とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

クラゲの不思議 全身が脳になる? 謎の浮遊生命体

127冊目
クラゲとかいう謎すぎる生命体

クラゲについて書かれた本になります。
内容のレベルは一般人向け、あるいはすこし賢い子供向けに書かれてあるように感じました。
とはいうもの、たしかに大人向けにも書かれてあるように感じましたが、読んでいくうちに「これ好奇心持った子どもが読んだら盛り上がりそうだ」と思ったからです。終わりのあたりにクラゲ採取の方法など軽く触れてたりするので、クラゲについて知りたい子どもとかいいと思います。

さて内容については、クラゲの生体についてざっと触れた後に、クラゲの中でも代表的クラゲである「ミズクラゲ」の生体について書かれてあります。
個人的には興味深い内容でしたが、それなりにクラゲに知識がある人なら物足りないかもしれない、というほどの知識量かもしれません。
まぁそういう方たちは、この本の最後にある参考文献なんか読み漁ればいいのではないでしょうか。


※ネタバレありとありますが、個人的に気になったところを上げていこうと思います。

-----(ネタバレあり)-----

クラゲの体について
地味な発見なのですが、クラゲにある「触手」と言われると、想像するのはクラゲのあのひたひたに伸びているあたりなのではないかと思います。しかしあの場所は「口腕」といわれ、食べ物を口に運んでくるなどする腕なのだそうです。
ちなみにですが、その「口腕」の奥には「胃腔」と呼ばれる口みたいなものがあり、そこは食べ物を食べるほか老廃物(うんち)を吐き出したり、精子を取り入れたり(メス)……など、だいたいのすべての出入り口になります。
さて「触手」のほうですが、クラゲの「傘」の周りにくっついてるのが触手です。こちらは獲物を捉えるため(あるいは攻撃するため)にあるそうで、触手で絡め取った獲物を口腕を使って食べるのです。
まぁ「口腕を含めて触手だと思っていた」ぐらいの話題だったりします。

いろんな時代がある
僕らが想像する「クラゲ」の姿はいわるゆる、有性生殖する「クラゲ世代」だそうです。それは文字通りクラゲの姿で、クラゲのメスとオスが受精する世代だということです。
そしてもう一つがあって、それは無性生殖する「ポリプの時代」です。
ポリプと言われて何なのかわからない人が多いと思いますし、なんなら僕もそんなわからないのでなんとも言えませんが……こう菌類が伸びているような感じ? みたいなものがポリプです(もはやググってもらうほうが早いと思います)。
そのポリプ時代というのは、自分の分身(クローン)を作ったり、遠くに種を飛ばしてみたり、など色々します。まぁそんないろいろクラゲの時代が巡り巡ってぐるぐると循環しているから、あんな見た目弱い生き物でも長らく(クラゲは5億年前から姿が変わってないらしい)生き伸びれたということです。
ところで、このポリプというもの、この本を読んで初めて知ったんですよね。読んで思ったのは「SFかよ!」でした。

クラゲの一生
個人的に「そもそもクラゲってどうやって増えるの?」という疑問がテレビを見てるときなど持ってたりしました。その答えがこの本位かかれてあり、ここで(今後わすれないように)クラゲの増殖と一生についてざっとまとめてみようかと思います。
※ここにあるのは「ミズクラゲ」の話です

まずあのクラゲを想像してみます。クラゲがふわふわと海中を漂って、見渡す限りたくさんのクラゲが浮いています。この大量な集団行動にてオスのクラゲがメスのクラゲに受精を試みようとしました。
ここで気にしてほしいのはクラゲが「集団になっている」ところです。クラゲの集団というのは想像ができるとはいえ、あのふわふわした生物が果たして、海流にのって集まることができるのかって話ですよ。この本にかかれている内容によると、「(そもそもあまりわかってないそうですが)潮が接してたりぶつかったりする潮目に積もる形で集まっている」というそうです。

さて、集まったクラゲは有性生殖(受精)とかします。それで子孫ができるわけですが、その卵みたいなものは生み出されたときから卵割が始まり、半日程度で「プラヌラ」になります(プラヌラがなんなのか詳しく知りたい方は各自ググってください)。

ミズクラゲの)プラヌラは大きさ0.2mmです。その小さなプラヌラには周りに繊毛が生えており、繊毛を動かすことによりほんの少し動くことができます。そして海水に流されながら、生活する場所を探します。
やがてプラヌラは「ここだ!」という場所を見つけると、その場所にまるで植物の種のように降り立って(着生)「ポリプ」になります。ポリプになるともう自在に動けないので、ポリプになる瞬間はいわば命がけのイベントのようなものになりますね。

ある場所を選んで付着したプラヌラは、「付着した」ということが劇的な引き金となって変態をはじめます。洋ナシ型の身体を上下に伸ばしたり縮めたりしながら、最初に口ができます。そして次に4本の触手、さらにその間からも触手が伸びて8本となり、さらにその間からも触手が伸びて16本となり、次第にイソギンチャク状のポリプへと変態していきます。(後略)

引用してて思ったのですが、ポリプについてイメージしやすいのはイソギンチャクになりますね。ただそのイソギンチャクはとても小さいですが(およそ1mm)。

かくしてプラヌラはある場所でポリプになりました。ポリプはその場で口を開けるようにして、栄養を取っていきます。このポリプはオスもメスもありません。栄養を取ったらとったらその場で分裂して、いわば自分のクローンを作っていきます。

そのままクローンを増やしていってもいいのですが、時期が来たら(だいたい餌がなくなる時期)、クラゲも「このままここにいたらダメだ!」とポリプは「ストロビレーション(横文体形成)」ということをします(もうググってください)。ポリプを縦長に伸ばして、分裂させて……こう、いろんな種子を飛ばしてゆく準備みたいな感じです。そして種子そのものはコスモスのような形をしていて「エフィラ」と言います。

エフィラは海中を漂って、やがては「クラゲ」に変わってゆきます。これが僕らがよく見るクラゲです。

ここまでがクラゲ(ミズクラゲ)の大体のサイクルになりますね。

クラゲは腸であり心臓であり脳である
不意に気になるのが「食べた栄養をどうやって全体に運んでいるのか」というところです。
クラゲの水分は95%という「ほぼ水」だという状況を踏まえても、どうやって運ぶのかと思えば繊毛運動で全身に行き渡らせるのだそうです。加えて、繊毛運動だけでは届かない範囲をクラゲは「動く」ことで解消するのだそうです。つまりあのクラゲのゆったりとした動きはさながら人間の心臓のように動いているというわけです。つよい。

ときにポリプの時代に「共食い」ということをすることがあります。
共食いってだけで生存戦略として、厳しい環境を生き延びている感じがある雰囲気を感じさせますが、この本読んで驚いたのは、ここでの「共食い」というものは「自分のクローンではないものを選んでいる」という実験結果があったということですよ。
つまり自分と他者を見分けて判別しているということなんですよ。マジですごい。
(これは「オーストラリアウンバチクラゲ」の例ですが)このクラゲにに発信機を取り付けて動きを追跡したところ、クラゲは昼間よく動くことに対して、夜はほとんど動かなくなることがわかったそうです。これはいわゆる「睡眠なのではないか」ということになっているそうですね。

(前略)ということは、クラゲは進化の過程で眠ることを獲得した初めての生き物となります。

頭を使うのだから眠るのは普通に納得できるとはいえ、こう言われると驚きますよね。

【まとめ】
ふわふわと可愛いクラゲの生体は意外なほどわかってないそうです。
日本は日本に研究家がいるため「日本のクラゲ」は多少は分かってきたものの、たとえば中南アジアなどはまだあまり調べてないために新種もまだあそこにいるのではないかと噂されているらしいですよ。
とはいえ僕レベルに話を落としてみると、クラゲに「ポリプの時代」ってのがあるのがまず驚きです。いつも僕らが水族館で見ているクラゲは知らず知らず「クラゲの時代」を見ていたということになるんですよね。たとえば水族館でそんなことを思いながら眺めてもたのしいかもしれません。