とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

天才たちの値段

26冊目
これも特に理由なく手にとった作品です。
手にとった理由を強いて言うなら、ちょうどいい厚さと、ちょうどいい大きさの本、あとタイトルでしょうかね。
そんな簡単な理由でした。

天才たちの値段

天才たちの値段

大学に務めている主人公の佐々木昭友と、美術品の本物を見分ける能力を持つ青年の神永美有によるミステリー本です。
本物か偽物か半信半疑のまま絵を買う男の話や、不思議な地図の話、見たこと無い涅槃の絵の話、フェルメールを巡るディベートをする話、骨董品収集を楽しんでいた人が残した遺産相続の謎を解く話がありますね。
どれも美術に関することばかりであり、知的な余談も交えながら美術に関わりつつ謎を解いてゆきます。
あまりにマニアックな美術知識も登場するので、知識人が読めばなお一層面白くなると思いますよ。
物語の形としては終始、神永の手の上に踊らされている佐々木を眺めるようになりますね。


------(ネタバレあり)-------



佐々木昭友
神永に翻弄されっぱなしですけど、かなりの勉強家ですよね。なんかよくわからない分野にぶち当たっても、なにかしら一晩で調べあげ、それなりの答えを導き出しています。いい線いっていること多いものの毎度のごとく神永に痛いところ突かれて、論理が覆され赤っ恥をかいているような印象を受けました。
なんだかんだグチグチいいながらも、調べて、恥をかこうが好奇心でカバーするわりといい人なのだと思います。
生徒から威厳ある態度を取ろうとするのですが、それなりに失敗をしているんですよね。あんな状態から、物語最後の『遺書の色』にて准教授に抜擢されるなど、真面目な仕事ぶりが伺えます。
中には尊敬の念を抱かれる生徒(安納さん)もいるようですが、それすら神永に花を持たせられているんですよね……。
いやね、佐々木の思いでを蘇らせたとしても、それはだいたい神永にいいところ奪われちゃってるんですよ。いい人なんですけど、なんだか、だって、最後の最後で青の箱を選ぶのも神永の影響ですし……。

神永という青年
不思議な青年でした。おそらく佐々木より年下になるだろう年齢に、無職という状況、後は歳相応ではない余裕などありました。
この人物のおもしろいというかすごいのは、美術品に対する知識と閃きはもちろんのこと、意味がわからないぐらいに先読みをして、かつ効果的に動いているという点です。恋愛コンサルタントと言わんばかりの活躍も見せれば、父親と息子の仲直りのようなことを演説風に解説したりとか、清水を出しぬいて佐々木に青い箱について助言したりとか、作中ほとんどで「全てお見通しだぞ」と言わんばかりの言動なんですよ。
この神永の推理ようすとしては、まんまシャーロック・ホームズでした。ホームズほど謎に執心することはなく、飄々としている様子ではありましたけど。
それに彼は特殊能力を持っていました。知る近い表現で言えば、共感覚でしょうかね。共感覚といえば、音や色、数字までも甘さなど感じる程度あるとは知っているものの、その対象が偽物の名画など判別となると果たしてできるのかどうか難しいところではあると僕は思います。
しかし神永の父親は美術本を集めている人でした。神永は幼き頃からそれらの本を見ていれば、好奇心によっては恐ろしいほどの知識を蓄えて、どんな絵を見ても要領はつかめるような青年になっていてもおかしくはありません。そして、その美に関する感覚が共感覚となれば、本物に対して「甘い」と感じることもなきにしもあらずですかね。天才は想像の上をゆきますから。

登場する美術知識
美術知識のさわりだろうが、僕ごときが分かるはずもなく終始ポカーンでした。これに関しては無知な僕が悪いのです。知識人が読めばこの作品はおそらく、三倍から四倍ぐらいおもしろくなると思います! 三倍から四倍ぐらいおもしろくなると思います!(二回目)
ときに、そんな僕でも辛うじて名前程度を知っていたのはダ・ヴィンチとモラエス、フェルメール、あとはランベルトですかね……まじで本当になにも知りませんよ。金の糸で編んで作ったキャンバスなど、おそらく創作も多々混じっているのでしょうけど、それが判別できないのが悔しいです。作中の解説に「ねーよ」という架空の論理もさらっとありそうなんですけどね、残念ながら一つ一つ挙げて考えることはかなわそうです。
いやぁしかし、世間ではこんな難しい本をミステリー小説として読んでいるのでしょうか。僕も『日曜美術館』みなきゃ。(使命感)

個人的に好きだった話
『天才たちの値段』『紙の上の島』『早朝ねはん』『論点はフェルメール』『遺言の色』それぞれ特色があり、展開としても佐々木が翻弄されて、神永がまとめるという一定のパターンがあったものの、個性があふれる中編ばかりでした。
個人的に好きだった話は、『早朝ねはん』でしょうか、それに半歩後ろで『紙の上の島』かな。
『早朝ねはん』については、佐々木の推理に「へぇ」と言わんばかりに思っていたのですけど、神永の「これ横にするんですよ」の一言で仏教からキリスト教に変わる瞬間がたまんないです。僕としても騙された一人であり、佐々木としてもびっくりしたと思います。そりゃ、安納も宇津木さんも左門さんも、お釈迦様がエアロビクスしてなかった衝撃はすごいことになっていたと思いますよ。
『紙の上の島』は、やっかいな姉妹(厄介なのは片方だけ)と地図を巡る話題でした。オチといえば、結構シンプルで、遊び心がある人による地図だったというものですけど、美術品を扱う推理モノであえて地図を推理するという部分が面白かったです。展開としてもわりと好みでした。そういえばこの編でも佐々木は神永に一本とられていましたね。
なんというか、やはり、『論点はフェルメール』にしても『遺言の色』にしても展開としてはおもしろいんですよ。けど、僕が無知なせいで、途中でてくる美術用語がどうしてもポカーンなんです。これこれがこう、なんてことは、どれも想像のみなのがやはり残念でした。

まとめ
正直、この作品も感想を書くに困ってしまいました。なにせわからない単語だらけだったので。
共感覚にちなんで僕がこの作品を味というか、料理で例えるならば、パスタですかね。
僕が無知なせいでよくわからないパスタ(なんかいろいろ入っている)をイタリアンで食べている感じでした。おいしいんですけどなにが入っているのかいまいちよくわからない、海産物なんだけど、貝の名前がわからない、エビみたいなのも入っている。ついでにおいしいシャンパンと合うんだけど、銘柄がわからないみたいな。知識がないがゆえ、なにもわからいまま楽しみ半減で食べ終えてしまいましたみたいな。おいしいんですけど、食べ終えてしまえはあっけないもので、「こんどイタリアンを食べに来た時は原料のことをちょっとぐらい知っておこう」と店を出ながらと思っているみたいな。(わかりにくかったらすみません)
それを踏まえても「おいしいものだった」といえるほどには僕も感想言えるわけで、もしほかに読む方がいれば、僕の代わりにもっと知的で解説付きの感想書いてください。お願いします。
どうでもいいですけど、こういう作品にこそ「挿絵があるとより楽しめるのではないかな」とか思いました。作中挿絵があるさまをちょっと想像しましたが、有名な画家の、架空の絵を書くことになるイラストレーターさんの負担が大変そうなのでやめた方がいいです。

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