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とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

亀裂

阿刀田高 高橋克彦 荒俣宏 景山民夫 鈴木光司 綾辻行人 山崎洋子 ホラー小説

58冊目
7人の作家さんによる7作品が収録されたホラー小説です。しかし、アンソロジーだとタグ増えてしまいますね。

亀裂 (角川ホラー文庫)

亀裂 (角川ホラー文庫)

7人の作家さんの作品が一気に読める贅沢なホラー小説になります。どれも短編集なので(内容は気軽じゃないかもしれませんが)、気軽に読むことができますよ。
内容につきましては、ホラー小説なので詳しく書くのも味気ないかなと思います。というか、短編集なので読んだほうが早いと思いますよ。
しかしけれども投げやりの紹介もあれなので、それぞれの作品を一言ずつ紹介してゆきます。
『知らないクラスメート』:久々に同窓会した。懐かしいね、あれ、あの人だれ? 知らない人が居る
『大好きな姉』:実家に帰るの嫌だなぁ、でも葬式だしなぁ、姉さんもいるし……でもしかないよなぁ
『シム・フースイ』:黒ずくめの男とツンデレの沖縄旅行
『浮遊する水』:花火したいと娘が言うから屋上で花火した結果www なんか変なバッグを拾った件
『再生』:問題、教授と学生の甘い同棲生活が始まったかと思えば、教授が学生の首をはねてしまいました。なんででしょう
『備えあれば憂いなし』:君、肌若々しいね。君の若さ買いますよ?
ざっくりとこんな感じです。


----(ネタバレあり)-----



この本書では『知らないクラスメート』『大好きな姉』『シム・フースイ』『ミッドナイト・ラン』『浮遊する水』『再生』『備えあれば憂いなし』の7つの短編のみなので(多いですが)それぞれざっと振り返っていこうと思います。

知らないクラスメート
クラスメートの中にミスディレクション会得した人が居たのかと思ってましたが、灰色のワンピース(死神っぽい)が出てきて仰天発言して消えてゆく話でした。
灰色のワンピースの正体がなんであれ、同窓会で突然そんなこと言っちゃうなんて空気壊れるどころの騒ぎではないですよね。けどまぁ、実際そうなったので「不気味なやつだな」で終わるんですけど……。この灰色のワンピースについては「クラスメートが共通して目撃している」という点が個人的に怖いと思います。仮にクラスメートの一人が「こんな人いたよね?」というのも怖いですけど、ほぼ全員居る中で「○○が死んだ!」と言われちゃ、インパクト大きすぎで誰も忘れることができないでしょう。トラウマなった人がいるかもしれません。
ところでこの作品の怖さは情報伝達のごちゃごちゃが元になっているようです。しかし今はLINEとか言う便利なアプリがあり、共有グループさえすればこんな情報伝達のごまごまもなくなりそうですよね。灰色のワンピースなんて消滅しているかもですね。

大好きな姉
なんか途中、変態いましたよね。あのときちょうど晩食前でして、ちょっとココア飲んでた頃でして、僕としても「えぇ……(ドン引き)」というエピソードでした。ネット掲示板にもたまに変態が登場しているようですけど、そいつらとタメ張れるぐらいですよ。
ところでサキ姉さんについてですが、物語最後サキ姉はなんかそこに住み着いた妖怪(オサキサマ)になっていました。いろいろな想いがそこにとどまって形になったというより、史郎が持つ子供時代の記憶(目から髪が生えていた、幽体離脱していた、壁に張り付いていた)がらして子供史郎のころから妖怪的な存在だったのかなぁ、とか思います。てか怖くて喚いて大人に言っても信じてもらえなくて、そのまま部屋にこもって天井見たら、天井にサキネキが張りつていたとか失禁するレベルですよ。
まぁ、それだけ怖さを伝えても、妖怪のおしっこ飲んだ主人公が一番やべぇと思います。

シム・フースイ
風水について詳しく書かれていた作品でした。個人的に風水知識は「尖ったのはいけない」程度だったので、これ読むことで多少知識が増えましたよ。(災害が多いから風水ができたとかなんとか)
この作品、怖いというよりも黒田とミズキの関係を眺める話でもありました。男は黒色に染まれを体現した(雰囲気出すためでしょうけど)黒田が霊力持っているミズキとビジネスな関係で旅行しているのかと思えば、黒田はミズキに近寄る(というか抱こうとしている)のをミズキが(まんざらでもない気持ちを抑えつつ)「そんなんじゃ霊力たまらないから」とツンツン断ってゆく。黒田は「連れねぇな」と愚痴りながらも自分の仕事を楽しんでいて、その様子をミズキは眺めながら内心は旅行でウキウキと……こいつら絶対楽しんでますよ!
物語最後あたり、ミズキ入水からのサンゴが守ってくれたみたいになっています。あれ読んでる時ふと思いましたが、サンゴ漁とかしている人がいるらしいですよね。どうなるんでしょうね。

ミッドナイト・ラン
トラック躱せたかと思ったら死んでたーみたいなやつです。個人的には一番好きな物語になります。
ときにサラリーマンが言ってた嫉妬の話、あれ大切なこと言ってました。

(前略)妬む対象というのは、つまるところ、自分の理想像であることが多いんだな。(中略)つまり、自分もそうなりたいという意味で、妬む相手は理想像ってわけだ。恋愛関係の場合の嫉妬も同様だな。(後略)

だからね。理想像であることを素直に認めて、自分もそうなる努力をすればいいんだよ。妬みや嫉みというのは、いわば不労所得を要求しているようなものなのさ。愛されるには愛されるだけの、あるいは仕事であれば、高く評価されるだけの努力を、相手はしている筈なんだ。ところが、嫉妬する側というのは十中八、九、いやそれ以上と言っていいだろううけど、努力をしないで相手と同じ結果を欲しがっているんだよね」

これ見てどこかで見た文章「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」という言葉を思い出しました。幸い僕は嫉妬深い性格していないのですけど、ソレデモ不労所得を求メナイヨウ気ヲツケナイトイケマセンネ。
そんな大切なことを言っているのに主人公は余裕がなかったのか、または驚きかで聞き逃している様子でした。それのせいで闇の炎に抱かれて消えろにされてあの先は詳しく知りませんけど、もうちょっと余裕があれば死後の選択できたんじゃないかなとも思います。この物語の教訓はきっと、「人の話を落ち着いてよく聞こう」になることでしょう。

浮遊する水
たぶん本作では一番怖い話になるんじゃないでしょうか。真っ直ぐで正面突破の怖い話であって、いままで不気味話とかレベルだったのにいきなり「怖い話」以外の表現できない話になっておりました。
内容はもう読んでるだろうから端折りますけど、要はタンクの中に子供が落ちた事故がきっかけの話でした。思い返せば物語の初めあたり、淑美が水を飲んで異変を感じるという部分がより一層ゾッとするような展開構成です。
思うんですけど、ところどころに(赤いバッグや風呂場でのミッちゃん、子供行方不明事件)そういう不穏な物語の鍵が散りばめられていて、「おいおいそれそうなるんじゃないか」みたいな恐怖を効果的に煽っていましたよね。しかも最後は回収して怖い話に仕上げているのがもう……怖いんですけどすごいです。これはプロですね(確信)。
ところで、淑美がタンクに近づいているとき(もうハシゴ登っている時)「あれは娘じゃない」と思っている時です。あの時に後ろから郁子が声をかけて「あぁよかった郁子じゃない」というシーンあるんですけど、あれ、どうやって、エレベーター乗れないの郁子があの場所に居たんですかね?
いろいろ考えれますけど、まぁ、たぶんミッちゃんと一緒に来たんだと思います。「お母さんピンチだよ。こっちだよ」みたいに。違うなら妖精さんの所業です。
てか、この後風呂は入ろうかと思うんですけどもうすでに気持ち悪いです(半ギレ)。

再生
精神科医に通っていたら、「尊敬(大嘘)している」という生徒と出会う教授の話でした。正直若い女の子から「先生(敬愛)」と呼ばれる響きというものは悪くないものだと想像できます。僕も言われてみたい気もしたりしなかったり。
その学生、由伊の過去はいろいろあるようですが、一番気になるのはやはり肉体が再生するという部分でしょう。一瞬ではなくジワジワと再生するタイプのようで、その間痛みも伴うとかなんとか言っていました。恐ろしいことに頭を飛ばしても、体が生えてきた(幼児体型らしい)ということから本体は頭ということのようです。
思うのは彼女は死ぬことができるのか、という部分です。老化があるのかどうかは書かれてなく(若い綺麗とかそんなののみ)仮に外部的な死亡が無理でも老化ならなんとかできるならいいですけど、できなかったらそれはそれで悲しいですよね。成長するならあるとは思うんですけど。加えて最後、由伊が宇城のことを「先生」と呼ぶんですよ。あれは救いなのか、あるいは残酷な結果なのか。それら老化にかかっていると思います。

備えあれば憂いなし
これ一番『世にも奇妙な物語』で映像化できそうな作品だと思いますよ。てか、やればいいと思います僕は怖いから見ないけど(画像と映像が超苦手なんです)。
直子という若さに執着していた女が主人公なのですが、怖いのは肌に執着していたというよりも、玉の輿に乗るためになんでもしでかしたことですよ。お金持ちのサラリーマンの周りには女が居るのはいいですが、中には直子みたいな人も居ると思うと、なんとも薄ら寒くなってしまいます。
この作品、一番の被害者はエリートサラリーマンの彼でしょうね。呼び出しくらってから、喫茶店で醜い顔と美しい顔と醜い顔の交互を見せられ、挙句キス中に中身の液体を流し込まれるなんて……直子は彼にトラウマ作っただけじゃないですか。彼はもうキスできない体になっていることもありますし、エリートサラリーマンの今後が心配でなりません。
やはり、若さは歳相応に捨てるべきなんですよ。

【まとめ】
おもしろかったですよ。怖かったけど、たまにはこういう本もいいかなと思います。
思うのはやはり、ホラーは色を強調するシーン、エロくてグロテスクなシーンがたびたびあるということです。中でもグロテスクなシーンとは印象を深くするためにも必要なシーンかもしれませんけど、やっぱ食事前には厳しいところがありましたね。
なんというか、夢に出てこないことを祈っています。あと怖いので冗談を3割増しぐらいで感想書きました。でないと、怖いです。

同じ作者の他作品とか

虎口からの脱出 (新潮文庫)

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リング (角川ホラー文庫)

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十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

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横浜の時を旅する (ホテルニューグランドの魔法)

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