませんでした。

この腫瘍(機能性腫瘍)はこの少年のきっかけに、世界各地でこの腫瘍(後々それは新たな臓器だとわかってくる)が報告されていきます。誰かが「未知の臓器……これは人類が飛躍的進化の時期に入りつつある証拠だ」など言い出し、機能性腫瘍を持つ子供ら「ギフテッド」と呼びはじめ、世界各地でこのギフテッドを保護する動きが競うように導入されていきます。

主人公の達川颯斗は冴えない小学生です。(小さい時からクラスが同じだった)島村と互角にライバルとして競い合ったのは昔のこと、いまや運動勉強人望など全て島村劣り、颯斗は若くして現実をつきつけられるような少年でした。
そんな颯斗でも多少は友達がいました。しかし、クラスメイトから避けられ始めたのは「冴えない」からだけではないようで、小学六年生の定期検査の結果からになります。颯斗はギフテッドなのでした。
そう周りが気が付いてから颯斗の扱いは変わります。唯一変わらないのは、隣りに座っている佐藤あずさぐらいです。

ここまでは腫れ物扱いで終わるような話だったものの、颯斗を快く思わない人物がクラスにいました。島村です。彼は全て颯斗に全てが全て勝ってきたというのに、ここに来て島村が手に入るはずのない「特異性」を颯斗が持っているとわかったのです。
島村は颯人に対して「化け物」と吐き捨て、クラスの中心人物が颯斗を「化け物」というのだから、颯斗は化け物に決定され、何度かいじめのような仕打ちを始めます。
気弱な颯斗は我慢してきましたが、島村がギフテッドという特異性に妬んでいるのだとあずさから指摘を受け、颯斗はささやかな抵抗を見せます。しかしこの日からしばらく、島村は交通事故に遭います。これは偶発的な事件でしたが、「もしかして颯斗がやったのではないか」という疑念が広がり、島村の友達である竹田が颯斗に詰め寄るのでした。
次第に口が悪くなる竹田に颯斗は大声で否定します。さらに不幸なことに、この瞬間のこと小さな地震が学校を襲いました。
緊迫したクラス、そこに防犯ブザーが鳴り、混乱、クラスメイトは狂乱ながら教室を出ていきます。最後に残ったあずさに気が付くなり颯斗は近づきますが、あずさまでも悲鳴を上げて逃げてしまうのでした。
颯斗は一人ぼっちになります。

かくして颯斗は転校することに決めました。転校先はギフテッドが集まる、ギフテッドしかいない学校です。

佐藤あずさは以降、達川颯斗の行方を知りません。

----(ネタバレあり)----

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日本人なら知っておきたい花48選 ~花の履歴書~

96冊目
図鑑+エッセイみたいな本です

タイトル通り、日本に馴染み深い花48種類の紹介がされている本になります。
花の紹介ページには種類ごとの写真がはられてあり、作者によるその花に対してのエッセイ、さらに最後の方には育て方のポイントまで書かれてありました。

紹介してみるとそれだけなのですが、花の本という特別な感じがなんともいい読後感をもたらしてくれます。
読み終えた頃にはきっと、豊かな気持ちにさせてくれることだろうと思いますよ。

(ネタバレありとありますが、今回も気になった所を上げていこうと思います)


---ネタバレあり----

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アガサ・クリスティー賞殺人事件

95冊目
受賞作品かと思ったらタイトルなんですよね

この本は5つの編で成り立っています。それぞれあらすじを書いていきます。

『やわらかな密室』:主人公は失意に襲われて旅に出た。旅先は青森、なんとなく恐山を目指していた。そんな主人公の予定とは裏腹に、恐山は現在閉山していると知る。やや落ち込んでいた主人公だが、そんな主人公の元に青年が声をかけてきた。青年は酒蔵をしているらしい、主人公も無類の酒好きだということもありついていくことにした。

『炎の誘惑』:主人公がタクシーに乗っている時、気になる話を聞いた。どうやら泊まれる寺があるという。主人公は「ビジネスホテルで泊まるよりもおもしろそうだ」とそちらに行くように運転手に伝え、ついた頃には寂れた寺が目の前に現れた。主人公は不安に思うのだが、そんな不安を吹き飛ばすほどの気楽なお坊さんが出てくる。ここで主人公は一夜過ごすことになった。

『蛇と雪』:主人公がバスに乗っているとき「兄さん……」と声をかけられる。振り向いてみればまるっきり雪のような女性がこちらを見ており、無意識に声を出したことを主人公は女性に伝える。女性は「お兄さんも黒い服を来ていたので」など言いながら、その兄のことを少し話した。それで終わりかと主人公は思っていたのだが、バスから女性が降りるときに女性は足をくじいてしまう。気をきかせた主人公は女性を家まで運ぶことにした。つい先程の話題が続き、お兄さんのことを話しながら。

『首なし地蔵と首なし死体』:首なし地蔵がある地域にて、首なし死体が見つかった。犯人も捕まり、けれども低俗なマスコミが多少騒いでいる。主人公はそんな曰くつきの場所だとつゆ知らず、「首なし地蔵」が気になってこの場に訪れる。けれども実際には首なし地蔵など訪れた日に公開しておらず、辺りを巡っていると、老婆と立ち会った。老婆はここら辺りを詳しく知っており、いろいろ話してくれるのだが。

アガサ・クリスティー賞殺人事件』:主人公も呼ばれているアガサ・クリスティー賞授賞式のこの日、谷松刑事は面倒な気持ちで部下の竹田とともに代理出席をしていた。作家のパーティーで浮かれる竹田を横目に谷松は浮かれるのも癪だ思っていたのだが、賑やかな雰囲気にやがて飲まれて、それなりに楽しんでいる頃のこと、男性が慌ててこの部屋にやってきてから言う「有栖川有栖が死んでいる」と。


----(ネタバレあり)-----

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図書館ドラゴンは火を吹かない

94冊目
それは温かくも切ない物語

この物語は様々な方面から語られる物語です。
骨の魔法使いに拾われた少年の話、孤独だったドラゴンの話、天才的な才能を持つ踊り子の話……など、いろんな方面で物語が進み、それぞれが交わるのかと思えば、(交わるのですが)物語が一つ終わった前や後だったりもします。
よって結果がわかったうえで展開を眺めることになったり、気がついたら過去編を眺めることになったり、と忙しい作品でもありましたね。
それでも基本的な展開(ユカという少年の旅)は変わらず、それらを眺めながら話は展開していきます。

いろいろ書きたいですが、あらすじを書くことができないような、難しい本でした。
ただ愛された物語だなぁとは思いました。

この本は「小説家になろう」発なので、なろうを読むなり公式サイト読むなりしたほうが早いと思います。

小説家になろう:図書館ドラゴンは火を吹かない
公式サイト:図書館ドラゴンは火を吹かない



----(ネタバレあり)-----

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フォア・フォーズの素数

93冊目
ジャンル多種多様の短編集

竹本健治さんによる短編集です。
短編集とだけあってあらすじを書くのも難しいので、それぞれ一言ずつ紹介していきます。

『ボクが死んだ宇宙』:夏から逃げて宇宙船に乗った男子と女子の話
『熱病のような消失』:パレードの人混みを渡クンと駆け抜ける話
『パセリ・セージ・ローズマリーそしてタイム』:熱い夏の日に小父から聞かされたことを子供がなんとなく察する話
『震えて眠れ』:隙間恐怖症の男性の話
『空白のかたち』:寝てしまうと記憶が消えてしまう男性が自分で書いたノートを読む話
『非時の香の木の実』:タイムリセットを見つけた青年の話(※注意 エログロあります)
『蝶の弔い』:蝶の標本する様子を興味深そうに見ている少年に標本のやり方を教える話
『病室にて』:病室にて考える男の話
『白の果ての扉』:辛いカレーを作ることに情熱を燃やす男の話
『フォア・フォーズの素数』:4を巡る数字遊びに没頭する男の子の話
『チェス殺人事件』:チェスのプロが殺された事件に挑む天才囲碁棋士青年の話
メニエル氏病』:宇宙船に取り残された男女、そのうち男がなんとか帰る方法を見つけようとする話
『銀の砂時計が止まるまで』:ひとりぼっちの星にいる男子トキのもとに不時着したネコという女性がやってくる話

そんな感じですかね。基本、不思議で難解な小説ばかり(個人的主観)なので、一度開いて読んでみるといいかもしれません。


----(ネタバレあり)-----

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零戦神話の虚像と真実 零戦は本当に無敵だったのか

92冊目
空戦のリアルとは

タイトル通り零戦神話について考察された本になります。
注目すべきは、対談という形で書かてれある、その対談している人達にあると思いますね。
まず清水清彦氏は歴史研究家(本業は金融法務の弁護士らしいです)であって、おもしろい独自の説を唱えたりする新鋭研究家らしいです。読んでて分かるのですが、彼は戦争について(今回は戦闘機について)とても詳しいんですよ。詳しすぎてこちらが「プロかな? プロだろ」と思ってしまう程です。
もう一人の渡邉吉之氏は、防衛大学を経て航空自衛隊に所属していた人物ですね。F-4EJ戦闘機やらF-15J戦闘機やら、それからグライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種以上乗ってきた空のエキスパートみたいな人です。彼は清水氏が見落としている部分や、空の人である彼が「飛んでいる時の考え」などわかりやすく言ってます。たまに先人たち(彼が聞いた零戦乗りの人たち)の話が出てきたり、つまり生きた証言を話してくれます。

そんな二人が互いに談笑しながら「零戦神話」について一つ一つ、いろんな方面で話しているのがこの本ですね。

(ネタバレありとありますが、今回も気になった所を上げていこうと思います)

----(ネタバレあり)----

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