とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

アスペルガー症候群と高機能自閉症 青年期の社会性のために

41冊目
アスペルガー症候群について書かれた本ですね。
僕自身アスペ持ちなので、なにかと役に立つのではないかと手に取りました。
本書は中級編とあるように、どうやらアスペルガー症候群発達障害)に対して書かれた本の二冊目らしいです。(なお、一冊目については「続きを読む」の先に詳細貼っておきます)
※現在はアスペルガー症候群ではなく自閉症スペクトラムと呼ばれていますが、ここではアスペと表記します。

中級編とあるようですが、全くわからない専門用語が並ぶわけでもなく初心者でも十分に読めるようにはなっていました。ただ、アスペルガー症候群やら発達障害やらをある程度知っている人向けに書かれているだけあって、前知識があればなお深く読めると思います。
本書の内容は、発達障害と関わってきている先生たちのコラムが並ぶような形です。各方面、いろんな子供たちが現れては問題行動を起こし、それら解決するためのプロセスや方法、対策など具体的に書かれていますね。
その様子を例えるなら、教育奮闘記というよりも、ニュースを眺めているような感じでしょうか。もちろんドキュメンタリー並の成長を感じることができます。しかし、僕が言うなら、発達障害の教育最前線を眺めているような感じではあるように思いました。(2005年の本ですけどね)
僕が読んで思ったのは、発達障害に関わりある人は読んでもいいんじゃないかなということです。
特におすすめしたい人を挙げるなら、発達障害の子供を持つ親(ある程度発達障害の知識がある)、教育者(特に小中学校の教員)になります。特に教育者は必読と言っていいほど、読んで損はない本だと思いますね。

(今回もネタバレありとありますが、この先は個人的な感想を書いてゆきます。今回は雑記に近いかな)



-----(ネタバレあり)------



フラッシュバック
僕自身アスペ持ちであって、この本に残っているさまざまな(子供たちがする失敗)事例とは、どれも胃を痛めるのには十分あった。
僕の過去の過ちとは、今よりも精神が未熟だったからこそしょうがないとはいえ、その黒歴史を挙げては反省してゆくのは傷口をえぐるようなものなので、心のなかに収めて終わっておきたい。
ただそれら事例を見て思うことといえば、教育や意識などあの選択は悪手だったなぁ……という後悔が多かったことだろう。本を読むだけなのに、羞恥→落胆→後悔、これらのループを何度もした。そして考察もした。
考察の一つとして、僕は通常の学級に在籍していたのだが、この本を読むなり障害児教室に移籍しても良かったかもしれない。と、思ったりした。そうなればどうなる? きっと今とは違う性格になっていただろう。それはいいのか悪いのか? それは今となっては僕にはわからない。考えてみると、後悔はあるが、後悔はない、そんな不思議な気持ちになる。

想像力の欠如
アスペと診断された時、「想像力の欠如」という単語を見た。僕自身、想像力はある方だと思っていたし、アスペの特徴に「ファンタジーの世界に入り込む」というのもあって、「想像力の欠如」はないものだと思っていた。
しかしその「ないものだと思っていた」こそが「想像力の欠如」だということがあり、目から鱗が落ちた。とはいうもの、作中ある藤家寛子の手記『アスペルガーとして生きてゆく』にて、これについて書かれてあったのである。
一言でいうと、「一つのことを深く考える思考の流れ」だろうか。手記にある彼女の思考の流れ、思考プロセスというのだろうそれが、僕のそれとよく似ていて、「それこそがアスペ特有の考え方なのか」と驚いたものだった。
ここで気になるのは健常者の考え方である。まぁ、これは別の本を読みながらゆっくり考えてもいいかもしれない。

関わるということ
作中に出てきた発達障害の子供たちは、環境が悪いこともあるが、恵まれた人に救われてそれなりに成長する姿がよく見られた。個人的に気になった発達障害者への援助は、発達障害者同士で過ごす合宿である。発達障害同士となればもうめちゃくちゃになりそうという想像したように、めちゃくちゃに衝突している様子ではあったが、やがては仲良くなり、次第に互いの得意不得意をアシストするまでになったと書かれてあった。僕は素直に「いいな」と思った。
僕も子供の頃そんな環境に入ってみたかった……と過去を振り返る一方で、やはり人と人が基本であり大切なのだと痛感した。

青年期を迎えて
手記を書いてた藤家さんもそうだが、僕も青年期になってアスペと診断された身だ。だからこそ今までの幼少期、小学中学と対策が書かれてあって、「(それらは)もう通り過ぎてる」となかば絶望したながら読んでいたのだからこの最後の章は希望だといえる。
これからどうすればいいなど具体的な解答はないが、「精神保健福祉センターと保健所のデイケア」や「アスペ・エルデの会」などおもしろそうなキーワードを見た。所属するまではいかなくても、似たような悩みを持っている人を眺めるだけで安心できるのは発達障害同士も同じなようで、僕も未熟な部分の発達を求めに行くのはありかもしれない。
この最後の章は似たような奴らだからこそ、作中に書かれた彼ら彼女らの成長する姿は眩しいものがあった。

【まとめ】
この本の感想は、私情交えたものならきりないと思います。なので内容の全体的に掴むような、ざっくりとした感想になりました。
この本を読んで大なり小なりいろいろ考えたりしましたけど、大きく分けて「想像力の欠如」「関わるということ」「青年期を迎えて」の三つが大きく思ったことでしたね。それ以外は、僕以外の「(幼き発達障害さんを受け持つ)教員が読むべき」と行き場のない黒歴史を思い返すような苦い感情と、怒りみたいなものに揺さぶられるのみでした。
ところで途中、発達障害の脳に関するコラムでありましたけど、情報は絶えず変わるのだなと思いました。水銀の影響なんちゃらは聞いたことがあり、読んで「こんなのあったな」と思い返すほどです。こういう関連の話題はすぐに情報に踊らされたりするので、何事にも「情報を知る」ところから始めないといけませんね。(自戒)

これが入門書と言われてる前作です。

あと作中おすすめされてた参考資料など。
自閉症だったわたしへ (新潮文庫)

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自閉症の才能開発―自閉症と天才をつなぐ環

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