とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う

141冊目
ちゃんと税金払っていきましょうね

一時期話題になった「パナマ文書」が主題の本になります。

パナマ文書についてはテレビなどでご存知の通り、お金の流れなどが記された書類のことで、今回これだけ話題になった理由は「世界4位の法律事務所」「過去40年分という膨大な書類」「世界の富豪などが利用していた」など要因がありましたよね。

上の要因を見ているとわかるように、パナマ文書に記されていることは(タックスヘイブンしようが)別に違法ではなく、やや違法よりの節税方法といったところとがわかります。むしろ賢い方法だと言えるかもしれません。
ただそれでもここまで問題になっている理由もあり、その理由はこの本を読んでいれば「これは違法」という風に感じることができるでしょう。

この本ではパナマ文書によって動き出した日本と世界の動き、変わりつつある世界のシステムや取り組みなどを紹介していく本になります。
金融に対してそれなりに詳しい方だと「あぁ、あの事を言ってるんだな」という風な内容ですが、僕みたいにあまり詳しくない人からしてみれば「この文書がここまで大きな影響力を持っているのか」と驚く本になりました。


※ネタバレありと書きますが、今回も気になったところを挙げていこうと思います。

ーーーー(ネタバレあり)----




用語の確認
いろいろな単語が出てきたので個人的な復習もかねて用語を振り返ってみます。

パナマ文書オフショア金融センターを利用する企業や人の取引情報(40年分)。容量なんと2.4テラバイト。
・オフショア:金融では「非居住者向けに(外国人向けに)作られているサービス」を表す。オフショア金融センターとなると「外国人向けに作られた金融センター」ということになる。
※外国人向けにということは、「外国人からお金をもらえるように(外国人の出資者を)優遇すること」であり、「自国よりもここに預けた方がいいというメリットを出している」ということでもある。わかりやすく言えば「低税率だったりする」とか。
タックスヘイブン:「租税回避地」のこと。大金に向けられる「大きな税金」から逃れるために使われる場所のこと。
モサック・フォンセカパナマにある法律事務所。ここの事務所の機密情報が流失した。
・SDNリスト*1:世界共有の金融ブラックリストみたいなもの。このリストに入ると「通帳つくれない」「企業と取引できない」「飛行機のれない」など制裁が(世界レベルで)下る。
マネーロンダリング:「不正に集めた大金を分散させていろんなところに預ける」ことを指す。
・FATF*2:「金融活動作業部会」という金融の不正など見抜く国際機関。35か国と2つの地域機関が加盟しており、テロ対策や租税回避行為など幅広く取り扱っている。
・JAFIC*3:「犯罪収益移転防止室」という、FATFの日本部隊みたいなもの。昔は金融庁内に作られていたのだが、2007年に警察庁に移管された。

間違ってるのがあったらメールやTwitterとかで教えてくれるとありがたいです……。

タックスヘイブンを利用する人々
オフショアとして英領バージンやルクセンブルクとか選ばれて、そこに儲けたお金などを預けて(あるいは経由して)税金を免除する方法が紹介されていました。
その過程で契約する(手続する)事務所がモサック・フォンセカなど法律事務所などにあたり、法律事務所は適当に電話をかけるだけで大金が動く仕組みがあったそうです。すごいですね……。
こういう仕組みについては、一見「どういうことだ!」と思うのですが、読んでみるとその大金が動くおかげで経済が回っているといっても過言ではなく。もっといえば正しくタックスヘイブンを利用している(投資ビークル)人たちもいるわけで、一概にはい規制とできるものではなさそうでした。
まぁでも、その「優遇している」状況を甘んじることで、世界の悪いことを考える富豪たちに利用され続けていたと考えるとよくないものに思えます。こういうのは考えものですね。

大企業もタックスヘイブンを利用して
富豪など個人がする分ではいんですけど(よくないですけど)、その節税方法を世界レベルの大企業もしているようで、その規模の大きさたるやとても大きな問題のようでした。
タックスヘイブンしている企業の例を挙げると「Google」「Amazon」「Apple」などがそれにたり、これらの企業は「実は本社は別の場所にあるんやでー、そこで税金を払っているからいいんやでー」みたいな感じで、本来払うべき税金(日本やアメリカなど世界各地の税)を免除しているのが明らかになってきています。あれです「Amazonは日本に税金を払っていない」など聞いたことがあるかもしれないあれです。
その節税について合法か違法かと言ったら「グレーの合法」かもしれませんが、少なくともその世界を制す企業レベルでめっちゃ稼いでいるのに儲けさせてもらってるその国の税金払わないのは卑怯だよな、みたいな感じで問題になっています。問題はじわじわ大きくなっているようで、近くこれらの企業に膨大なお金が請求されるかもしれませんね。

タックスヘイブンの始まり
このタックスヘイブンを使った儲け方(世界中からお金を集めやすい状況にしてお金を集める方法)というのは、元はイギリス(大英帝国)が使っていた方法だそうです。大英帝国が覇権国だった時代、世界中の植民地各所にシティ(イギリスの主要金融場所)の子会社を置いて「金融活動を円滑にするため、ここで税務管理や手続きなどの処理をやってあげるよ」など言って、海外で働いてるイギリス人の税務管理や手続きを手伝ってきました。そしてそこで「手数料」を受け取りイギリスは潤ってきてきたのだそうです。
この関係がタックスヘイブンとなんの関係あるのかというと、その植民地では少なくとも「(別場所だというのにイギリスの税金処理ができるよう)法をイギリスに合わせている」はずで、イギリスもそれを利用して「その子会社で税金の支払いを完了させたら、今いる国での税金を免除するやで」という決まりを作ったからほかなりません。
よって現在タックスヘイブンとして利用されている場所は「香港」「シンガポール」「ケイマン諸島」「パナマ」「英領バージン」「マン島」など元は大英帝国の植民地や自治領がほとんどなんだそうです。

イギリスと中国
上に「香港」があるように、イギリスと中国は密接な関係も持っているそうです。
国際通貨*4というものがあるのですが、この国際通貨に選ばれたいという国もあって、それが中国だったりします。
この中国は現在ドル(香港ドル)に一度変換しないと決済できないなど、お金を動かすにおいて面倒なことがいくつもあり、それに加えて「国際通貨を自分の国で刷りたい」なども理由に「人民元を国際通貨にしたい」という思いが強いそうです。
同じくイギリスも「人民元を国際通貨にできたらいいのに」と思っている国であり、理由は自分が掌握している香港を窓口に利益を求めることができること、加えて香港中心に金融システムを稼働させることで大英帝国が世界を制した時代のように、あわよくば世界を制する金融システムを作りたいと思っていたとかなんとかでした。
しかしその志半ばで、パナマ文書という情報が洩れてとても厳しい立場に追いやられているようですが。

パナマ文書によって混乱する人々
イギリスと中国には残念なことですが、このパナマ文書とは人民元を国際通貨にできない致命的なものとなることになるだろうと読んでて思いました。
この人民元を国際通貨にしようと動いている派閥はキャメロン首相の下にいるオズボーンという人なのですが、そもそものキャメロン首相がパナマ文書に乗っていると報道があったんですよね。ただでさえ貧富の格差が大きくなっている時代なうえに、イギリス内でも反中国の人たちが少なくありません。よって支持率はダダ下がりでしょうし、それでいてキャメロン首相が失脚したら次につくのは仮に反中国派だとしたらもうオズボーンの計画はだめになります。
一方で中国側も共産党員の名前がパナマ文書にけっこう乗っていて、まだあんまりわかってないですが中国でのお金の流れ(賄賂など)が見えてくるのではないかとかいてありました。
そしてそういう不正などが明るみに出たすれば、中国は信用ならない(人民元は信用ならない)となり、さらに国際通貨への道が遠のくわけです。
ちなみにですが、中国でパナマ文書に乗っている人たち(脱税していた人)がいたとして、その人たちに批判が集まっているのではと思えば、そうではなく、中国はパナマ文書についての報道規制をしているとかなんとか書いてありました。

グローバリズムグローバル化してしまったこと
日本などではグローバル化など言われて久しいですし、憧れの企業として「Google」や「Apple」など挙げられるのををよく見ます。実際にGoogleの検索機能は優秀ですし、appleのパソコンはおしゃれでかっこいいと思います。Amazonだってよく使います。
ただこのグローバリズム(各国のものを自由に売り買いできる状態)というものは、格差を広げただけであり、さらに言えば「各国を売り買いする状態」を利用して「うまく税金を払わないようにする方法」が広まってしまったという事実もあります。その国で儲けたのに本来払うべき税金をその国に支払わないというのは、利益のために国を衰退させていることほかなりません。
これに疑問を持った人々は多く、現在そういった反発が各所に現れてきています。イギリスのEU脱退とか、ちょっと前に決まったアメリカ大統領選挙のように、グローバリズムをやめて自分の国を守ろうみたいな動きがちらほら見えてきています。
ある意味で、今は一種の転換点なのかもしれないです。資本主義は変わらないと思いますけど、資本主義のバージョンアップ的な出来事が起こりつつあるのかもしれません。

これからの日本について
パナマ文書が流失して日本はどうなるのかというと、上に書いたSDNリストを利用して「暴力団などの撲滅」とかしながら「脱税していた人達への取り締まり」あと「法を整えてる」とかなんとかでした。この本の書かれたころでは決まってないですけど、最近決まった「共謀罪」もその一つだそうです。
「テロを未然に防ぐ取り組み」が始まりつつあるようです。同時多発テロで動き出して、2015年のパリ同時多発テロで優先順位が最高に上がったみたいです。マイナンバー制度もそれらに影響を受けて急ピッチで動き出し、もうほぼシステムは完成しているんじゃないでしょうかね(知らないですけど)。
ちなみにですが、このマイナンバー制度というものがカギとなり、さまざまな個人の照合に当てはめられるらしいです。それなりに普通に生活している人ならちょっと手続きが面倒になる程度かもしれませんが、在日の人々、裏金を渡している人々、あるいは反政府勢力、など大きな影響を与えることでしょう(多分もう与えられている)。

【まとめ】
素朴な疑問なんですが、2.4テラバイトの流失って流失っていうんですかね。
なんていうか、こう、流失というイメージからしてみればせいぜい数ギガ、多くて数十ギガ程度のものでして、「機密情報流失! しかも2.4テラ!」ってもうそれ流失ってより雪崩とか土石流とかじゃないですかね……。
2.4テラ流失させるの準備だって結構必要だったと思います。十数ギガのコピーだって大変ですから、2.4テラなんて一度でできることじゃないですよ……しかもそれをバレずにやったというのだからすごい。
ときにパナマ文書にはアメリカの富豪の名前がほとんどない*5らしく、一部パナマ文書については「アメリカの陰謀だ」とか言われてるらしいです。

*1:SDN(Specially Designated Nationals and blocked Persons)

*2:FATF(Financial Action Task Force)

*3:JAFIC(Japan Financial Intelligence Center)

*4:世界中で使われている信用できる通貨

*5:理由は主にアメリカ内、ネバダ州にオフショアがあるから、海外のタックスヘイブン使う必要がないため