とある書物の備忘録

読書家ほどではない青年が本の感想を書くブログ

小さな運送・物流会社のための「プロドライバー」の教科書

164冊目
運送会社や、大型トラック運転手のための本

小さな運送・物流会社のための 荷主から信頼される! 「プロドライバー」の教科書 (DO BOOKS)

小さな運送・物流会社のための 荷主から信頼される! 「プロドライバー」の教科書 (DO BOOKS)

運送会社や大型免許を持っている人向けに書かれた教本になります。
内容もタイトル通りそのままで、あのトラックをどのように操縦していくのか、あるいはどうやりながら安全確認をするのか、など書かれてありました。

特筆するべきは、「プロドライバーを育成するための本」といったところで、いわゆる運転スキル以外でのドライバーとしての心構えなど書かれたあるところでしょう。
運送というのは、もちろん安全確実にに物を運ぶというのが一番なんですけど、運転スキル以外の部分である得意先やら仕事関係の関係先とのかかわり方のコツ、あるいは問題が起こってしまった場合はどう対処すべきか、などけっこう実用的な方法が書かれてもありました。
ドライバーにはもちろん、運送会社も読んで経営に役立ちそうな本だと思いました。

※ネタバレありとありますが、個人的に気になった個所を上げていこうと思います。

ーーー(ネタバレあり)---



始まりの話のところ
本編が始まる前に「はじめに」と言う部分があるのですが、そこで作者が運送業でやっていこうとするきっかけ的なものが書かれてありました。まぁ書かれてあったといえばそれだけなんですけど、それがなかなか壮絶な内容でしたよね。はじめに、を引用するのもあれですけど、

小学校4年生の夏休み、私は、毎日朝晩2回コーヒーを飲みに来る常連*1、大型ダンプの若いドライバーUさんと「友達」になりました。とてもやさしい目をした人でした。

ある暑い日の朝、「おじさんと今からドライブに行くか?」。(中略)初めてトラックに乗った地上3mの景観は、今でも目に焼きついています。

夏休み中、Uさんには何度かドライブに連れて行ってもらいました。同乗の約束をしていたある朝、私は寝坊をしてしまいました。ギリギリまで待ってくれていたUさんは20分ほど遅れて出発したそうです。
その日の夕方、私はUさんに謝ろうと喫茶店で待っていました。日課の「仕事終わりの一服」を欠かしたことがないUさんでしたが、その日はとうとう喫茶店には現れませんでした。

 翌日、母に朝刊を見せられて、私は凍りつきました。
「大型ダンプ、ノーブレーキで乗用車に激突、家族4名即死」という大きな記事でした。事故を起こしたのは、まぎれもないUさんだったのです。
 その後、喫茶店の常連さんからの情報で、Uさんは交通刑務所にいると聞きました。そして、大事故の原因もわかりました。乱暴な運転をするオートバイに、「危ないだろう」とダンプの窓を開けて怒鳴った直後に、衝突したというのです。

……と、そんなエピソードがあるそうです。
これがきっかけで「運送に対するあこがれ」と「運送に関しての問題意識を持つようになった」と書かれてあるのですが、なんとも、なんとも言えないエピソードです。
小4作者さんの寝坊も寝坊ですけど、その日ドライバーさんのダンプに乗ってなくてよかったなと、思えるような気もしてこないわけではないです。でもなぁ……うーん、なんとも言えません。

プロドライバーの条件
さて、本編に入るのですが、作者さんはプロドライバーの条件というものを提示していました。
提示されていたそれは「スキル」「マインド」「マナー・モラル」であり、三つそろってやっと「プロドライバー」と呼べるのだそうです。それぞれ「スキル(荷物を運ぶためのスキル)」「マインド(事故しないという心構え)」「マナー・モラル(交通ルールなど守る姿勢)」というわけですが、こうして読んでみると確かにどれも大事だと感じます。
そもそも車の運転だけ見てもこの三つの条件は必要であり、その三つの条件を満たすために日ごろの生活を気を付けなければならない大切なこともわかります。
とはいっても、読んでて(読んでみたら常識なんですが)運送の人達は必ずしも運転スキルだけではやっていけないんだなぁ、と思った次第です。運転がうまいだけじゃ、プロドライバーになれないんですよ!

荷物の積みと運送中について
荷物の積み方って、宅配利用者の僕からしてみれば気にするのは「商品がちゃんと(きれいに)届いているか」程度です。ただ思えば物を運んでるのは車ですから、揺れもあり、ブレーキやカーブの重心移動などあったりなど、倒れてしまうことや壊れてしまう方が多いと感じる状況ではあります。
けれどもそんなことがあろが、たくさんのものをきれいに運んでいるということは「きれいに運ぶためのコツ」があるんですよね(図なので各自本を開いてください)。この本には荷物の載せ方のコツや(いろいろな載せ方が掲載されてました)、どこら辺に重心を与えるか(後ろのタイヤの少し前あたりがいいそうです)、とか書かれてあって「なるほどなぁ」と読んでて思いました。もちろん、そういったコツだけではなく、急発進などの「急」がない安全な運転が必要不可欠なんですけどね。

右折左折の方法
右折左折の方法が詳しく書かれてありました。左折は「しっかり左に寄って(巻き込み防止)」「ゆっくりゆっくり曲がること」などあり、右折は左折と同じくゆっくりゆっくり曲がることほかに「交差点付近で90度曲がるつもりで曲がること」など書かれてありました。
街中を歩いてみると、しばしば大きなトラックが交差点を曲がっている様子を目にすることがあります。あれ見るたび僕は「これで曲がれるのか?」など思ったりするほどに、トラックの内輪差ってものは大きいんですよね。乗ってる人すごいですよね。
そんなトラックですけど、無事故にするためには、書いていることをくみ取ってみると一言「曲がるという意思を適切に伝えることが重要」なんだそうです。
50メートル前あたりから速度を落とし、30メートル前にはすでに右左折する方に寄っていてウインカー…そうすることで、周りの人達は「あっ、このトラック曲がるんだな」と思わせること、それが重要らしいです。まぁ「トラック左折しそうや……せや! 左側から抜かしたろ!」と思う人はさすがにいないでしょう。さすがに…たぶん…。

道具は大事
運送業の道具である「トラック」ですが、このトラックは常日頃からメンテナンスをしておかなければならない法律があるようで、作中にもよく「日々のメンテが大事(意訳)」と書かれてある箇所がありました。
どの業界にも言える「道具を大事にしろ」というものは、この運送業も例外ではなく、ただ単にメンテナンスをする程度ではなく、ちゃんと愛着込めて車を洗浄した方がいいよ(意訳)的なことも書かれてありました。
確かに車を洗うことで小さな傷や小さなへこみ、あるいはほんの小さな不具合というのを見つけやすいかもしれません。その見つけた小さなところを注意すれば、事故防止になりますし……というかきれいな車ってだけで客先も好印象でしょうしいいことばかりです。
そういうのって小さいけど大事なことですよね。ときにこれで、利用者からしてみれば「きれいなトラックに乗っている人はいいドライバー」ということもわかります。これはタクシーでも言えるかもしれない。街中とかで観察してみるのもいいかもしれないですね。(いやな客だ……)

トラブル回避法について
ちょくちょくいろんなトラブルから回避する方法が書かれてありました。客先でのトラブル、自分のミスによるトラブル、そして最後あたりに書かれてあった人的被害がありそうな重大なトラブル……いろんなものの対処法がそれぞれ簡単に書かれてありましたね。
個人的に気になったのは人的被害がある事故の対処法について、そういう事故が起こったあと相手の救助ももちろんなんですが、一通り救護などやった後に「写真を撮っておく」という段階があることに驚きました。なにも「現場を残しておく」というのが重要らしく、相手の車のナンバーとか、現場の様子とか、その撮った時間だって証拠になるとかなんとか、つまりそういった「証拠集め」みたいな行動しておけという意味もあるらしいです。
言われてみれば、ありのままの現場の写真を撮るということは、この上ない「潔白行動」と言えるかもしません。すぐにやってくる警察の取り調べやら、目撃証言やらと照らし合わせて写真が真実なら、大きな信用が集まるでしょうしあって損じゃないと思います。かといって事故を起こした時にそこまで冷静にいられるかというのも問題であり「冷静になること」がこういった場面では一番重要なことなのかもしれません。

【まとめ】
日本の高度なインフラというは(通販がめちゃくちゃ便利という状況は)日本の運送がとても大きな役目を担っているということは僕でも実感しています。そんな運送をやっている人達は単に運送だけしているだけではなく、そのほかにもいろんなこともしているらしく、どこも大変だなぁと読んでて思いました。みんな予定日が多少ずれてもイライラしないようにしような! あと時間指定するならその時間家にいような!

*1:作者さんの実家は県土沿いの喫茶店を経営していた